文学 / ジョナサン・スウィフトバウキスとピレモンBaucis and Philemon

『バウキスとピレモン』の装画。旅人を家に迎える老夫婦。

文学 / ジョナサン・スウィフト

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原著・底本

原題
Baucis and Philemon
著者
ジョナサン・スウィフト
編者
ウィリアム・アーンスト・ブラウニング
寄稿者
ジョン・フォースター
原典の利用条件
パブリックドメイン(米国)
Project Gutenberg 利用条件
収録範囲
1910年Browning編版の手稿版230行14詩段落と改稿版178行15詩段落、各標題・副題と底本注九件。

日本語訳

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表紙

装画
日本人文
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CC0 1.0

本書のために制作した独自装画。原刊の装丁とは異なります。

追加日: 2026-10-21 / 更新日: 2026-10-21

1910年Browning編版の手稿版230行14詩段落と改稿版178行15詩段落、各標題・副題と底本注九件。

手稿版

バウキスとピレモン[1]

サマセット州チルソーン教区の二本のイチイが失われたことを、いつまでも嘆いて。一七〇六年。オウィディウス『変身物語』第八巻にならう。

昔々、物語によると、
聖人たちは、よく庵を離れ、
身分を隠して、あちこち歩き、
善良な人々の、もてなしぶりを試した。

それは、ある冬の夜のこと、
伝説を書いた人々の話では、
仲間の隠者二人、商売は聖人、
姿を変えて、巡り歩き、
リクサム近くの村へ来た。[2]
ぼろをまとい、二人合わせても一文なし。
雨は、これ以上ないほど降りしきり、
それでも一時間は歩かねばならなかった、
家から家へ、肌までずぶ濡れになって、
入れてくれる人が、一人でも見つかるまでは。
どの戸口でも、こう呼びかけた。「善良な皆さん、
連れは盲で、私は跛です!
ここで、道に倒れて飢えております、
見れば、胸が痛むでしょう。
キリスト教徒なら、獣だって追い出しますまい、
せめて、こんな恐ろしい夜には。
藁だけでも恵み、寝かせてください、
あそこの納屋で、雨をしのがせて。」
こうして、流れ者のお決まりの口調で、
助けを乞うたが、誰も恵まなかった。
その言葉を、気に留める者もなく、
ある家では、もう皆、寝ていた。
主人は、半分眠ったまま怒鳴った。
「お前ら、何を騒ぎ立てる!
ここは、物乞いが何人も通って、
夜も昼も、静かにできん。
一人残らず、面倒を見られるものか。
返事は、それだけだ。さっさと行け。」
足枷台へ送ってやる、と誓う者もいた。
また別の者は、からかわずにいられず、
ありったけの大声で、怒鳴った。
「お前ら、戸の外側にいるんだぞ!」
不機嫌な田舎者は、顔を出して言った。
「頭から、尿——瓶をぶちまけてやる。
ここには入れん。一銭もやらんぞ!
家へ押し込む悪党の面だ。
働くか、王に仕えるかできんのか。
盲だの跛だの、真っ赤な嘘だ。
その脚の傷も、ただの見せかけだろう!
恥を知れ、頑丈な悪党二人で物乞いか!
下へ行ったら、その芝居を終わらせ、
太い棒で、二人とも治してやる。」

さすらう聖人たちは、惨めな姿で、
こんな不信心な扱いを受け、
村を、すっかり通り抜けて、
ついに、小さな家へたどり着いた。
そこには、善良で正直な老自作農が住み、
近所では、ピレモン爺さんと呼ばれていた。
彼は、親切にも聖人たちを招き、
貧しい家で、一夜を明かさせた。
人をもてなすのが好きな老人は、
バウキス婆さんに、火をつぎ足すよう言い、
自分は、炉の中の鉤から、
塩漬け豚肉の片身を外し、
いちばん脂ののった所から、惜しみなく、
炒めるため、大きく何枚も切り取った。
それを、衣とともに鍋で炒め、
土の大皿に盛ると、
バウキスは言った。「体によい食べ物です。
さあ、お客さん、遠慮せず食べてください。
食べ物が、足りなくなったとしても、
エールで、お腹を満たせばよいのです。」

小さなキルダーキン樽のビールへ、
祝いの季節に向けて醸したビールへ、
ピレモンは、妻の同意を得て、
水差しを手に近づき、穴を開け、
縁いっぱいまで注いでから、
二人の聖人に、飲むよう勧めた。
二杯目を、飲み終えると、
見よ、奇跡が起こった。
バウキスは、驚いて気づいた、
水差しは、二度も回されたのに、
相変わらず、口までいっぱいで、
まるで、一滴も飲まなかったようなのだ。
当然、こんな不思議な光景に、
老人たちは、怯えた。
ピレモンは、妻へ囁いた。
「あの方々は——聖人だ——命を賭けてもよい!」
客人たちは、聞きつけて言った。
「そのとおり。だが、怖がることはない。
お前たちにも、家族にも、害は及ばぬ。
ただし、あの無礼な田舎者ども、
キリスト教徒の土地に住む資格のない連中は、
村ともども、水に沈めてやろう。
その間に、お前たちの家は立ち上がり、
目の前で、教会に変わるだろう。」

言い終わるか終わらぬうちに、静かに、ゆっくり、
屋根が、高く上がり始めた。
梁も垂木も、ことごとく上がり、
重たい壁も、あとからよじ登った。
煙突は、幅も高さも増し、
尖塔のついた、鐘楼となった。
釜は、てっぺんへ吊り上げられ、
そこで、梁へしっかり留められた。
ただし逆さまで、下のほうへ、
行きたがる気持ちを示している。
だが無駄だ。それに勝る力が、
底へ加わり、動きを止めている。
いつまでも、宙ぶらりんと定められ、
もはや釜ではなく、鐘となった。

木製の焼き串回しは、ほとんど、
使われぬまま、肉を焼く技を忘れていたが、
突然、変化を感じ、
中には、新しい歯車が増えた。
しかも、不思議を増すことには、
数が増えると、動きは遅くなった。
鉛の足のついた、回転する羽根は、
もとは、ほとんど見えぬほど速く回ったのに、
今は、隠れた力に止められて、
二十四時間に、二度しか回らない。
串回しの役を務めていたころは、
背を向けたことなど、一度もなかった。
幾度の回転と曲折にも耐えた友として、
煙突のそばを、離れなかった。
煙突が、鐘楼となったからには、
串回しも、独り置いていかれはせず、
鐘楼に沿って、高く据えられ、
時計となって、なお寄り添った。
今も、家事への愛着を、
正午の鋭い声で告げる。
料理女中に、焦がさぬよう注意するのだ、
自分には、もう回せない焼き肉を。

産婦の椅子は、這い始めた、
巨大な虫のように、壁を上へ。
そこで貼りつき、説教壇となったが、
材質も色も、もとのまま。
昔の身分を忘れずに、
おしゃべり仲間が喋ると、今も呻く。
乳鉢は、名前だけを変え、
もとの形のまま、洗礼盤となった。

粥椀は、一列に、
高く掛けられ、きらきらしていたが、
もっと卑しい材質へ変わり、
今では、革の手桶が並ぶばかり。

壁に貼ってあった、物語歌、
『チェヴィー・チェイス』に『イングランドのモール』、[3]
『美しきロザモンド』に『ロビン・フッド』、
『森の中の幼い子供たち』は、
絵も、大きさも、文字も拡大され、
色を塗られて、ずっと立派に見え、
今では、教会委員か、部族の、
紋章を描き出すものとなった。
昔ふうの寝台は、
何車分もの木材でできた、
祖父たちが、使ったような代物で、
教会の腰掛けへ姿を変えた。
それでも、昔の長所は残し、
眠りたい人々を、寝かせてくれる。

こうした、あれこれの技によって、
家が、順々に教会へ育つと、
聖人たちは、主人へ勧めた、
いちばん欲しいものを、願いなさいと。
ピレモンは、しばらく考え、
丁重な言葉で答えた。
「私の値打ちより、お慈悲のほうが勝るので、
何もかも、よいように受け取ってくださいます。
あっという間に、ここへ教会を建ててくださり、
私は、このまま住み続けたいのです。
この歳では、大して役にも立てません。
どうか、ここの牧師にしてください。」

そう言うと、たちまち気づいた、
牧畜業者の上着が、踵まで延びている。
袖には、新たに縁飾りがつき、
広がってから、手首で絞られた。
だが、古着であるから、相変わらず、
すり切れ、埃だらけなのは同じ。
ぎこちなく、足を引きずって歩き、
すまし顔で、うつむいた。
話すのは、献金、十分の一税、納付金、
煙草を吸い、酒を飲み、新聞を読み、
隣町では、鵞鳥も売れた、
法衣の下へ、行儀よく隠して。
次には、古い説教をする工夫をした、
前置きと、引用聖句を取り替えて。
洗礼式では、役をうまく務め、
式文は、すっかり暗記していた。
女たちが、次々子を産むのを願い、
最後に子を産んだのは、誰の雌豚だったかと考えた。
非国教徒には、不平を鳴らし、
「神授の権利」を、断固として擁護した。
同輩には、偉そうに振る舞ったが、
地主には、ひたすら従順だった。
頭は、多くの学説で満ちたが、
古典の著者がなくても、少しも困らなかった。

こうして、牧師を仕立て上げると、
次に、バウキス婆さんへ茶番を仕掛けた。
手織りの頭巾に代わって、
コルベルティーンで縁取った、立派な垂れ布の頭飾り。[4]
ペティコートは、たちまち姿を変え、
レースの襞飾りのついた、黒いサテンとなった。
ただの「婆さん」では、もう通用しない、
グログラムの服を着れば、「奥様」だった。
ピレモンは、たいそう驚き、
自分の目を、ほとんど信じられなかった。
妻が、あんなにおすましなのに驚き、
妻も、同じほど夫に驚いた。

こうして、変わった暮らしを幸せに、
夫婦は、幾年か過ごした。
やがて、最後となった、ある日、
昔の物語を、あれこれ話し、
喋りながら、ふと歩いていった、
教会の墓地へ、散歩するために。
すると、バウキスが、急に叫んだ。
「あなた、額から芽が出ているわ!」
「芽だと?」と夫は言った。「何を言う?
まさか、私をやきもち焼きだと思うまいな!
だが、どうも本当らしい、感じがする。
それに、お前にも芽が出ているぞ。
おや、もう、足が動かせぬ、
根を張っているような気がする。」

描き続けても、詩神が疲れるだけ。
要するに、二人はイチイとなった。
村の緑地の、老ドブソン爺さんは、
あの木々を見たのを、覚えている。
昼から夜まで、その話をし、
人々についていって、見せてくれる。
日曜には、夕べの祈りのあと、
教区の皆を、そこへ集め、
二本のイチイの場所を、指し示す、
ここにバウキス、そこにピレモンが育ったと。
ところが、あるとき、この町の牧師が、
納屋の修繕に、バウキスを切り倒した。
それで、もう一本が、どれほど悲しんだかは、
信じがたいほどだった。
枝は貧弱になり、梢が枯れ、成長も止まったので、
次の牧師が、根ごと抜いて燃やした。

底本注

編者注 1

[1] ここには、この詩の原稿版を掲げる。フォースターが、ナーフォードで、スウィフトの自筆原稿を見つけたもので、これまで公刊されていなかった。スウィフトが、アディソンの助言で、この「彼の詩のうち、最も見事なものの一つ」に、大幅な変更を加えたことは、よく知られている。フォースターは、『スウィフト伝』一六五頁で、この詩について、こう述べる。「印刷された詩は百七十八行、私がナーフォードで見つけた詩は二百三十行ある。後者を、これまで唯一知られてきた前者の形にする変更は、九十六行の削除、四十四行の追加、二十二行の改変からなる。この変更が改良だったかどうかは、今や論じられるが、私の考えでは、判定はアディソンに不利でなければならない。」――W・E・B。

編者注 2

[2] 原稿版の「リクサム近くの村」は、改稿版の「ケントの奥の村」と同じく、「チルソーン」とは、ほとんど関係がない。スウィフトが、どちらを選んだ理由も、おそらく韻以上のものではなかったろう。――フォースター。

編者注 3

[3] この行についての注は、次の詩を参照。改稿版のジャンヌ・ダルクより、『チェヴィー・チェイス』のほうが、登場人物にはふさわしく思われる。――W・E・B。

編者注 4

[4] 著名なフランスの大臣コルベール氏にちなんで、そう呼ばれるレース。プランシェ『服飾』三九五頁。――W・E・B。

改稿版

バウキスとピレモン[1]

サマセット州チルソーン教区の二本のイチイが失われたことを、いつまでも嘆いて。一七〇六年。オウィディウス『変身物語』第八巻にならう。

昔々、物語によると、
聖人たちは、よく庵を離れ、
身分を隠して、あちこち歩き、
善良な人々の、もてなしぶりを試した。

それは、ある冬の夜のこと、
伝説を書いた人々の話では、
仲間の隠者二人、商売は聖人、
姿を変えて、巡り歩き、
ぼろぼろの服に身をやつして、
ケントの奥の、小さな村へ来た。
そこで、流れ者の、お決まりの口調で、
戸から戸へ物を乞うたが、無駄だった。
同情を誘いそうな声を、すべて試したが、
入れてくれる人は、一人もいなかった。

さすらう聖人たちは、惨めな姿で、
こんな不信心な扱いを受け、
村を、すっかり通り抜けて、
ついに、小さな家へたどり着いた。
そこには、善良で正直な老自作農が住み、
近所では、ピレモンと呼ばれていた。
彼は、親切にも、この聖人たちを招き、
貧しい小屋で、一夜を明かさせた。
人をもてなすのが好きな老人は、
バウキス婆さんに、火をつぎ足すよう言い、
自分は、炉の中の鉤から、
塩漬け豚肉の片身を外し、
いちばん脂ののった所から、惜しみなく、
炒めるため、大きく何枚も切り取った。
それから、飲み物を取りに、脇へ行き、
大きな水差しへ、縁いっぱいに注ぎ、
きちんと、二度回したのを見た。
ところが、不思議なことに、気づいたのだ、
相変わらず、口まで満たされ、
まるで、一滴も口をつけなかったようなのだ。
善良な老夫婦は、驚き、
何度も、互いの顔を見た。
二人とも、心の底から怯え、
「何者なのだ!」と叫びかけ、
それから、そっと脇を向いて確かめた、
明かりが、青く燃えてはいないかと。
穏やかな巡礼たちは、すぐに気づき、
自分たちの仕事と、旅の目的を告げた。
「善良な人々よ、怖がることはない、
ただの聖人だ」と、隠者たちは言った。
「お前たちにも、家族にも、害は及ばぬ。
ただし、あの無礼な田舎者ども、
キリスト教徒の土地に住む資格のない連中は、
家々ともども、水に沈めてやろう。
その間に、お前たちの家は立ち上がり、
目の前で、教会に変わるだろう。」

言い終わるか終わらぬうちに、静かに、ゆっくり、
屋根が、高く上がり始めた。
梁も垂木も、ことごとく上がり、
重たい壁も、ゆっくり、あとから登った。

煙突は、幅も高さも増し、
尖塔のついた、鐘楼となった。

釜は、てっぺんへ吊り上げられ、
そこで、梁へしっかり留められた。
ただし逆さまで、下のほうへ、
行きたがる気持ちを示している。
だが無駄だ。それに勝る力が、
底へ加わり、動きを止めている。
いつまでも、宙ぶらりんと定められ、
もはや釜ではなく、鐘となった。

木製の焼き串回しは、ほとんど、
使われぬまま、肉を焼く技を忘れていたが、
突然、変化を感じ、
中には、新しい歯車が増えた。
しかも、不思議を増すことには、
数が増えると、動きは遅くなった。
鉛の足のついた、回転する羽根は、
もとは、ほとんど見えぬほど速く回ったのに、
ある秘密の力に、速度を落とされ、
今は、一時間に、一インチも動かぬほど。
串回しと煙突は、近しい仲で、
互いのそばを、離れたことがなかった。
煙突が、鐘楼となったからには、
串回しも、独り置いていかれはせず、
鐘楼に沿って、高く据えられ、
時計となって、なお寄り添った。
今も、家事への愛着を、
正午の鋭い声で告げる。
料理女中に、焦がさぬよう注意するのだ、
自分には、もう回せない焼き肉を。
産婦の椅子は、這い始めた、
巨大な蝸牛のように、壁の半ばまで。
高い所で貼りつき、人目にさらされ、
わずかに姿を変え、説教壇となった。

粥椀は、一列に、
高く掛けられ、きらきらしていたが、
もっと卑しい材質へ変わり、
今では、革の手桶が並ぶばかり。

壁に貼ってあった、物語歌、
フランスのジャンヌ[2]と、イングランドのモール[3]、
『美しきロザモンド』に『ロビン・フッド』、
『森の中の幼い子供たち』は、
今では、ずっと立派に見えた、
絵も、大きさも、文字も、よくなって。
高い所へ、整然と据えられ、
部族それぞれの紋章を、描き出す。[4]

昔ふうの寝台は、
何車分もの木材を組み合わせた、
先祖たちが、使ったような代物で、
教会の腰掛けへ姿を変えた。
それでも、昔の性質は残し、
眠りたい人々を、寝かせてくれる。

こうした、あれこれの技によって、
家が、順々に教会へ育つと、
隠者たちは、主人へ勧めた、
いちばん欲しいものを、願いなさいと。
ピレモンは、しばらく考え、
飾らぬ言葉で、礼を述べた。
それから言った。「我が家は、こんなに立派になり、
このまま、我が物と呼んでいたい気がします。
歳も取り、楽に暮らしたいのです。
どうか、ここの牧師にしてください。」

そう言うと、たちまち気づいた、
牧畜業者の上着が、踵まで垂れている。
目にしても、ほとんど信じられぬ、
両腕の周りに、膨らんだ袖。
胴着は、カソックへと変わり、
どちらも、黒い色となった。
だが、古着であるから、相変わらず、
すり切れ、埃だらけなのは同じ。
今や、話すのは、十分の一税と納付金、
パイプで煙草を吸い、新聞を読めた。
次には、古い説教をする術を心得た、
前置きと、引用聖句を、つぎはぎして。
洗礼式では、役をうまく務め、
式文は、すっかり暗記していた。
女たちが、次々子を産むのを願い、
最後に子を産んだのは、誰の雌豚だったかと考えた。
非国教徒には、不平を鳴らし、
「神授の権利」を、断固として擁護した。
頭は、多くの学説で満ちたが、
古典の著者がなくても、少しも困らなかった。

こうして、牧師を仕立て上げると、
次に、バウキス婆さんへ茶番を仕掛けた。
手織りの頭巾に代わって、
コルベルティーンで縁取った、立派な垂れ布の頭飾り。
ペティコートは、たちまち姿を変え、
レースの襞飾りのついた、黒いサテンとなった。
ただの「婆さん」では、もう通用しない、
グログラムの服を着れば、「奥様」だった。
ピレモンは、たいそう驚き、
自分の目を、ほとんど信じられなかった。
妻が、あんなにおすましなのに驚き、
妻も、同じほど夫に驚いた。

こうして、変わった暮らしを幸せに、
夫婦は、幾年か過ごした。
やがて、最後となった、ある日、
昔の物語を、あれこれ話し、
喋りながら、ふと歩いていった、
[5]教会の墓地へ、散歩するために。
すると、バウキスが、急に叫んだ。
「あなた、額から芽が出ているわ!」
「芽だと?」と夫は言った。「何を言う?
まさか、私をやきもち焼きだと思うまいな!
だが、どうも本当らしい、感じがする。
それに、お前にも芽が出ているぞ——おや、もう、
足が動かせぬ、
根を張っているような気がする。」

描き続けても、詩神が疲れるだけ。
要するに、二人はイチイとなった。
村の緑地の、老ドブソン爺さんは、
あの木々を見たのを、覚えている。
昼から夜まで、その話をし、
人々についていって、見せてくれる。
日曜には、夕べの祈りのあと、
教区の皆を、そこへ集め、
二本のイチイの場所を、指し示す、
ここにバウキス、そこにピレモンが育ったと。
ところが、あるとき、この町の牧師が、
納屋の修繕に、バウキスを切り倒した。
それで、もう一本が、どれほど悲しんだかは、
信じがたいほどだった。
枝は貧弱になり、梢が枯れ、成長も止まったので、
次の牧師が、根ごと抜いて燃やした。

底本注

編者注 1

[1] これは、アディソンの助言に従って、スウィフトが改めた形の本文である。――W・E・B。

編者注 2

[2] オルレアンの乙女。『ヒューディブラス』「婦人の返答」第二八五行と、グレイ版、第二巻四三九頁の注を参照。――W・E・B。

編者注 3

[3] メアリー・アンブリー。フランドルでの武勲をもとに、よく知られた物語歌が作られた。本文の一行は、『ヒューディブラス』第一部第二歌三六七行にあり、そこで、彼女はトルラと比べられている。
「大胆な女丈夫、たくましく、背も高い、
フランスのジャンヌか、イングランドのモールのよう。」
この物語歌は、パーシー『イギリス古詩拾遺』第二巻二三九頁に収められている。――W・E・B。

編者注 4

[4] 田舎の教会では、ときに、ヤコブが授けた旗印によって、イスラエルの部族を区別して示した。――ダブリン版。

編者注 5

[5] 「教会の墓地へ、ひと歩きしに。」――ダブリン版。