文学 / ジョナサン・スウィフト奉公人心得Directions to Servants
文学 / ジョナサン・スウィフト
書誌情報を表示
原著・底本
- 原題
- Directions to Servants
- 著者
- ジョナサン・スウィフト
- 編者
- トマス・シェリダン
- 編者
- ジョン・ニコルズ
- 出典・参照
- 原典の利用条件
- パブリックドメイン
英語Wikisource寄稿者 — CC BY-SA 4.0 - 収録範囲
- 1801年版の一般心得と全十六章、編者による未完作の説明と語法注を収録する。原著の未完性と短い覚書の形を保ち、底本にない続きは補っていない。
日本語訳
- 翻訳者
- 心霊研究家ポロミン
- 利用条件
- CC BY-SA 4.0
- 翻訳原稿
- 原稿を見る
表紙
- 装画
- 日本人文
- 利用条件
- CC0 1.0
本書のために制作した独自装画。原刊の装丁とは異なります。
追加日: 2026-10-21 / 更新日: 2026-10-21
1801年版の一般心得と全十六章、編者による未完作の説明と語法注を収録する。原著の未完性と短い覚書の形を保ち、底本にない続きは補っていない。
奉公人心得
編者による未完作の説明
『奉公人心得』が未完の作であることは明らかであり、いくつかの部分には、粗い輪郭しか記されていない。一七四五年にこれを刊行したフォークナー氏は、「献辞と序文のための覚書や、あらゆる階級の奉公人の一覧を記した、ばらばらの原稿が残っていることから、著者には、彼らすべての性格を扱うつもりがあったと分かる」と述べている。オーラリー卿によると、「この原稿は首席司祭の存命中に人々の間で回覧され、大いに喝采を受けた」。また、「俗な笑いが、なんともおどけた調子で書かれており、多くの読者を喜ばせずにはおかない。家庭の奉公人の欠点、へま、ごまかし、嘘、さまざまな悪だくみを、驚くほど正確に指摘している点で、それなりの価値もある。これほどささいな主題でなければ、その正確さは判断力と呼ばれたに違いない」と述べている。
すべての奉公人に共通する心得
主人や奥さまが、奉公人を名指しで呼んだとき、その者がそこにいなければ、誰も返事をしてはいけない。そんなことをすれば、こき使われるのにきりがなくなるからである。主人たち自身も、呼ばれた奉公人が来れば、それで十分だと認めている。
へまをしたときは、いつも生意気で横柄にし、自分のほうが被害者であるかのように振る舞いなさい。そうすれば主人や奥さまの勢いを、たちまちくじくことができる。
仲間の奉公人が主人に損をさせているのを見かけても、告げ口屋と呼ばれないよう、必ず隠しておきなさい。ただし例外が一つある。屋敷じゅうの者が、もっともなことに嫌っている、お気に入りの奉公人の場合である。この場合はみな、用心のため、できるだけあらゆる落ち度を、そのお気に入りにかぶせるべきである。
料理人、執事、馬丁、買出し係、そのほか家の支出にかかわる奉公人はみな、主人の全財産を、自分の受け持つ仕事だけに使うべきものとして振る舞うこと。たとえば、料理人が主人の年収を千ポンドと見積もれば、年千ポンドあれば肉は十分買えるから、節約するには及ばないと、理にかなった結論を出せる。執事も同じように判断し、馬丁や御者もそうすればよい。こうすれば、主人の名誉にふさわしく、どの支出部門も十分に満たされることになる。
客の前で叱られたときには、よその人が親切にも、あなたをかばう言葉をひと言挟んでくれることがよくある。主人や奥さまにはお言葉を返すようだが、そもそも客の前で叱るのは無作法である。そういうときには、あなたには自分の正しさを主張する立派な資格ができる。今後、主人が別のことで叱るときも、主人のほうが間違っているかもしれないと、正当に考えてよい。その一件を、自分に都合のよい言い方で仲間の奉公人に話してやれば、この考えはいっそう確かになる。仲間は必ずあなたの味方をしてくれるからである。だから先にも言ったとおり、叱られたらいつでも、自分が不当に扱われたという顔で不平を言いなさい。
使いに出された奉公人が、用事に必要な時間より少しばかり、二時間、四時間、六時間、八時間といった、ほんの些細な時間だけ、長く外にいることはよくある。誘惑はたしかに大きかったのであり、血の通った人間には、いつでも逆らえるわけではない。帰ってくると、主人は怒鳴り、奥さまは小言を言い、服を剥ぐぞ、棒で打つぞ、首にするぞ、という騒ぎになる。そこで、どんな場合にも間に合うだけの言い訳を、一揃い用意しておくこと。たとえば、叔父が今朝、自分に会うためだけに八十マイルも旅をして町へ来たが、明日の夜明けには帰ってしまう。失業中に金を貸してやった仲間が、アイルランドへ逃げようとしていた。バルバドス行きの船に乗る昔の奉公仲間に、別れを告げていた。父が売るようにと牛を一頭送ってきたが、夜九時になるまで買い手が見つからなかった。来週の土曜日に絞首刑になる、大切ないとこに別れを告げていた。石につまずいて足をひねり、三時間も店で休むまで一歩も動けなかった。屋根裏の窓から汚物を浴びせられ、汚れと臭いが落ちるまで、恥ずかしくて帰れなかった。海軍へ強制徴募され、治安判事の前へ連れていかれたが、取り調べまで三時間待たされ、やっとの思いで放免された。借金取りの役人に債務者と間違えて捕まり、夕方じゅう、借金取りの留置所に入れられていた。主人が居酒屋へ出かけて災難に遭ったと聞き、あまりに心配で、ペル・メルからテンプル・バーまで百軒の居酒屋で、旦那さまの消息を尋ねて回った。こんな具合である。
主人に対しては、いつでも商人たちの味方をしなさい。何かを買いに行かされたら、決して値切ろうとせず、気前よく言い値を払いなさい。これは主人の名誉を大いに高め、あなたの懐にも、何シリングか入るかもしれない。考えてもみなさい。主人が払いすぎたとしても、貧しい商人よりは、損に耐える余裕があるのだ。
自分が特にそのために雇われた仕事以外は、指一本動かすことにも応じてはならない。たとえば、馬丁が酔っていたり、いなかったりして、執事が馬小屋の戸を閉めるように言われたら、返事は決まっている。「恐れ入りますが、旦那さま、私は馬のことは分かりません。」壁掛けの隅を釘一本で留める必要があり、従僕がそれを打つように言われたら、そういう仕事は存じませんので、旦那さまから室内装飾屋を呼んでいただけます、と答えればよい。
主人や奥さまは、通ったあとで戸を閉めないと、しょっちゅう奉公人と喧嘩をしている。しかし、閉めるためにはその前に戸を開けねばならず、開けて閉めれば手間が二倍になるということを、主人も奥さまも考えていない。したがって最善で、最も手短で、最も楽なのは、どちらもしないことである。ただし、戸を閉めろとあまりにしつこく言われ、忘れようにも忘れられなくなったら、出ていくとき、部屋じゅうが震え、あらゆる物ががたがた鳴るほど、思いきり戸をたたきつけなさい。言いつけを守っていることを、主人夫妻に思い出させるためである。
主人や奥さまの気に入り始めたと気づいたら、[1] 何かの折に、とても穏やかな口調で、暇をいただきたいと申し出なさい。理由を尋ねられ、別れを惜しまれているようなら、ほかの誰よりもこちらで働きたいが、貧しい奉公人が暮らしをよくしようと努めても、責められるいわれはない、奉公は代々受け継ぐ財産ではなく、仕事は多いのに給金はとても少ない、と答えること。そうすれば、主人に少しでも気前のよさがあれば、あなたを手放すよりはと、四半期につき五シリングか十シリング、上乗せしてくれるだろう。しかし当てが外れ、しかも辞めたくないのなら、仲間の奉公人に頼んで、自分が説き伏せてあなたを引き留めたのだと、主人に話してもらいなさい。
昼間にくすねられるうまい物は、何でも取っておき、夜、仲間の奉公人とごちそうを楽しみなさい。酒を出してくれるなら、執事も仲間に入れてやること。
自分の名と恋人の名を、蝋燭の煤で、台所か奉公人部屋の天井に書き、自分の学のあるところを見せなさい。
あなたが若くて見栄えのよい男なら、食卓で奥さまに耳打ちするたびに、その頬に鼻をしっかり押しつけなさい。息がさわやかなら、顔にまっすぐ息を吹きかけてもよい。いくつかの家庭で、これがたいへんよい結果を生んだのを、私は知っている。
三、四度呼ばれるまでは来てはならない。一声の口笛で駆けつけるのは犬だけだからである。主人が「誰かいないか」と呼んでも、奉公人に行く義務はない。「誰かいないか」という名の者はいないのだから。
階下で使う陶器の飲み物入れを全部割ってしまったら、たいてい一週間もあればそうなるが、銅の鍋で十分間に合う。牛乳を沸かせるし、粥も温められ、薄いビールも入れられる。いざというときは尿瓶にもなるから、これらの用途に区別なく使いなさい。ただし、錫のめっきがはがれるといけないので、洗ったり磨いたりしてはならない。
奉公人部屋の食事に使うナイフを与えられていても、それは惜しんでおき、主人のものだけを使うこと。
奉公人部屋や台所の椅子、腰掛け、机には、脚を四本以上つけないことを、常に守る決まりとしなさい。これは私の知るどの家庭でも、昔から絶えず行われてきたことであり、二つの理由によるとされている。第一は、奉公人がいつもぐらついた境遇にあることを示すため。第二は、奉公人の椅子や机の脚は、主人のものより少なくとも一本少ないほうが、謙虚さの表れと考えられたためである。料理人については、この決まりに例外があったことを認めよう。古くからの習慣により、食事のあとに眠るための安楽椅子が与えられていた。しかし、それでも脚が四本以上あるものは、めったに見たことがない。さて、奉公人の椅子にこうも広く足の不自由がはやるのは、国や帝国に最大の変革を起こすと認められている、二つの原因によると哲学者は考えている。すなわち、恋と戦争である。みなでふざけ合ったり小競り合いをしたりするとき、まず手に取る武器は、腰掛けか椅子か机である。そして和睦のあとにも、椅子がよほど頑丈でない限り、情事のさなかに痛めつけられがちである。料理人はたいてい太って重く、執事は少し酔っているからである。
女の奉公人が、ペティコートをピンでたくし上げて町を歩くような、あんな品のない姿を見るのは、私にはどうにも我慢がならなかった。裾が汚れるというのは、愚かな言い訳である。帰宅してから、きれいな階段を三、四度下りればよいという、こんな簡単な解決法があるのだから。
同じ通りの仲良しの奉公人と、立ち止まっておしゃべりをするときは、自分の家の表戸を開けておきなさい。戻るとき、たたかずに入れるようにするためである。そうしないと、奥さまに外へ出たと知られ、叱られることになる。
私は皆さんに、心を一つにし、仲よくするよう、心から強く勧めたい。ただし、取り違えてはいけない。互いの喧嘩は、好きなだけしてもかまわない。ただ、皆さんには主人と奥さまという共通の敵がいて、守るべき共通の大義があることだけは、いつも心に留めておきなさい。この道の古参を信じることだ。仲間の奉公人への悪意から主人に告げ口をする者は、ほかの者がみなで結託して破滅させるだろう。
冬でも夏でも、すべての奉公人が集まる場所は台所である。馬小屋、乳製品の作業場、食器室、洗濯場、酒蔵、子供部屋、食堂、奥さまの寝室、どこに関することであれ、家の重大事はそこで相談するべきである。そこなら自分にふさわしい居場所にいるのだから、安心しきって、笑い、わめき、ふざけ合うことができる。
奉公人の誰かが酔って帰り、人前に出られなくなったら、みなで口を揃え、ひどく具合が悪くて寝込んでいると主人に言いなさい。そうすれば、親切な奥さまは、気の毒な男や女のために、何か滋養のあるものを用意するよう命じてくださるだろう。
主人と奥さまが連れ立って、食事や晩の訪問に出かけたら、家には奉公人を一人だけ残せばよい。玄関の応対をし、子供がいればその世話もする下働きの小僧がいるなら、それさえ必要ない。誰が留守番をするかは、長短の籤を引いて決めること。残った者は、恋人に訪ねてもらって慰められればよい。二人でいるところを見つけられる危険はない。こういう機会は、時々しかないのだから、決して逃してはならない。家に奉公人が一人いれば、何もかも十分に安心なのである。
主人や奥さまが帰宅し、たまたま外へ出ている奉公人を呼んだら、死にかけのいとこから呼ばれ、つい今しがた出たばかりです、と答えること。
主人が名を呼び、たまたま四度目で返事をしたとしても、急ぐ必要はない。遅いと叱られたら、何のために呼ばれたのか分からなかったので、もっと早くは来られませんでした、と堂々と言ってよい。
へまをして叱られたときは、部屋を出て階段を下りながら、はっきり聞こえるほど大きな声で、ぶつぶつ言いなさい。そうすれば、主人はあなたが無実だと信じるだろう。
主人や奥さまの留守に誰が訪ねてきても、その名を覚えて記憶に重荷をかけてはならない。実際、ほかに覚えることが多すぎるのである。それに、それは門番の仕事であり、門番を雇わないのは主人の落ち度である。そもそも名前など誰が覚えていられるだろう。どうせ取り違えるに決まっているし、あなたは読み書きもできないのだから。
できることなら、主人や奥さまに嘘をついてはならない。ただし、少なくとも三十分は見破られずに済む見込みがある場合は別である。奉公人が首になったら、その者の落ち度を全部話すこと。主人や奥さまが知らなかったことが大半でもかまわない。ほかの者がした悪さも、すべてその者のせいにしなさい。どうして今まで知らせなかったのかと聞かれたら、こう答えること。「旦那さま、奥さま、まことに、お怒りになるのではないかと恐れておりました。それに、私の悪意からだとお考えになるかもしれませんので。」家に小さな坊ちゃんやお嬢ちゃんがいると、たいてい奉公人の楽しみの大きな邪魔になる。唯一の手立ては、お菓子で買収し、パパやママに告げ口をさせないことである。
田舎に住む主人に仕え、心付けを当てにしている皆さんに忠告したい。客が帰るときには、いつでも縦横に列を組んで立ち、必ずその間を通るようにすること。誰か一人でも客を逃してしまうようなら、その客は普通以上に図太いか、普通以上に金がないに違いない。どんな振る舞いをしたかを覚えておき、次に来たときは、それにふさわしく扱いなさい。
何かを店で買うために現金を持たされ、折よくそのとき自分の懐が寒かったら、その金は懐に入れ、品物は主人のつけで買うこと。これは主人の名誉にも、あなたの名誉にもなる。あなたの口利きによって、主人は信用のある人になるのだから。
奥さまが何かを言いつけようと、上の居間へあなたを呼んだら、必ず戸口に立ち、戸を開けたままにしなさい。話しかけられている間じゅう錠をいじり、戸のつまみを手に持っていること。出るときに戸を閉め忘れないためである。
主人や奥さまが、一生に一度でも間違ってあなたを責めたなら、あなたは幸せな奉公人である。あとは、その家に仕える間にどんなへまをしても、あの間違った非難を思い出させ、今度の件も同じく無実だと言い張りさえすればよい。
主人のところを辞めたくなったが、気を悪くさせるのが怖く、気が引けて切り出せないときには、急に、普段よりずっと無礼で生意気になり、首にするしかないと主人が思うまで続けるのが最善である。辞めたあとは仕返しに、職にあぶれている奉公仲間にみな、主人と奥さまのひどい評判を吹き込み、誰も雇ってもらおうとはしないようにすること。
風邪をひくのを怖がる気難しい奥さまの中には、階下の女中や男たちが裏庭へ出入りするたび、戸を閉め忘れることが多いのに気づき、端に大きな鉛のおもりをつけた綱と滑車を取り付けて、戸がひとりでに閉まり、力を入れなければ開かなくなるよう工夫した人がいる。仕事のため午前中だけで五十回も出入りしなければならない奉公人には、莫大な苦労である。しかし、知恵を働かせれば、できることは多い。抜け目のない奉公人は、この我慢のならない苦情の種に対し、鉛のおもりが働かないように滑車を縛りつけるという、よく効く対策を見つけた。ただ、私自身なら、戸の下に重い石を置いて、いつも開け放しにしておくほうを選ぶだろう。
奉公人の燭台は、たいてい壊れている。何事も、永遠には持たないからである。しかし工夫の仕方はいくらでもある。蝋燭は、瓶に挿せば具合がよい。バターの塊で羽目板にくっつけてもよいし、角製の火薬入れ、古靴、割れ目を入れた棒、拳銃の銃身に挿してもよい。溶けた自分の蝋で机に立てたり、コーヒーカップ、コップ、角製の飲み器、茶のポット、ねじったナプキン、からし壺、インク壺、髄のある骨、パン生地の塊に立てたりしてもよい。パンの塊に穴を切り開け、そこへ挿すこともできる。
晩に近所の奉公人を家へ招き、ごちそうを楽しむときは、台所の窓をたたくか、こするかする、特別な合図を教えておきなさい。自分には聞こえても、主人や奥さまには聞こえないようにすること。こんな不適当な時刻に、お二人を煩わせたり、驚かせたりしないよう、気をつけねばならない。
あらゆる落ち度は、愛玩犬、お気に入りの猫、猿、鸚鵡、子供、あるいは最後に首になった奉公人のせいにしなさい。この決まりに従えば、自分は言い逃れができ、ほかの誰も傷つけず、主人や奥さまも、叱る手間やいらだちから救われる。
取りかかった仕事に必要な道具がないときは、仕事をやり残すくらいなら、思いつくあらゆる工夫を使いなさい。たとえば、火かき棒が見つからないか、折れていたら、火ばさみで火をかくこと。火ばさみが手元になければ、ふいごの口、灰すくいの逆側、暖炉のブラシの柄、モップの先、主人の杖を使えばよい。鶏の残り毛を焼く紙がなければ、家の中で最初に見かけた本を破りなさい。靴を拭く布がなければ、カーテンの裾か、ダマスク織のナプキンで拭くこと。靴下留めには、仕着せの飾り紐を剥ぎ取ればよい。執事が尿瓶を欲しいなら、大きな銀の杯を使ってもかまわない。
蝋燭を消す方法はいくつもあり、皆さんはすべてを教わっておくべきである。蝋燭の先を羽目板に押しつければ、芯はたちまち消える。床に置き、足で芯を踏み消してもよい。逆さに持ち、溶けた自分の蝋で火が窒息するまで待ってもよいし、燭台の受け口へ押し込んでもよい。手に持って振り回し、消してもよい。寝るときは、小便をしたあと、蝋燭の先をおまるへ浸してもよい。親指と人さし指につばをつけ、芯をつまんで消してもよい。料理人なら粉桶へ、馬丁なら燕麦の容器や、ひとつかみの干し草、敷藁の山へ、蝋燭の鼻先を突っ込めばよい。女中なら鏡に押しつけて消せる。蝋燭の芯ほど鏡をきれいにするものはないからである。しかし、あらゆる方法のうち最も速く、最もよいのは、息を吹きかけて消すことである。蝋燭を汚さずに済み、次に火をつけるにも具合がよい。
家に告げ口屋ほど有害なものはない。皆さんが力を合わせ、その者に立ち向かうことこそ、いちばんの仕事にしなければならない。その者の役目が何であれ、機会あるごとに仕事を台なしにし、何をするにも邪魔しなさい。たとえば、執事が告げ口屋なら、食器室の戸を開けておくたびに、グラスを割ること。猫かマスティフ犬を中へ閉じ込めても、同じ働きをしてくれる。フォークか匙を、二度と見つからない所へ置きなさい。料理人なら、後ろを向くたびに、煤の塊か塩をひとつかみ鍋へ放り込み、脂受け皿へ煙を上げる石炭を入れ、焼き肉に煙突の内壁の煤を塗りつけ、あるいは焼串の回転装置の鍵を隠すこと。従僕が疑わしければ、料理人に新しい仕着せの背中を汚させなさい。また、スープの皿を持って上へ行くとき、料理人がお玉いっぱいのスープを持ってそっと後を追い、階段から食堂まで、ずっと滴らせていくのもよい。それから女中に、奥さまに聞こえるほど大騒ぎをさせること。この悪癖に陥りやすいのは侍女である。気に入られたいと望んでいるからだ。そんなときは、洗濯女が必ず、洗うときに侍女の肌着を裂き、しかも半分しか洗わないようにすること。文句を言ってきたら、あの女は汗っかきで、体があまりに汚らしいので、台所女中が一週間かけるよりひどく、一時間で肌着を汚すのだと、家じゅうに話してやりなさい。
第一章
執事への心得
奉公人に心得を授けるに当たって、長年観察して分かったのは、執事の諸君こそ、いちばん深いかかわりのある人々だということだ。
あなた方の仕事は最も多岐にわたり、最も正確さを求められるものなので、思い出せる限り、職務のさまざまな部門を一つずつ取り上げ、それに合わせて指南することにしよう。
配膳台で給仕するときは、自分の手間を省き、主人のグラスを大切にするため、できる限り気を配りなさい。まず、同じ食卓に着く者同士は友人ということになっているのだから、みんなに同じグラスで飲ませ、洗わないこと。それで大いに手間が省け、割る危険もなくなる。酒は、少なくとも三度頼まれるまでは誰にも出さないこと。そうすれば、遠慮から、あるいは忘れてしまって、頼む回数を減らす人が出るので、主人の酒が節約できる。
瓶詰めのエールを一杯欲しいと言われたら、まず瓶を振り、中身があるか確かめなさい。次に、取り違えないよう、どんな酒か味見する。そして最後に、清潔好きなところを見せるため、瓶の口を手のひらで拭くこと。
コルクは瓶の口よりも、瓶の腹の中にあるように気を配りなさい。そしてコルクがかび臭かったり、酒に白い浮きかすがあったりすれば、主人はいっそう節約できる。
控えめな話し相手、礼拝付き牧師、家庭教師、あるいは居候のいとこが食卓にいて、主人や客たちに軽く扱われていると分かったら――そんなことを見抜いて気にかける速さでは、われわれ奉公人にかなう者はいない――あなたと従僕は、目上の人々に倣い、ほかの誰よりも何段もひどくその人を扱うよう努めなければならない。これほど主人を、少なくとも奥さまを喜ばせることはない。
食事の終わりごろに薄ビールを頼まれたら、わざわざ地下貯蔵室まで下りず、あちこちの杯やグラスや盆に残った雫や飲み残しを一つに集めなさい。ただし、見つからないよう、客たちに背を向けること。逆に、食事の終わりごろエールを頼まれたら、いちばん大きなジョッキになみなみと注ぎなさい。そうすれば大半が残って、主人の物を盗む罪を犯さずに、仲間の奉公人たちに恩を売ることができる。
同じくらい正直な役得が、もう一つある。毎日、ワインを瓶の大半ほど自分のために手に入れる見込みのある方法だ。上流の方々は瓶の残りを好まないものだと考え、食後には必ず新しい一本を出しなさい。前の瓶から一杯しか飲まれていなくても、そうすること。
瓶に酒を詰める前には、かび臭くないか、特によく気をつけなさい。そのためには、瓶の口から一本ずつ強く息を吹き込み、自分の息のほかに何も臭わなければ、すぐに詰めること。
急いで酒をくんでくるよう下へやられたのに、酒が出てこなかったら、空気穴を開ける手間などかけず、注ぎ口に強く息を吹き込みなさい。するとすぐ口の中に注がれてくる。あるいは空気穴の栓を抜いてもよいが、主人があなたを必要とするかもしれないから、栓を戻すためにぐずぐずしないこと。
主人の取っておきの酒を味見したくなったら、必要な量になるだけ何本かの瓶から、液面が首のすぐ下になるまで抜きなさい。ただし、主人の酒を減らさないよう、あとは必ずきれいな水で満たしておくこと。
近年、配膳台でエールと薄ビールを扱う、実に優れた工夫が見つかった。たとえば、ある紳士がエールを一杯頼み、半分しか飲まず、別の人が薄ビールを頼む。そこでただちに、エールの残りをジョッキにあけ、そのグラスに薄ビールを注ぐ。食事の間じゅう、これをあちらへこちらへと繰り返すのだ。これによって三つの目的が果たせる。第一に、洗う手間を省き、その結果グラスを割る危険も省ける。第二に、紳士方に頼まれた酒を出す際、確実に取り違えずに済む。そして最後に、この方法なら何一つ無駄にならないことが確かだ。
執事は、エールやビールを早めに上へ運ぶのを忘れがちなものだから、食事の二時間前には忘れずに運んでおきなさい。そして、手抜かりがないと人々に分かるよう、部屋の日の当たる場所に置くこと。
瓶詰めのエールを、いわゆるデカントする執事もいるが、それでは底のほうをかなり捨ててしまう。あなたは、瓶をまっすぐ逆さまにして注ぐことにしなさい。そうすれば酒の量は倍に見える。この方法なら確実に一滴も失わず、濁りは泡が隠してくれる。
銀食器を磨き、ナイフを拭き、汚れたテーブルをこするには、その日使ったナプキンやテーブルクロスを用いなさい。洗濯は一度で済むし、粗い布巾をすり減らさずにも済む。これほどの倹約に対する褒美として、いちばん上等なダマスク織のナプキンを、自分の寝帽子に使っても差し支えない、というのが私の判断だ。
銀食器を磨いたら、奥さまに磨いたと信じてもらえないと困るので、隙間という隙間に白亜の磨き粉を、はっきり見えるよう残しておきなさい。
執事の腕前が最もよく現れるのは、ろうそくの扱いである。この仕事は一部、ほかの奉公人の持ち分になることもあるが、主にかかわるのはあなただから、この件の指南はあなただけに向けて述べ、仲間の奉公人には、折に触れて応用してもらうことにしよう。
まず、日のあるうちから灯をともす無駄を避け、主人のろうそくを節約するため、何度催促されても、暗くなって半時間たつまでは持って上がらないこと。
燭台の受け口には縁まで脂を詰め、上に古い燃えさしの芯を載せて、その上に新しいろうそくを立てなさい。確かに倒れる危険はあるが、お客の前でろうそくがそれだけ長く、立派に見える。ときには趣向を変えて、受け口の底まできれいになっていると示すため、ろうそくをぐらぐらのまま差しておくこと。
ろうそくが受け口には太すぎるときは、火で溶かして合う太さにしなさい。そして煤の跡を隠すため、半分の高さまで紙で包んでおくこと。
近年、上流の方々がろうそくにひどく浪費していることに、気づかずにはいられまい。よい執事なら、自分の手間と主人の金を省くため、何としてもこれをやめさせるべきである。これにはいくつも工夫のしようがあり、壁燭台にろうそくを立てるよう命じられたときは、とりわけそうだ。
壁燭台はろうそくを大いに浪費する。いつでも主人の利益を考えなければならないあなたは、これを使わせないよう、全力を尽くすべきだ。そこで、両手でろうそくを受け口に押し込み、脂が残らず床に落ちるよう、傾けて立てることを務めとしなさい。もっとも、御婦人の髪飾りや紳士のかつらが、途中で受け止めてくれなければの話だが。また、ろうそくをぐらぐらに立てておき、壁燭台の鏡に倒れかかって、粉々に割るようにしてもよい。そうすれば主人は、一年にろうそく代とガラス屋への支払いをかなり節約でき、あなた自身もずいぶん仕事が減る。壊れた壁燭台は使えないのだから。
ろうそくは決して短くなりすぎるまで燃やさず、正当な役得として、仲のよい料理人に渡し、彼女の集める台所の屑脂を増やしてやりなさい。あるいは、それがあなたの家で認められていなければ、よく使い走りをしてくれる近所の貧しい人たちに、施してやること。
トーストにするパンを切ったら、ぼんやり見張ってなどいず、炭の上に載せ、ほかの仕事をしなさい。それから戻ってきて、中まで十分焼けていたら、焦げた面を削り落とし、食卓へ出すこと。
配膳台を飾り立てるときは、いちばん上等なグラスを、できるだけ台の縁近くに置きなさい。そうすれば輝きが倍になり、はるかに見栄えがよくなる。その結果といったところで、せいぜい六個ほど割るだけのことで、主人の懐には何でもない。
主人の塩を節約するため、グラスは自分の小水で洗いなさい。
食卓に塩がこぼれたら、無駄にせず、食事が済んでから塩を入れたままテーブルクロスを畳み、それから塩入れの中へ振り落として、翌日また使いなさい。ただし、いちばん手早く確実な方法は、クロスを片づけるとき、ナイフ、フォーク、匙、塩入れ、ちぎれたパン、肉の食べ残しを、全部一緒にクロスで包むことだ。それなら確実に何一つなくさずに済む。もっとも、乞食たちが食べ残しをもっと食べやすいように、窓から彼らのところへ全部振り落とすほうがよいと思うなら、別だが。
ワイン、エール、その他の酒の澱は、瓶の中に残しておきなさい。まとめて洗うときに一度に済むのだから、ゆすぐのは時間の無駄だし、瓶を割ったときの言い訳も立ちやすくなる。
主人の瓶に、かび臭いものや、ひどく汚れて垢のこびりついたものがたくさんあったら、良心に従って勧めるが、近くのエール酒場でエールやブランデーと交換する際は、それから先に出すことだ。
主人への伝言が届いたら、それを届けた同業の奉公人に親切にしなさい。主人の名誉のため、管理している中でいちばんよい酒を振る舞うこと。そうすれば、次の機会には、向こうも同じことをしてくれる。
夕食のあと、暗くなっていたら、灯りを節約するため、銀食器と陶磁器を同じ籠に一緒に入れて運びなさい。自分の食器室はよく心得ているのだから、暗がりでもしまえるはずだ。
昼食や夕方に客が来る予定があれば、必ず外出して、あなたが鍵を預かる物は何も取り出せないようにしなさい。そうすれば主人は酒を節約でき、銀食器もすり減らさずに済む。
さて、あなたの家計管理のうち、きわめて大切な仕事、ホッグズヘッド樽のワインを瓶に詰めることに移ろう。ここでは、清潔、倹約、兄弟愛という三つの美徳を勧めたい。コルクは、手に入るいちばん長いものを使いなさい。それで瓶一本ごとに、首の部分のワインがいくらか節約できる。瓶については、見つかる限り小さなものを選ぶこと。そうすれば何ダースという数が増え、主人も喜ぶ。中身が多かろうと少なかろうと、ワイン一本は常にワイン一本であり、主人がしかるべきダース数を受け取れば、文句は言えない。
洗ったあとの水分が残っているといけないので、どの瓶も、まずワインでゆすがなければならない。倹約をはき違えて、同じワインで一ダースの瓶をゆすぐ者もいるが、私は、いっそう慎重を期して、二本ごとにワインを替えるよう勧める。一ジルもあれば足りるだろう。それを取っておく瓶をそばに用意しておきなさい。売るにせよ、料理人と飲むにせよ、よい役得になる。
ホッグズヘッド樽は底近くまでくみ出さず、酒をかき乱すといけないので、傾けてもいけない。出が遅くなり始めたら、ワインが濁りだす前に樽を揺すり、一杯主人に持っていきなさい。主人はあなたの分別を褒め、残りは全部、その職の役得としてくれるだろう。翌日、樽を傾けておけば、二週間もすれば、好きに処分できる、よく澄んだワインが一、二ダース手に入る。
ワインを瓶に詰めるときは、大きな噛み煙草の塊と一緒に、口いっぱいにコルクを詰めなさい。そうすればワインに、酒の分かる人なら誰もが大喜びする、本物の煙草の味がつく。
怪しい瓶のワインを別の容器に移すよう言われたら、一パイントほど出たところで、手を器用に一振りし、一杯分をグラスで見せて、濁り始めたと示しなさい。
ホッグズヘッド樽のワインやほかの酒を瓶に詰めるときは、始める直前に瓶を洗い、必ず水を切らずにおきなさい。この上手なやりくりで、主人は一樽ごとに何ガロンか節約できる。
主人の名誉のために、仲間の奉公人、とりわけ料理人への親切を示すべきなのは、このときだ。ホッグズヘッド樽一つから、酒壺に数杯くらい、何だというのか。ただし、ほかの連中にやって主人を損なわせるといけないから、必ずあなたの目の前で飲ませること。そして酔ったら、病気だと言い残して寝に行くよう勧めなさい。この最後の用心は、男女を問わず、すべての奉公人に守ってもらいたい。
ホッグズヘッド樽の中身が思ったより少ないと主人が気づいたら、樽が漏れていた、ワイン樽の職人がちょうどよい時に満たしておかなかった、商人が通常の容量より小さい樽でだました、といったことほど明白な説明が、ほかにあるだろうか。
食後のお茶に湯を沸かすときは――多くの家庭では、これもあなたの仕事の一部だ――燃料を節約し、早く済ませるため、キャベツや魚をゆでていた鍋から、やかんへ湯を移しなさい。お茶の酸性で胃を荒らす性質が和らぎ、ずっと健康によいものになる。
ろうそくは大切に使い、広間や階段の壁燭台、また角灯にあるものは、受け口の中まで燃やし、自分で消えるまで放っておきなさい。主人も奥さまも、燃えさしの芯の臭いがした途端に、あなたの倹約ぶりを褒めてくださるだろう。
紳士が食後、嗅ぎ煙草入れや爪楊枝入れをテーブルに忘れて帰ったら、自分への心付けの一部と見なしなさい。奉公人の間ではそういうことになっているし、主人にも奥さまにも、損はさせない。
地方の郷紳に仕えていて、紳士淑女が食事に来られたら、主人の名誉のため、必ずその奉公人たちを、とりわけ御者を、酔いつぶしなさい。主人の名誉は、あなたが何をするにも特に心にかけなければならない。あなたがそれをいちばんよく判断できるのだから。どこの家の名誉も、料理人、執事、馬丁の手に託されている。そのことは、あとで論証しよう。
夕食時には、ろうそくをテーブルに立てたまま、芯を切りなさい。それが、はるかに安全な方法だ。燃えている芯が芯切りばさみからこぼれても、スープやサック酒のポセット、米入りミルクなどの器に落ちれば、たちまち消えて、臭いもほとんどしない見込みがある。
ろうそくの芯を切ったら、芯切りばさみは必ず開いたままにしておきなさい。そうすれば芯はひとりでに燃えて灰になり、次に芯を切るとき、こぼれてテーブルを汚すこともない。
塩入れの塩を平らにならすには、湿った手のひらで押さえつけなさい。
主人と食事をした紳士が帰るときは、必ずよく目につくところに立ち、戸口までついていき、機会を見て、その顔を正面からじっと見なさい。一シリング手に入るかもしれない。ただし、その紳士が一晩泊まったのなら、料理人、女中、馬小屋の男たち、皿洗い、庭師にも一緒に来てもらい、広間へ向かう彼の行く手で、その両側に一列ずつ並ぶこと。紳士が気前よく振る舞えば、その人の名誉になり、主人の懐は少しも痛まない。
食卓に出すパンを切るのに、ナイフを拭く必要はない。一切れか二切れ切れば、ひとりでに拭き清められる。
どの瓶にも指を入れて、いっぱいかどうか確かめなさい。それが最も確実な方法だ。手触りにかなうものはないのだから。
エールや薄ビールをくみに地下貯蔵室へ下りたら、次の方法をそっくり守るようにしなさい。右手は手のひらを上に向け、人差し指と親指で器を持つ。そして、ろうそくを指の間に挟み、ただし少し器の口のほうへ傾けておく。それから左手で栓を抜き、その先を口にくわえ、左手は不意の出来事に備えて空けておく。器がいっぱいになったら、唾液でよく湿った栓を口から抜く。唾液にはぬめりがあるので、注ぎ口にいっそうしっかりはまる。獣脂が器に垂れ落ちたら、気がつけばの話だが、匙で簡単に取り除ける。
鼠が忍び込んで磁器の皿を割ると困るので、皿をしまう戸棚には、いつでも猫を一匹閉じ込めておきなさい。
よい執事は、栓抜きのねじの先と瓶の首のどちらが硬いか試して、必ず二日で栓抜きの先を折ってしまう。こうなったら、折れ残ったねじでコルクをずたずたにしたあと、栓抜きの代わりに銀のフォークを使いなさい。そしてコルクのくずがだいたい引き出せたら、瓶の口を流しに向けて三、四度勢いよく振り、すっかり取り除くこと。
主人としょっちゅう食事をするのに、帰りがけに何もくれない紳士には、不満のしるしを示し、物覚えをよくしてやる方法が、いくつもある。パンや飲み物を頼まれたら、聞こえないふりをするか、その人よりあとに頼んだ別の客に出してやってよい。ワインを頼まれたら、しばらく待たせてから、薄ビールを出す。グラスはいつも汚れたものを渡す。ナイフを欲しがったら、匙を持っていく。従僕に目配せして、その人に皿を出さないようにする。こうした手立てや、その類の工夫を使えば、帰るときにそばに立つ機会を逃しさえしなければ、その人が家を出るまでに、半クラウンほど裕福になれるだろう。
奥さまが賭け事好きなら、あなたの身代は一生安泰だ。ほどほどの賭け事でも、一週十シリングの役得になる。そういう家なら、私は礼拝付き牧師より、いや、家令よりも、執事になりたい。すべて現金で、労せずして得られる。ただし、奥さまが、蝋ろうそくをあなたに用意させたり、お気に入りの奉公人に分け前をやるよう強いたりする人でなければの話だ。それでも、最悪の場合でさえ、古いトランプはあなたのものだ。客たちが大勝負をしたり、不機嫌になったりすれば、ひっきりなしに札を取り替えるので、古い札をコーヒーハウスや、賭け事は好きでも中古の札しか買えない家に売るだけで、かなりの利益になる。給仕するときは、必ず新品の組を客の手の届くところに置いておきなさい。ついていない人が、運を変えようと、すぐに使ってくれる。ときどき古い組をほかに交ぜても、たやすく通る。賭け事のある晩は、特によく立ち働き、客の帰り道を照らすろうそくを用意し、頼まれたらすぐ出せるよう、ワインを載せた盆を手元に置いておくこと。ただし、料理人と話をつけて、夜食は出さないようにしなさい。その分主人の家の節約になるし、夜食があるとあなたの稼ぎもかなり減るからだ。
トランプの次に儲かるのは瓶だ。この役得については、従僕以外に競争相手はいない。従僕は瓶を盗んで、ジョッキ入りのビールと引き換えに売りがちだが、主人の家でそんな不正が起こるのを防ぐのは、あなたの務めだ。まとめて瓶詰めするときに割れた瓶については、従僕が責任を負うわけではない。そしてその本数は、あなたの分別でいくらにでもできる。
グラスからの利益は、わざわざ述べるほどもない、ごくささやかなものだ。ガラス屋からのちょっとした贈り物と、グラスを選ぶ手間と目利きに対して、値段に一ポンド当たり四シリングほど上乗せしてもらうだけである。主人がグラスをたくさん持っていて、あなたか仲間の奉公人が、主人の知らないところで何個か割ってしまったら、食卓に出すのに足りなくなるまで秘密にしておき、それから主人に、グラスがなくなったと告げなさい。それなら不愉快な思いをさせるのは一度で済み、週に一、二度いらいらさせるより、ずっとよい。主人や奥さまの機嫌を損ねるのを、できるだけ少なくするのが、よい奉公人の務めである。そしてここでは、猫や犬が、あなたから責めをそらすのに大いに役立つ。なお、見当たらない瓶は、半分がうろつく者やほかの奉公人に盗まれ、もう半分は、不慮の事故とまとめ洗いの際に割れた、ということになっている。
ナイフの背も、刃と同じくらい鋭くなるまで研ぎなさい。そうすれば、紳士方は片側が切れなかったとき、反対側を試せるという利点がある。また、ナイフを研ぐのに手間を惜しまないことを示すため、鉄の部分がかなりすり減り、銀の柄の端まで削れるほど、長く研ぐこと。これは主人の面目を立てる。家計にゆとりのある証拠になるし、いつか金銀細工師が、あなたに贈り物をしてくれるかもしれない。
薄ビールやエールの気が抜けていると、奥さまは、空気穴に栓をするのを忘れたと、あなたを責めるだろう。これは大きな間違いだ。栓をすると樽の中に空気が閉じ込められ、それが酒を悪くするのだから、外へ出すべきだということほど明らかな話はない。しかし、奥さまが言い張るなら、よい奉公人には耐えがたい、一日に十二度も空気穴の栓を抜き差しする面倒を省くため、夜のうちに注ぎ口の栓を半分抜いておきなさい。酒が二、三クォート失われるだけで、樽から勢いよく出るようになる。
ろうそくを用意するときは、茶色の包み紙でくるみ、そのまま燭台の受け口に立てなさい。紙はろうそくの半ばの高さまで届くようにする。誰か入ってきたとき、立派に見える。
主人のろうそくを節約するため、何もかも暗闇でやりなさい。
第二章
料理人への心得
身分の高い人々が、たいていフランス人の男の料理人を雇う習慣になってから、ずいぶん長いことは、私も知らないわけではない。しかし、この論は主として、都会と田舎の普通の騎士、郷紳、紳士方のために書いているので、料理人さん、あなたには女性として語りかけることにしよう。もっとも、ここに述べることの大部分は、男女どちらにも役立つ。そして、あなたの章が前の章に続くのは、自然なことだ。執事とあなたは、利害を共にしているのだから。心付けはふつう同額で、ほかの者はもらい損ねても、あなた方には払われる。家の者が皆寝たあと、夜中に自分たちの蓄えた食べ物で、一緒にごちそうを楽しめるし、どの仲間の奉公人をも味方につけられる立場にいる。小さな坊ちゃんやお嬢ちゃんにも、おいしい一口や、うまい一杯をやって、気に入ってもらえる。あなた方が喧嘩をすると、双方にひどく危険で、おそらくどちらかが暇を出されることになる。そんな致命的な事態になったら、しばらくは、別の相手と気を合わせるのも、そう簡単にはいかないかもしれない。さて、料理人さん、これから指南に取りかかろう。都会に奉公していても、田舎にいても、毎週一晩、床に入るとき、同じ家の仲間の奉公人に、必ず読み聞かせてもらいたい。私の教えは、どちらにも合うようにするつもりだ。
夕食のとき、奥さまが家に冷たい肉の残りがあることを忘れていたら、余計なおせっかいで思い出させたりしてはいけない。欲しくなかったのは明らかだ。翌日思い出されたら、お申しつけがなかったので、もうなくなりました、と言いなさい。だから、嘘をつくことにならないよう、寝る前に執事か、ほかの親しい仲間と、始末しておくこと。
家に猫か犬がいて、くわえて逃げたと罪を着せられるうちは、鶏の脚を夕食に出してはいけない。たまたまどちらもいなければ、鼠か、よそのグレイハウンドのせいにしなければならない。
食卓に出す皿の底を拭いて、台所の布巾を汚すのは、やりくりが悪い。テーブルクロスでも同じ役に立ち、毎食取り替えるのだから。
焼き串は使ったあと、決してきれいにしてはいけない。肉からついた脂が、錆を防ぐのにいちばんよいし、また使うときには、その脂が肉の内側をしっとりさせてくれる。
裕福な家に仕えているなら、焼いたり煮たりする仕事は、あなたの職の品位にふさわしくなく、知らないほうが似つかわしい。だから、仕える家の名誉を傷つけないよう、そうした仕事はすべて台所女中に任せなさい。
買い出しを任されているなら、肉はできるだけ安く買いなさい。ただし、勘定を出すときは、主人の名誉を重んじ、いちばん高い値を書きつけること。それに、それが公正というものだ。仕入れたのと同じ値で売って、やっていける者はいないのだから。安心して請求してよいと、私は確信している。肉屋と鳥肉屋の言い値より多くは払っていない、と誓いなさい。奥さまから、夕食用に肉の塊を取り置くよう言われても、全部を取り置かなければならないという意味に受け取ってはいけない。だから半分は、自分と執事に回してよい。
よい料理人は、手間ばかりかかって、ろくに仕事の進まないことを、まことに適切にも、ちまちました仕事と呼び、我慢ならなく思う。たとえば、小鳥の料理がそうだ。ひどく手数がかかって大騒ぎになり、二本目、三本目の焼き串まで要る。もっとも、それはまったく不要である。牛のサーロインを回せるほど丈夫な焼き串が、ヒバリを回せないというのも、実におかしな話だ。しかし奥さまが気難しく、大きな串では鳥が裂けてしまうと心配なさるなら、脂受け皿にきれいに並べなさい。羊や牛の焼肉から落ちる脂で鳥に脂をかける代わりができ、時間もバターも節約できる。気概のある料理人の誰が、ヒバリやハシグロヒタキなどの小鳥の羽をむしって、時間をつぶしたりするものか。だから、女中や幼いお嬢ちゃんたちに手伝ってもらえなければ、さっさと済ませるため、毛を焼くか、皮を剥ぐかしなさい。皮がなくなっても大した損ではなく、肉はまったく同じだ。
買い出しを任されているなら、肉屋からビーフステーキとジョッキ一杯のエールをおごってもらってはいけない。良心に照らして言うが、それは主人に損をさせるのと変わらないと思う。代わりに、その役得は必ず、掛け買いでなければ現金で、請求書を払う際なら一ポンドごとの口銭として、受け取ること。
台所のふいごは、火ばさみや火かき棒を大切にするため、その口で火をかき立てるので、たいてい傷んでいる。そこで、奥さまの寝室のふいごを借りてきなさい。それがいちばん使われず、ふつう家でいちばんよいものだ。そして、もし傷めたり脂まみれにしたりすれば、そのままあなた専用に下げ渡される見込みがある。
いつでもごろつき小僧を家のあたりに置いて、使い走りをさせ、雨の日には代わりに買い出しに行かせなさい。それで服が傷まず、奥さまにも、もっときちんとした姿を見せられる。
奥さまが台所の屑脂をあなたにくださるなら、その寛大さに報いて、肉は念入りに煮たり焼いたりしなさい。御自分の利益のために取っておかれるなら、それに見合う扱いをすること。そして火力を不足させるくらいなら、ときどき焼き汁の脂や、たまたま溶けて油になったバターで、火の勢いをよくしてやりなさい。
肉は、串をしっかり刺して、丸々と太って見えるようにして出しなさい。ときには鉄串をうまく使っても、見栄えがよくなる。
長い肉の塊を焼くときは、真ん中だけに気を配り、両端は生のままにしておきなさい。そこはまた別の機会に使え、燃料の節約にもなる。
皿や大皿を磨くときは、もっとたくさん盛れるよう、縁を内側へ曲げなさい。
食事がささやかなときや、家の者がよそで食事をするときは、必ず台所で盛んに火を燃やし、煙を見た近所の人々が、主人の暮らし向きのよさを褒めるようにしなさい。ただし、大勢客を招いたときには、できる限り石炭を惜しむこと。肉の大部分が半生なら、それだけ残って、翌日また使えるからだ。
肉を煮るには、いつもポンプでくんだ水を使いなさい。川の水や水道の水は、ときには手に入らないものだから、そのとき肉の色が違うと奥さまが気づけば、あなたに落ち度がないのに叱られてしまう。
食料貯蔵室に鶏がたくさんあったら、かわいそうな猫が鼠捕りの上手なやつであれば、情けをかけて、戸を開けておきなさい。
雨の日に、どうしても買い出しに行かなければならなくなったら、自分の服をいたわるため、奥さまの乗馬用頭巾と外套を持ち出しなさい。
三、四人の日雇いの掃除女を、いつでも台所であなたに仕えるようにしておきなさい。その賃金は、肉の食べ残し、わずかの石炭、そして燃えがら全部をやるだけで、安く済む。
面倒な奉公人たちを台所へ寄せつけないため、焼き串回転器の巻き上げハンドルはいつでも差したままにして、彼らの頭に落ちるようにしておきなさい。
煤の塊がスープに落ち、うまく取り出せなかったら、よくかき混ぜなさい。スープに濃厚なフランス風の味がつく。
バターを溶かして油にしてしまっても、気にせずに出しなさい。油はバターより上品なソースなのだから。
鍋や釜の底をこそげるには、銅の味をつけないよう、銀の匙を使いなさい。
ソース用のバターを出すときは、倹約して半分は水にしなさい。そのほうが、ずっと健康にもよい。
溶かしたバターに真鍮の味がしたら、それは、銀の小鍋を使わせてくれない主人の落ち度だ。それに、そのほうが少量でたくさん間に合い、錫を引き直すには、ひどく金がかかる。銀の小鍋があるのにバターが煙臭かったら、石炭のせいにしなさい。
手でできることには、決して匙を使ってはいけない。主人の銀食器をすり減らすと困るから。
決められた時刻までに食事の用意ができないと分かったら、時計を戻しなさい。そうすれば、一分の違いもなく間に合わせられる。
ときどき真っ赤におきた石炭を脂受け皿に落とし、脂の煙を立ち上らせて、焼肉に強い風味をつけなさい。
台所は、自分の身支度部屋と思いなさい。ただし、手を洗うのは、便所に行き、肉を串に刺し、鶏を縛って形を整え、サラダの葉を選り分けてからにすること。いや、実際には、第二の膳の料理を出すまでは洗ってはいけない。さまざまな物を扱わなければならず、手は十倍も汚くなるのだから、仕事が済んでから、一度洗えば全部間に合う。
食べ物を煮たり焼いたり蒸し煮にしたりしている間、私が認める身支度は、一つだけある。髪をとかすことだ。それなら時間の無駄にならない。料理の上に身をかがめ、片手で様子を見ながら、もう片方の手で櫛を使えるのだから。
抜け毛が食べ物と一緒に出てしまったら、あなたを困らせた従僕の誰かに、安心して罪を着せてよい。あの御仁たちは、鍋の汁に浸したパンや、串から切り取った肉をやらないと、ときに意地悪をするものだから。まして、脚に熱い粥をひしゃく一杯ぶちまけたり、尻に皿洗い布をピンで留めたまま主人のところへ送り出したりすれば、なおさらだ。
焼いたり煮たりするときは、台所女中に、大きな石炭だけ持ってくるよう言い、小さなものは上の部屋の暖炉に取っておきなさい。大きいほうが料理に向いているし、それがなくなって、何かの料理をしくじったら、正当に石炭の不足のせいにできる。それに、燃えがら拾いの人々は、大きな燃えがらに未使用の大きな石炭がたっぷり交じっていないと、きっと主人の暮らしぶりを悪く言う。こうすれば、評判を立てながら料理をし、慈善を行い、主人の名誉を高め、ときには燃えがら拾いの女への気前よさの礼に、ジョッキのエールを分けてもらうこともできる。
第二の膳の料理を出してしまえば、大きな家では、夕食まで何もすることがない。だから手と顔をごしごし洗い、頭巾と肩掛けを着け、夜の九時か十時まで、親しい仲間の間で楽しみなさい。ただし、先に昼食を済ませること。
あなたと執事の間には、いつでも固い友情を保ちなさい。結束することが、双方の利益になるのだから。執事はしばしば、うまい一口が欲しくなり、あなたはそれよりずっとしばしば、よい酒を冷たく一杯やりたくなる。ただし、あの男には用心すること。女中たちを、サック酒一杯や、砂糖を入れた白ワインで誘えるという大きな強みがあるので、ときには浮気な恋人になる。
仔牛の胸肉を焼くときは、恋人の執事が胸腺を好むことを忘れず、夕方まで取っておきなさい。猫や犬がくわえて逃げたとか、傷んでいた、蠅に卵を産みつけられていた、と言えばよい。それに、食卓では、それがなくても、あっても、見栄えは変わらない。
客たちを食事まで長く待たせ、そのうえ、たいていそうなるように、肉に火を通しすぎてしまったら、奥さまのせいにして差し支えない。食事を出せとあまりに急かされたので、煮すぎ焼きすぎのまま出さざるを得なかったのだ。
食事のほとんどどの皿もしくじったとして、どうしようがあっただろう。従僕たちが台所へ来て、邪魔ばかりしたのだから。そして、それが本当だと証明するため、折を見て腹を立て、一人か二人の仕着せに、ひしゃく一杯の肉汁を浴びせなさい。それに、金曜日と幼子殉教者の日は、一週間のうちでも運の悪い二日で、どちらの日にも幸運など望めない。だから、その二日には、正当な言い訳がある。
急いで皿を下ろすときは、一ダースが一緒に調理台へ落ちて、すぐ手に取れるよう、傾けなさい。
時間と手間を省くため、林檎も玉葱も同じナイフで切りなさい。育ちのよい上流の方々は、何を食べるにも、玉葱の味がするのを好む。
バター三、四ポンドを手で一塊にし、調理台のすぐ上の壁にたたきつけて、必要なときにちぎって使えるようにしておきなさい。
台所用に銀の小鍋があったら、よくへこませ、いつも真っ黒にしておくよう勧めたい。それが主人の名誉になる。いつもよい暮らしをしてきた証しになるからだ。そして石炭の上でぐりぐり動かすなどして、小鍋を置く場所を作りなさい。
同じように、台所に大きな銀の匙を使わせてもらえたら、絶えずこそげたりかき混ぜたりして、匙のくぼみの半分がすり減るようにし、たびたび陽気に言いなさい。この匙は、もう主人のために十分働いたね、と。
朝、主人に一椀の肉汁や、薄い穀粉粥などを出すときは、忘れずに、親指とほかの二本の指でつまんで、皿の脇に塩を添えなさい。匙やナイフの先を使うと、塩をこぼす危険があり、それは不運のしるしになるからだ。ただし、塩に触れようとする前に、親指とほかの指をきれいに舐めておくのを忘れないこと。
第三章
従僕心得。
あなたの仕事はさまざまな役目が入り交じっているので、用事は多岐にわたり、主人や奥さま、若旦那やお嬢さまのお気に入りになる機会にも恵まれている。あなたは一家の伊達男で、女の奉公人は皆、あなたに恋をする。ときには主人があなたの服装を手本とし、ときにはあなたが主人を手本とする。どんな客の集まりでも食卓で給仕するので、世間を見聞きし、人間とその作法を知る機会がある。確かに、贈り物を届けにやられたり、田舎で茶の給仕をしたりするのでなければ、心付けはあまりもらえない。だが近所では「何々さん」と呼ばれ、ときには財産をつかむこともある。ひょっとすると、主人の娘かもしれない。あなたの仲間で、軍の立派な指揮職に就いた者も、私は大勢知っている。町では芝居小屋に専用の席があり、才人や批評家になる機会にも恵まれる。公然たる敵は、町の下層の連中と、奥さまの侍女のほかにはいない。その連中は、ときどきあなたを溝跳び野郎と呼びたがる。私はあなたの職分を心から尊敬している。かつて私も、その一員たる栄誉に浴したことがあるからだ。ところが愚かにも、税関の勤めを引き受けて身を落とし、その職を離れてしまった。だが、わが同業の諸君がもっとよい運をつかめるよう、ここに教えを授けよう。これは、多くの思索と観察、それに七年の経験の実りである。
よその家の秘密を知るには、自分の主人の家の秘密を話してやりなさい。そうすれば、内でも外でも気に入られ、重要人物と見なされるようになる。
籠や包みを手に持って、街路を歩く姿を見られてはいけない。ポケットに隠せるもの以外は持ち歩かないこと。さもないと、職業の名折れになる。それを防ぐため、荷物を運ばせる使い走りの小僧を、いつも雇っておきなさい。ファージング銅貨が足りなければ、厚切りのパンか、肉の切れ端で払えばよい。
部屋を汚さないよう、靴磨きの少年には、まず自分の靴を磨かせ、それから主人の靴を磨かせなさい。その仕事と使い走りのために、専用の少年を置き、残り物で払うこと。使いに出されたら、恋人に会うなり、仲間の奉公人とエールを一杯飲むなり、自分の用事を必ず差し挟みなさい。それだけ丸ごと時間が浮くのだから。
食事の給仕中、皿をどう持つのがいちばん便利で上品かについては、大変な論争がある。椅子の枠と背もたれの間に挟む者もいて、椅子の造りがそれを許すなら、実によい工夫だ。また、落とすのを恐れて、親指が皿のくぼみの真ん中まで届くほど、しっかり握る者もいる。ただし、親指が乾いていれば、この方法も確かではないので、その場合は、親指の腹を舌でぬらすことを勧める。皿の裏を手のひらのくぼみに載せておくという、一部の奥さま方がお勧めの愚かなやり方は、さまざまな事故を招くため、誰からも見放されている。また、左の脇の下へじかに皿を挟むほど、洗練された者もいる。温めておくには最上の場所だが、大皿を下げる際、抱えていた皿が客の誰かの頭に落ちることもあるので、危険かもしれない。私自身は、これらの方法を何度も試してみて、どれにも異論がある。そこで第四の方法を勧めよう。左の胴着とシャツの間に、縁まですっぽり皿を差し込んでおくのだ。これなら、脇の下、スコットランド人のいうオクスターに挟むのと、少なくとも同じくらい温まる。しかも皿が見えなくなるので、よその人は、皿など持たない、もっと格の高い奉公人だと思うだろう。落とす心配もなく、こうしておけば、手の届く客が皿を欲しがったとき、すでに温まったものを一瞬でさっと抜き出せる。最後に、もう一つ便利な点がある。給仕の途中で咳やくしゃみが出そうになれば、すぐ皿を抜き出し、くぼんだ側を鼻か口にぴったり当てて、料理や婦人の服に、どちらからも水気を飛ばさずにすむのだ。紳士淑女も、そういうときには、帽子かハンカチで同じようなことをするのを見かける。だが皿なら、そのどちらより汚れにくく、すぐきれいになる。咳やくしゃみが済んだら、皿を元の位置に戻すだけでよく、通り道でシャツが拭いてくれるからだ。
いちばん大きな料理皿を運び下げたり運び上げたりするときは、婦人方に元気と腰の強さを見せるため、片手でやりなさい。ただし、必ず二人の婦人の間で行うこと。皿が滑っても、スープやソースが床を汚さず、婦人たちの服にかかるようにするためだ。このやり方で、私の立派な友人である仲間二人は、相当な財産を手に入れた。
新流行の言葉、悪態、歌、芝居のせりふの断片を、覚えられるだけ覚えなさい。そうすれば、十人中九人の婦人に喜ばれ、百人中九十九人の伊達男に羨ましがられるようになる。
食事の途中、折々には、特に身分の高い客がいるとき、あなたも仲間も全員、一緒に部屋からいなくなるよう気をつけなさい。そうすれば、給仕の疲れから少し休めるうえ、客たちも、あなたがたのいることに気兼ねせず、もっと自由に話ができる。
伝言を頼まれたら、相手が公爵でも公爵夫人でも、主人や奥さまの言葉ではなく、自分の言葉で伝えなさい。伝言に何が必要かということを、その仕事で育ってきたあなたほど、あの方々に分かるはずがないではないか。ただし、返事は尋ねられるまで決して伝えず、伝えるときには自分の言い回しで飾り立てること。
食事が済んだら、皿を山と積んで台所へ運び、階段の上まで来たところで、全部、自分より先に転がし落としなさい。これほど心地よい眺めも音もない。銀の皿なら、なおさらだ。自分の手間も省けるうえ、台所の戸口の近くに並び、皿洗いが洗うばかりになる。
皿に載せた肉の塊を運び上げる途中、食堂へ入る前に手から落とし、肉は地面、ソースはこぼれてしまったら、肉をそっと拾い上げ、上着の裾で拭き、皿に戻して出しなさい。奥さまがソースがないとおっしゃったら、別の皿で運んでくるところです、と答えればよい。
肉料理の皿を運び上げるときは、ソースに指を浸すか、舌でなめるかして、うまいかどうか、主人の食卓に出してよいものかどうかを確かめなさい。
奥さまがどんな家と付き合うべきかは、あなたがいちばんよく判断できる。だから、あなたの気に入らない家へ、挨拶や用事の伝言を持って行くよう言いつけられたら、その家との間に、仲直りのできない喧嘩が起こるような伝え方で、返事を取り次ぎなさい。あるいは、その家の従僕が同じような使いでやって来たら、奥さまから託された返事を、向こうの家が侮辱と受け取るように、言い換えて伝えればよい。
借間に滞在していて、靴磨きの少年が見つからなければ、カーテンの裾か、清潔なナプキンか、家主の女将の前掛けで、主人の靴を磨きなさい。
家の中では、主人に呼ばれるとき以外、いつも帽子をかぶっていなさい。そして御前へ出たら、すぐに脱いで、礼儀を示すこと。
靴の泥は、決して泥落とし金具で落とさず、玄関の中か階段の下で落としなさい。そうすれば、一分近く早く帰宅したという評判が得られ、泥落としも長持ちする。
外出の許可は決して求めないこと。求めれば、不在だと必ず知られ、ぶらぶら出歩く怠け者と思われる。ところが、誰にも気づかれずに出れば、いないことを知られずに帰れる見込みがある。仲間の奉公人に行き先を教える必要もない。彼らはきっと、ほんの二分前には家にいたと言ってくれる。それが、すべての奉公人の務めだからだ。
ろうそくの芯は指でつまんで切り、切り取った芯は床に投げて、臭わないよう踏み消しなさい。この方法なら、芯切りばさみの摩耗が大いに防げる。また、芯は獣脂に近いところまで切ること。そうすれば脂が垂れて、料理人の役得である台所の廃脂が増える。賢く立ち回るなら、あの人とは仲よくしておくべきなのだから。
食後の感謝の祈りが唱えられている間に、あなたも仲間も、客の背後から椅子を取り去りなさい。そうすれば、また座ろうとして後ろへひっくり返り、皆が愉快になる。ただし、台所へ戻るまで笑いをこらえる分別は持ち合わせ、そこで仲間の奉公人を楽しませること。
主人が客と取り込んでいるのが分かったら、部屋へ入り、あちこち整えるふりをしなさい。叱られたら、鈴をお鳴らしになったと思いました、と答えること。そうすれば主人は、仕事に根を詰めすぎたり、話で消耗したり、頭を絞ったりするのを中断できる。どれも身体によくないことなのだから。
カニやロブスターのはさみを割るよう言いつけられたら、食堂の戸の蝶番側の隙間に挟みなさい。これなら、少しずつ割ることができ、玄関の鍵やすりこぎを使うときのように、身をつぶさずにすむ。
客の使い終えた皿を下げるとき、使ったナイフとフォークも載っていたら、手際のよさを見せなさい。皿を持ち上げ、残った骨や肉の切れ端は落とさずに、ナイフとフォークだけを食卓へ放り落とすのだ。そうすれば、あなたより暇のある客が、使ったフォークとナイフを拭いてくれる。
飲み物を頼んだ人にグラスを運ぶときは、肩を小突いたり、「旦那さま」「奥さま、グラスをどうぞ」と叫んだりしてはいけない。それでは、相手の喉に無理やり押し込む気があるかのようで、無作法だ。その人の左肩の後ろに立ち、相手の都合を待つこと。うっかり肘で払い落とされたとしても、それはその人の落ち度で、あなたの落ち度ではない。
雨の日に奥さまから辻馬車を呼びにやられたら、服を守り、歩く手間を省くため、その馬車に乗って戻りなさい。奥さまのペティコートの裾が、あなたの泥靴で汚れるほうが、お仕着せを傷め、自分が風邪をひくよりよい。
あなたのような立場の者にとって、提灯を持って主人の街路の足元を照らすことほど、ひどい屈辱はない。だから、あらゆる手を試して逃れようとするのは、まったく正直な方策だ。そのうえ、これは主人が貧乏か、けちかのどちらかだと示すことにもなる。どこの奉公先でも出会いうる、最悪の二つの性質である。私がこの境遇にあったときは、いくつか賢い工夫を使ったので、ここでお勧めしよう。あるときは、提灯のいちばん上まで届くような長いろうそくを使い、上を焼いた。だが主人は、私をたっぷり殴ったあと、そこへ紙を貼れと命じた。そこで、中くらいのろうそくを使い、ろうそく受けにわざと緩く差して片側に傾くようにし、角板の四分の一をすっかり焼いた。次に、半インチほどのろうそくの切れ端を使うと、受けの中に沈み込み、はんだを溶かして、主人は道の半分を暗がりの中で歩かざるを得なかった。すると主人は、ろうそく受けのあった場所に、二インチのろうそくを立てさせた。それから私は、つまずいたふりをして、火を消し、ブリキの部分をすっかり壊した。とうとう主人は、純粋に節約のため、提灯持ちの少年を使わざるを得なくなった。
私たちの仕事をする紳士に、食事中、部屋から皿や大皿や瓶などを運び出す手が二本しかないのは、大いに嘆かわしい。しかも、荷物を抱えたまま、その片手で戸を開けなければならないので、不運はいっそう大きい。だから、戸はいつも少し開けておき、足で開けられるようにすることを勧める。そうすれば、腹から顎まで皿や大皿を積み、そのうえ両脇にも相当な量を抱えて運び出せるので、疲れる往復を何度も省ける。ただし、部屋から出るまでは何も落とさず、できれば音の聞こえないところまで行くよう、気をつけなさい。
寒い雨の晩、手紙を出しに郵便局へやられたら、居酒屋に寄って一杯飲み、用事が済んだと思われる時刻まで待ちなさい。ただし、次の晴れ間の機会には、正直な奉公人にふさわしく、忘れずに手紙を投函すること。
食後、婦人方のコーヒーをいれるよう命じられ、かき混ぜる匙を取りに上へ走っている間や、何かほかのことを考えている間や、小間使いに口づけしようと揉み合っている間に、鍋が吹きこぼれたら、布巾で鍋の外側をきれいに拭き、堂々とコーヒーを運びなさい。奥さまが薄すぎるとおっしゃって、吹きこぼれたのではないかと問い詰めたら、断固として否定すること。いつもより粉を多く入れた、一インチもそばを離れなかった、奥さまに婦人方のお客様があるので、いつもよりよくいれようと努めた、台所の奉公人たちも証言してくれる、と誓いなさい。そうすれば、ほかの婦人方はコーヒーがたいそうおいしいと言い、奥さまは自分の口の具合が悪いと認め、今後はご自分のほうを疑って、そう軽々しく文句を言わなくなる。このようにするのは、良心からであってほしい。コーヒーはたいそう身体に悪いので、奥さまへの愛情から、できるだけ薄くして差し上げるべきだからだ。そしてこの理屈によれば、女の奉公人の誰かに、いれたてのコーヒーを一杯振る舞いたくなったときは、奥さまの健康と、女の奉公人の好意を得ることのため、粉の一部を取り分けてよいし、そうすべきなのだ。
主人の友人のところへ、ささやかなつまらない贈り物を届けにやられたら、ダイヤモンドの指輪と同じくらい注意深く扱いなさい。だから、贈り物がリンゴ半ダースにすぎなくても、取り次いだ奉公人を上へやり、自分の手で直接お渡しするよう命じられている、と告げさせること。これなら、事故や間違いを防ぐための几帳面さと用心が示せるし、先方の紳士か淑女も、一シリングくらいは渡さずにいられない。だから主人が同じような贈り物を受け取るときには、持って来た使いの者に同じやり方を教え、主人には気前をよくさせるようなほのめかしをしなさい。同じ奉公人どうし、助け合うべきだからだ。それもすべて主人の名誉のためであり、立派な奉公人が何より考えるべきなのは、その名誉であって、判断するのにいちばん適しているのも奉公人なのだから。
数軒先へ娘とおしゃべりに行くときや、エールを駆けつけ一杯飲みに行くときや、仲間の従僕が絞首刑になるのを見に行くときは、玄関の戸を開け放しておきなさい。戸をたたかずにすむので、主人に外出したと気づかれない。十五分くらいで、主人への奉公に差し障りはないのだから。
食後、残りのパンを下げるときは、汚れた皿に載せ、ほかの皿を上から押しつけ、誰も手をつけられなくしておきなさい。そうすれば、いつもの使い走りの小僧の、よい役得になる。
やむを得ず自分の手で主人の靴を磨くときは、いちばん切れる食卓用ナイフの刃を使い、つま先を火から一インチのところに置いて乾かしなさい。濡れた靴は危険なうえ、この手を使えば、それだけ早く自分のお下がりになる。
家によっては、主人がしばしば酒場にワインを一本買いにやり、その使いがあなただ。そこで、見つかる限りいちばん小さな瓶を持って行くことを勧める。ただし、酒場の給仕には、たっぷり一クォートを出させなさい。そうすれば、自分もいい一口にありつけて、瓶もいっぱいになる。栓をするコルクに気を遣う必要はない。親指で十分だし、汚れた紙を噛んで丸めたものでもよい。
駕籠かきや御者が高すぎる代金を請求し、主人から値切りにやられたときは、いつでも気の毒な連中に同情し、一ファージングも負けないと言っています、と主人に伝えなさい。主人にははした金にすぎない一シリングを節約してやるより、エールを一杯分けてもらうほうが、あなたの得になる。
暗い晩に奥さまのお供をするとき、奥さまが馬車をお使いなら、馬車の横を歩いて疲れたり汚れたりせず、後ろの自分の持ち場に上がり、馬車の屋根の上から前へ傾けて、たいまつを持ちなさい。芯の燃えかすを落とす必要があれば、馬車の角に打ちつけること。
日曜日、奥さまを教会に送り届けたら、安心して使える二時間がある。居酒屋で仲間と過ごしてもよいし、家で料理人や女中たちと、ビーフステーキとビールを一杯楽しんでもよい。実際、哀れな奉公人には、楽しく過ごせる機会があまりに少ないのだから、一度たりとも逃すべきではない。
食事の給仕をするときは、自分の健康のためにも、食卓についている方々の健康のためにも、決して靴下をはいてはいけない。たいていの婦人は若い男の足の指の匂いが好きで、それはまた、憂鬱な気分に対する特効薬でもあるからだ。
できれば、お仕着せの色が、あまりけばけばしくなく、目立たない奉公先を選びなさい。緑と黄色は、すぐにあなたの仕事をばらしてしまうし、銀以外の飾り紐もすべて同じだ。銀のものなど、公爵か、領地を継いだばかりの放蕩者のところでなければ、まずあなたには回ってこない。望むべき色は、青か枯葉色に、赤の折り返しが付いたものだ。それに、借り物の剣、借り物の気取り、主人の肌着、そして生まれつきの度胸を磨いたものが加われば、顔を知られないところでは、どんな称号でも好きなものが手に入る。
食事中、皿などを部屋から運び出すときは、両手に持てるだけ持ちなさい。ときにはこぼし、ときには落とすこともあろうが、年の終わりには、仕事が大いにはかどり、多くの時間を節約したと分かるだろう。
主人や奥さまが街路をお歩きになるときは、片側に付き、できるだけ横に並んで歩きなさい。見た人は、あなたがその家の者ではないか、あるいはお連れの一人だと思うだろう。ただし、どちらかが振り向いて声をかけ、帽子を取らざるを得なくなったら、親指と指一本だけを使い、残りの指で頭をかくこと。
冬、食堂の火を入れるのは、料理を出すわずか二分前にしなさい。どれほど石炭を節約してあげているか、主人に分かってもらうためだ。
火をかき起こすよう言いつけられたら、炉の格子の間の灰を、暖炉用のほうきで掃き出しなさい。
馬車を呼ぶよう言いつけられたら、たとえ真夜中でも、玄関より遠くへは行かないこと。呼ばれたときに、居合わせなくてはいけないからだ。そこで三十分、「馬車、馬車」と怒鳴り続けなさい。
お仕着せの紳士諸君は、世の中の誰からもひどく扱われるという不運に遭っているが、それでもどうにか元気を保ち、ときには相当な財産にたどり着く。私の親しい友人だった仲間の一人は、宮廷のある婦人の従僕をしていた。婦人は名誉ある役職に就き、伯爵の姉妹で、身分の高い男の未亡人だった。この友人には、たいそう洗練されたところがあり、婦人の駕籠の前を軽やかに歩く姿や、髪を帽子の下へ収めるしぐさが優美なのに気づいて、婦人は盛んに言い寄った。ある日、トムを後ろに乗せて馬車で散歩に出ると、御者が道を間違えて、特別の権限を持つ礼拝堂の前で止まった。そこで二人は結婚し、トムは奥方の隣に座って、馬車で帰宅した。ところが不幸にも、トムは奥方にブランデーを飲むことを教えてしまい、奥方はそれを買うため銀器をすべて質に入れたあげく、飲酒のために死んだ。今、トムは雇われの麦芽職人をしている。
有名な賭博師ブーシェも、私たちの仲間の一人だった。五万ポンドの財産がありながら、バッキンガム公爵に、奉公していたときの未払い賃金をしつこく催促したものだ。ほかにも多くの例を挙げられるし、特に、息子が宮廷の要職に就いた仲間もいる。これだけで、次の助言を授けるには十分だろう。誰に対しても生意気で無礼に振る舞い、特に、身分の高い家の付き牧師や侍女、格上の奉公人たちには、そうしなさい。ときどき蹴られたり、杖で打たれたりしても、気にしないこと。その横柄さも、ついには得になる。お仕着せを着る身から、ほどなく軍旗を担う士官の身になるかもしれないのだから。
食事中、椅子の後ろに控えているときは、絶えず背もたれを揺すりなさい。あなたが後ろに立っているその人に、いつでも給仕する用意があると分かってもらうためだ。
磁器の皿を重ねて運んでいて、よくある不運で落としてしまったら、言い訳はこうしなさい。広間で犬が前を横切った、小間使いがうっかり戸を押しつけた、玄関をふさぐようにモップが立っていて足を取られた、袖が鍵や錠前のつまみに引っかかった。
主人と奥さまが寝室で話し合っていて、自分や仲間の奉公人のことを話しているのではないかと疑ったら、奉公人全体の公益のため、戸口で立ち聞きしなさい。そして、共同体を害しかねない改革を何一つ許さないよう、皆で結束して、しかるべき手を打つこと。
順境におごってはいけない。運命は車輪に乗って回るという話を、聞いたことがあるだろう。よい勤め口にいるなら、あなたはその車輪のいちばん上にいる。何度、お仕着せを剝ぎ取られ、戸外へ蹴り出されたかを思い出しなさい。賃金はすべて前借りし、仕立て直した赤い踵の靴、中古のかつら、繕ったレースの袖飾りにつぎ込み、そのうえ居酒屋の女将とブランデー屋には、どっさり借金があった。以前は、朝から隣の酒場の給仕が、うまそうな牛の頬肉へと手招きし、肉はただでくれ、酒代だけをつけにしてくれたものだ。ところが、あなたが不名誉にも追い出されるや、賃金から払ってもらおうと、主人へ請願書を持って行った。もらえる賃金など、一ファージングも残っていないのにだ。それからは執行吏を連れて、隠れた地下室という地下室まで追い回してきた。たちまち身なりがみすぼらしくなり、服は擦り切れ、踵は破れ、勤め口を探し歩くため、古いお仕着せを借りて、どうにか人前へ出なければならなくなったことを、思い出しなさい。古い知り合いのいる家ならどこへでもこそこそ出かけ、命をつなぐために、残り物を盗んで恵んでもらったものだ。要するに、人間の暮らしの最底辺にいたのだ。古い俗謡のいう、奉公先を追い出された溝跳び野郎の境遇である。今の栄えた暮らしの中で、これをすべて思い出しなさい、と私は言っているのだ。広い世間に放り出された、少し前までの仲間、あの下積み連中には、きちんと援助金を払うこと。その一人を自分の配下として抱え、居酒屋へ行きたいときには、代わりに奥さまの使いに出しなさい。ときどき内緒で、パン一切れと冷たい肉を少し渡してやること。主人にはそれくらいの余裕がある。まだ決まった寝場所がないなら、厩か馬車小屋か裏階段の下で寝かせてやり、家へ出入りする紳士たち皆に、優秀な奉公人として推薦しなさい。
従僕の仕事のまま年を取ることは、あらゆる屈辱の中でも最たるものだ。だから、宮廷の勤め口も、軍の指揮職も、家令の後継も、歳入関係の仕事も――後の二つは、読み書きができなければ手に入らない――、あるいは主人の姪や娘との駆け落ちも、望めないまま年が進んできたら、私は率直に、追い剥ぎをやることを勧める。それが、あなたに残された唯一の名誉ある地位なのだから。そこでは、昔の仲間に大勢会い、短くとも陽気な一生を送り、最期には晴れ姿を見せられる。そのことについて、少々教えを授けよう。
最後の助言は、絞首刑になるときの振る舞いに関するものだ。主人の物を盗むにせよ、家に押し入るにせよ、街道で追い剥ぎを働くにせよ、酔った喧嘩で最初に出会った男を殺すにせよ、そうなるのは、あなたには大いにありうる運命である。そしてそれは、次の三つの性質のいずれかによるのだ。仲間と楽しく付き合うのが好きか、心が気前よすぎるか、気性が活発すぎるかである。このときの立派な振る舞いには、あなたの共同体全体がかかわっている。あらゆる厳粛な呪いの言葉にかけて、犯行を否定しなさい。仲間が百人、入れてもらえるなら、被告席の周りに付き添い、求めがあれば、あなたの人柄を法廷で証言する用意があるだろう。仲間の正体を明かせば赦免するという約束以外には、何に説かれても自白しないこと。ただし私は、そんなことはすべて無駄だと考えている。今は逃れても、別の日には同じ運命になるだろうから。ニューゲート監獄のいちばんよい作者に、最期の演説を書いてもらいなさい。親切な恋人の娘たちが、オランダ織のシャツと、深紅か黒のリボンで飾った白い帽子を用意してくれるだろう。ニューゲートの友人全員に、陽気に別れを告げなさい。勇気をもって荷車に乗り、膝をつき、目を上げ、一字も読めなくても本を手に持ちなさい。絞首台でも犯行を否定し、刑吏に口づけして赦しを与え、それでお別れだ。仲間の費用で盛大に葬られ、外科医には手足一本触れさせない。あなたの名声は、同じくらい名高い後継者が、その地位を継ぐまで続くだろう。
第四章
御者心得。
あなたが厳密に義務づけられているのは、御者台に上がり、主人か奥さまをお運びすることだけである。
馬はよく仕込んでおき、奥さまの訪問に付き添っているとき、近所の居酒屋へそっと入り、友人と一杯やってくる間くらいは、待っているようにしなさい。
馬車を出す気分でないときは、馬が風邪をひいた、蹄鉄を打ち直す必要がある、雨は馬に悪く、毛並みを荒らし、馬具を腐らせると、主人に言いなさい。これは馬丁にも応用できる。
主人が田舎の友人と食事をするときは、飲めるだけ飲みなさい。よい御者がいちばんうまく馬車を操るのは、酔っているときだと、認められているからだ。それから、崖の縁すれすれ一インチのところを走らせ、腕前を見せなさい。そして、酔ったときほど、うまく操れることはありません、と言うこと。
主人の馬の一頭を気に入り、代金とは別にあなたへ謝礼を払おうという紳士を見つけたら、主人を説得して売らせなさい。あまりに性質が悪く、その馬を使っては責任を持って馬車を出せないし、そのうえ脚も悪い、と言えばよい。
日曜日は、教会の戸口で馬車を見張る使い走りの小僧を雇いなさい。そうすれば、主人と奥さまが教会にいる間、あなたも仲間の御者たちも、居酒屋で楽しく過ごせる。
車輪がよい状態にあるように気をつけ、古いものを役得としてもらえるかどうかにかかわらず、できるだけたびたび、一揃い新しく買わせなさい。もらえれば正直な利益になるし、もらえなければ主人のけちへの正当な罰になる。おそらく馬車屋も、あなたにはそれなりの礼をするだろう。
第五章
馬丁心得。
旅という旅で主人の名誉を守ることは、まったくあなた一人にかかっている。その名誉を預かる唯一の蔵は、あなたの胸なのだ。主人が地方を旅して宿屋に泊まるなら、あなたが余分に飲むブランデーの一杯、エールの一杯ごとに、その評判は高まる。だから、主人の評判を大切にするべきだし、どちらの酒も遠慮なく飲んでほしい。鍛冶屋、馬具屋の職人、宿の料理人、馬丁、長靴脱がせの小僧、皆があなたのおかげで主人の気前よさにあずかるべきだ。そうすれば、主人の名声は一つの州から別の州へ届く。エール一ガロンやブランデー一パイントなど、旦那さまの懐には何ほどのものでもないではないか。主人が、評判より財布を大切にする人々の一人であっても、あなたはそれだけいっそう、評判のほうに気を配るべきだ。主人の馬には蹄鉄の付け直しが二度必要だった、あなたの馬には釘が要った、とすればよい。馬に割り当てられた燕麦と豆が、その旅に必要な量より多ければ、三分の一を削って、エールかブランデーに換えられる。こうすれば、あなたの分別によって、主人の出費を減らしつつ、その名誉も守れる。あるいは、ほかに奉公人を連れていない旅なら、酒場の給仕とあなたとの間で、勘定書きは簡単に調整できる。
だから、宿屋で馬を降りたら、すぐに馬を厩の小僧へ渡し、近くの池まで駆けさせておき、そのあとエールを一杯頼みなさい。キリスト教徒が獣より先に飲むのは、きわめてふさわしいことだからだ。主人の世話は宿の奉公人に、馬の世話は厩の者に任せなさい。そうすれば、主人も馬も、いちばん適した人々の手に委ねられる。だが、自分の世話は自分でするのだから、夕食を取り、たっぷり飲み、あなたよりよい世話を受けている主人を煩わせず、寝床へ入りなさい。宿の馬丁は正直な男で、心から馬が好きなので、何があっても口の利けない生き物をひどく扱ったりはしない。主人をいたわり、あまり早く起こさないよう、宿の奉公人に命じること。主人を待たせないよう、起きてくる前に朝食を済ませなさい。宿の馬丁には、道はとてもよく、一マイル一マイルも短く感じられると主人に言わせなさい。ただし、あなたは主人に、雨になりそうで心配だから、天気が晴れるまでもう少し待ち、昼食後に出ても十分間に合うと勧めなさい。
礼儀をわきまえ、主人を自分より先に馬に乗せなさい。主人が宿を出ていくとき、宿の馬丁がどれほどよく馬の世話をしたか、褒め言葉を一つ添え、あんなに礼儀正しい奉公人たちは見たことがないと付け加えること。主人を先へ進ませ、自分は宿の亭主に一杯振る舞ってもらうまで残りなさい。それから、主人があなたを必要とするかもしれないので、また馬術の腕を見せるため、町や村を全速力で駆け抜けて、追いかけること。
立派な馬丁なら皆そうあるべきだが、いくらか馬医の心得があるなら、サック酒か、ブランデーか、強いビールを手に入れ、毎晩、馬の踵をこすってやりなさい。けちけち使ってはいけない。多少は使ったとしても、残りをどう処分するかは分かっているだろうから。
主人の健康を考え、長旅をさせるくらいなら、馬が弱り、乗りすぎで痩せたと告げなさい。予定している行き先より五マイル手前に、とてもよい宿屋があると教えること。あるいは、朝、主人の馬の前脚の蹄鉄を片方、緩めたままにしておく、鞍が馬の肩口を締めつけるよう細工する、夜も朝も穀物を与えず、道中で疲れるようにする、蹄と蹄鉄の間へ薄い鉄板を差し込み、脚を引きずらせる。すべては、まったく主人をいたわる心からだ。
雇われようというとき、先方の紳士に、よく酔っ払うほうかと聞かれたら、うまいエールを一杯やるのは好きだと、率直に認めなさい。ただし、酔っていてもしらふでも、決して馬の世話は怠らないのが自分のやり方です、と言うこと。
主人が気晴らしか楽しみのために乗馬に出たがり、何か自分の用事があって、お供するのが都合の悪いときは、馬に瀉血か下剤が必要だ、主人の乗用馬が食べすぎで具合を悪くした、鞍の詰め物を直さなければならない、手綱は修繕に出している、と分かってもらいなさい。これは正直にやってよい。馬にも主人にも害がないばかりか、哀れな、口の利けない生き物を、どれほど大切にしているかも示せるからだ。
これから行く町に、馬丁や酒場の給仕や宿の者たちと、よく知り合っている宿屋があれば、ほかの宿の悪口を言って、主人にそこを勧めなさい。おそらくエールをもう一杯、ブランデーも一、二杯は余計に転がり込み、主人の名誉にもなるだろう。
主人から干し草を買いにやられたら、あなたにいちばん気前よくする相手と取引しなさい。奉公は世襲の財産ではないのだから、合法的で慣習にかなった役得は、一つも逃すべきではない。主人が自分で買うなら、それはあなたへの不当な仕打ちだ。そこで、主人に義務を教えるため、その干し草がある間は、必ず文句を言い続けなさい。それを食べて馬がよく育つなら、あなたの落ち度である。
熟練した馬丁の手にかかれば、干し草や燕麦は、上等のエールにもブランデーにもなる。ただし、これはほのめかすだけにしておこう。
主人が田舎の紳士の家で食事をしたり泊まったりするときは、馬丁がいなくても、外へ出ていても、馬がまるでほったらかしにされていても、主人が馬に乗る際、必ずそこの奉公人の誰かに馬を押さえさせなさい。ほんの数分立ち寄るために馬を降りただけのときにも、そうしてほしい。同じ奉公人どうし、いつでも助け合うべきだし、それはまた主人の名誉にもかかわるからだ。馬を押さえてくれた者には、主人もいくらか渡さずにはいられない。
長旅では、馬にエールを飲ませてよいか、主人に許可を求めなさい。たっぷり二クォートを厩へ運び、半パイントを鉢へ注ぐこと。馬が飲まなければ、あなたと宿の馬丁とで、できるだけうまく片づけるほかない。次の宿では、馬の機嫌もよくなっているかもしれない。この実験は、決して怠らないでほしいからだ。
馬を運動させに公園や野原へ行くときは、馬の世話をする小僧か、使い走りの一人に預けなさい。あなたより軽いので、競走をさせても馬を傷めることが少なく、生け垣や溝を跳び越えることも教えられる。その間、あなたは仲間の馬丁と、親しみ深く一杯やればよい。ただし、ときには馬と主人たちの名誉のために、あなたも仲間も、自分で競走をしてよい。
家では、干し草や燕麦を決して馬に出し惜しみせず、干し草棚はてっぺんまで、飼葉桶は縁までいっぱいにしなさい。自分が出し惜しみされれば、嫌だろうから。馬には食べる気がないかもしれないが、頼むための口が利けないのだと、考えてやること。干し草が下へ落ちても、損はない。寝藁の代わりになって、藁が節約できる。
主人が田舎の紳士の家で一泊し、出発しようとするときこそ、その名誉を考えなさい。心付けを期待している男女の奉公人が何人いるかを知らせ、家を出る際、二列に並んで待つよう、彼らに合図をすること。ただし、執事がほかの者の分をごまかすといけないから、金は執事に預けないよう、主人に頼みなさい。これで、主人はもっと気前よくせざるを得なくなる。そこで機会をとらえ、以前奉公していた何々旦那さまは、普通の奉公人には一人いくら、家政婦にはいくら、そのほかの者にはいくらと、いつもお渡しだったと話してよい。その額は、主人が渡そうと思っていたものの、少なくとも倍を挙げること。ただし、どれほどよい取り計らいをしてやったかは、必ず先方の奉公人たちに伝えなさい。あなたは好かれ、主人は名誉を得るだろう。
御者が自分のためにどんな理屈を持ち出そうと、あなたはあの男よりずっとたびたび酔っ払ってよい。危険にさらす首は、自分のものだけだからだ。馬はおそらく自分のことを十分気遣い、筋を違えるか、肩を外すくらいで済ませるだろう。
旅で主人の乗馬用の外套を運ぶときは、その中へ自分の外套を包み、革帯できつく締めなさい。ただし、主人のほうは裏返して、表側を水や泥から守ること。こうしておけば、雨が降り出したとき、主人の外套を真っ先に取り出して渡せる。あなたのものより傷んでも、主人のほうが負担に耐えられる。あなたのお仕着せには、必ず一年間の徒弟奉公を務めてもらわねばならないのだから。
激しく走って、馬が濡れて汚れ、ひどく身体が熱くなったまま宿に着いたら、宿の馬丁に、すぐ腹まで水へ漬けさせ、好きなだけ飲ませなさい。ただし、少なくとも一マイルは全速力で駆けさせ、皮膚を乾かし、腹の中の水を温めることを忘れないように。宿の馬丁は仕事を心得ている。あなたは台所の火のそばで、エールとブランデーをいくらか飲んで元気をつけ、その間すべて彼の判断に任せなさい。
馬の前脚の蹄鉄が落ちたら、気を利かせて馬から降り、拾いなさい。それから、旅人皆にあなたの心遣いが見えるよう、その蹄鉄を手に持って、街道の次の鍛冶屋まで、できるだけ速く走ること。すぐに打ち直させ、主人を待たせず、哀れな馬が蹄鉄のないままでいる時間を、できるだけ短くしなさい。
主人が紳士の家に泊まり、干し草と燕麦がよいものだと分かったら、その質の悪さを声高に非難しなさい。そうすれば、忠実な奉公人という評判が得られる。また、そこにいる間、馬には必ず、食べられるだけ燕麦を詰め込むこと。数日は宿屋で与える量をそれだけ減らし、燕麦をエールに換えられる。紳士の家を出るときには、あの方は何というけちん坊か、自分はバターミルクか水しか飲ませてもらえなかった、と主人に話しなさい。そうすれば主人も気の毒がり、次の宿でエールをもう一杯許してくれる。だが、紳士の家で酔っ払ってしまっても、主人は怒れない。自分の懐は痛まなかったからだ。そのことは、今の状態で言えるだけうまく伝え、友人の奉公人をもてなすのは、主人の名誉にも、その紳士の名誉にもなるのだと、分かってもらいなさい。
主人は、いつも自分の馬丁を大事にし、立派なお仕着せを着せ、銀の飾り紐を付けた帽子を与えるべきだ。あなたがその装いをしていれば、街道で主人が受ける敬意は、すべてあなた一人のおかげである。荷運び人に出会うたび道を追い出されずに済むのも、あなたのお仕着せに払われる敬意から、間接にもらった礼儀のおかげなのだ。
ときどき、主人の乗用馬を仲間の奉公人や、お気に入りの女の奉公人に、ちょっとした遠出のため貸してもよいし、一日、賃貸ししてもよい。運動不足では馬が駄目になるからだ。たまたま主人が馬を使いたがったり、厩を見たがったりしたら、鍵を持って出ていった手伝いの悪党め、と悪態をつけばよい。
居酒屋で仲間と一、二時間過ごしたくなり、留守にするもっともらしい言い訳が必要なら、古い手綱か腹帯か鐙革をポケットに入れて、厩の戸か裏口から出なさい。帰りは、同じ手綱か腹帯か鐙革を手からぶら下げ、今まで馬具屋で修理させてきたかのように、表の戸から帰ってくること。不在に気づかれなければ、それでよし。主人と出会えば、気配りの行き届いた奉公人という評判を得る。これが実際にうまくいった例を、私は知っている。
第六章
家令および領地管理人心得。
ピーターバラ卿の管理人。主人の家を取り壊し、材料を売り、修理代を主人に請求した男。小作人から、取り立てを猶予する金を取る。借地契約を更新して儲け、森を売る。主人の金を主人に貸す。この手のことはジル・ブラースが多く述べているので、そちらを参照されたい。
第七章
門番心得。
主人が国務大臣なら、主人の女の世話をする男、筆頭のおべっか使い、年金で雇われた文筆家の一人、雇いの密偵兼密告者、常用の印刷人、シティでの用件を扱う代理人、土地の投機屋、新たな財源を考え出す者、株の投機屋のほかは、誰に対しても留守にしておきなさい。
第八章
小間使い心得。
あなたの仕事の性質は、仕える奥さまの身分や高慢さ、財産によって違ってくる。しかも、この論考はあらゆる家に当てはめるためのものなので、あなたが雇われた仕事を、どれに絞るのがいちばんよいか、私は大いに困っている。そこそこの財産のある家では、あなたは女中とは違うので、そのつもりで教えを授けよう。あなたの特別の持ち場は奥さまの寝室で、寝床を整え、物を片づける。田舎暮らしなら、泊まりに来る婦人方の部屋の世話もするので、あなたの取り分になる心付けは、すべてそこから入ってくる。私の見るところ、普通、あなたの恋人は御者だが、二十歳前で、まずまずの器量なら、従僕が目を向けてくれるかもしれない。
奥さまの寝床を整えるときは、お気に入りの従僕に手伝ってもらいなさい。若い夫婦に仕えているなら、寝具をめくりながら、あなたと従僕は、この上なく面白いことをいろいろ発見するだろう。それをこっそり言い広めれば、家じゅうの大きな楽しみとなり、近所にも伝わる。
用便の器は、男たちに見えるよう下へ運ばず、奥さまの名誉のため、窓から中身を捨てなさい。上品な婦人にも、そのような道具が必要だと、男の奉公人が知るのは、きわめて不適切である。また、便器は磨かないこと。その匂いは健康によいからだ。
暖炉棚や飾り棚の上にある磁器に、ほうきの先を当てて割ってしまったら、破片を集め、できるだけつなぎ合わせて、ほかの品の後ろに置きなさい。そうすれば、奥さまが見つけたとき、ずっと前、自分が奉公に来る前から割れていたのだと、安心して言える。これで奥さまは、何時間ものいらだちを免れる。
同じやり方で、鏡を割ることもある。部屋を掃きながらよそを見ていると、ほうきの長い端が鏡に当たり、粉々に砕いてしまうのだ。これは不運の極みであり、隠すことができないため、どんな救済の望みもないように見える。かつて私が従僕として仕える栄誉に浴した、ある大きな家でも、この致命的な事故が起きた。その詳細を語り、あまりに突然で恐ろしい非常時に、哀れな小間使いが示した機転をお見せしよう。不運の星のせいで同じ事態に遭うことがあれば、あなたの工夫を研ぐ助けになるかもしれない。その哀れな娘は、ほうきの一撃で、たいそう高価な、大きな漆塗りの鏡を割ってしまった。だが、考え込んだ時間は長くなかった。驚くべき落ち着きを取り戻すと、戸に鍵をかけ、そっと中庭へ出て、重さ三ポンドの石を部屋に持ち込み、鏡の真下の炉床へ置いた。それから、同じ中庭に向いた上下窓のガラスを一枚割り、戸を閉めて、ほかの用事に取りかかった。二時間後、奥さまが部屋へ行き、鏡が割れ、その下に石があり、窓ガラスが一枚すっかり壊れているのを見た。この事情をすべて合わせて、小間使いの望みどおりに、近所をうろつく暇人か、おそらく外仕事の奉公人の一人が、悪意からか、偶然か、不注意かで、石を投げ込み、この損害を起こしたのだと結論した。ここまではすべてうまくいき、娘ももう危険はないと思った。ところが不幸なことに、数時間後、教区の牧師が訪ねてきて、奥さまは当然ながら、この事故のことを話した。奥さまがひどく気を乱していたことは、想像できるだろう。ところが、その牧師は、たまたま数学を心得ていた。中庭と窓と暖炉の位置を調べると、石を投げた手から鏡に届くまで、空中で三度向きを変えなければならないと、すぐに奥さまを納得させた。そして、同じ朝、小間使いが部屋を掃いたことが明らかになり、厳しく問い詰められた。だが娘は、自分の魂の救いにかけて、罪はないと一貫して否定し、まだ生まれぬ子供と同じく潔白だと、牧師様の前で聖書に手を置いて誓ってもよい、と申し出た。それでも、哀れな娘は解雇された。その機転を考えれば、ひどい扱いだったと私は思う。ともあれ、これは同じ目に遭ったとき、もっと筋の通る話を考えるための教えになるだろう。たとえば、モップかほうきで仕事をしていたら、突然、窓から稲妻が差し込み、ほとんど目がくらんだ、すぐに炉床でガラスの砕ける音がし、目が見えるようになると、鏡が粉々だった、と言えばよい。あるいは、鏡に少しほこりがあるのに気づき、ごくそっと拭こうとしたら、空気の湿りで膠か接着剤が溶けたらしく、床に落ちてしまった、と言ってもよい。また、壊したらすぐに、鏡を壁板につなぎ止めている紐を切り、床へ平らに落として、怯えた様子で駆け出し、奥さまに知らせ、内装屋に悪態をつき、もう少しで頭の上に落ちるところだったと訴えてもよい。こうした工夫を授けるのは、罪のない者を守りたいからである。わざと鏡を割ったのでなければ、あなたに罪がないのは確かだ。わざと割ることは、よほどひどい挑発を受けた場合のほか、私は決して弁護しない。
火ばさみ、火かき棒、灰かきには、持ち手の上端まで油を塗りなさい。錆を防ぐばかりでなく、余計なことをする人々が火をかき回して、主人の石炭を無駄にするのを防ぐためでもある。
急いでいるときは、ほこりを部屋の隅へ掃き寄せ、その上にほうきを置いて、見えないようにしなさい。見えれば、あなたの名折れになる。
奥さまの寝床を整えるまでは、決して手を洗わず、清潔な前掛けも着けないこと。前掛けにしわを寄せたり、手をまた汚したりしてはいけないからだ。
晩に奥さまの寝室の鎧戸へかんぬきをかけるときは、上下窓を開けておき、新鮮な空気を入れ、朝までに部屋の空気をきれいにしなさい。
風を通すため窓を開けている間は、窓辺の腰掛けに本などを置き、それにも風を当ててやりなさい。
奥さまの部屋を掃くとき、汚れた肌着、ハンカチ、頭巾、針山、茶匙、リボン、室内履き、その他行く手にあるものを拾うために、いちいち立ち止まってはいけない。全部まとめて隅へ掃き寄せてから、一度に拾えば、時間が省ける。
暑い日に寝床を整えるのは、とても骨の折れる仕事で、汗が出やすい。だから、額からしずくが流れてきたら、シーツの隅で拭き取り、寝床の上に汗が見えないようにしなさい。
奥さまに磁器の茶碗を洗うよう言いつけられ、うっかり落としてしまったら、持って上がり、ほんのちょっと手を触れただけで、三つの半分に割れたのだと誓いなさい。ここで、あなたにも、すべての仲間の奉公人にも、教えておかなければならない。言い訳には、決して困ってはいけないということだ。主人には何の害もなく、自分の落ち度は軽くなる。今の例でも、茶碗を割ったことを褒めているのではない。わざと割ったのでないことは確かだし、手の中で割れることも、あり得るのだから。
ときには、葬式、喧嘩、絞首刑に向かう男、結婚式、荷車に乗せてさらされる女衒などを、見たくなることもある。それが通りを過ぎるので、急いで上下窓を上げると、不運にも引っかかってしまう。あなたの落ち度ではない。若い女は生まれつき好奇心が強いのだ。紐を切り、大工のせいにするほか、手はない。ただし、誰にも見られなかったなら、あなたは家のほかの奉公人と同じく潔白である。
奥さまが肌着を脱いだら、自分で着なさい。あなたの見栄えはよくなり、自分の肌着は節約でき、その肌着も、ほんの少しも悪くならない。
奥さまの枕に清潔な枕カバーをかけるときは、夜の間に外れないよう、必ず太い留め針でしっかり留めなさい。
お茶用のパンにバターを塗るときは、夕食までパンの湿り気が保てるよう、パンの穴はすべて、必ずバターでいっぱいにしておきなさい。そして、清潔さを示すため、親指の跡は、一切れごとに片方の端だけに見えるようにすること。
戸や長持ちや飾り棚を開けたり閉めたりするよう命じられ、合う鍵が見つからないか、鍵束の中で見分けられないときは、差し込める最初の鍵を試し、錠が開くか鍵が折れるまで、力いっぱい回しなさい。何もせず戻れば、奥さまに馬鹿だと思われるからだ。
第九章
侍女心得。
二つの出来事が起こって、あなたの仕事の楽しみと利益を減らしてしまった。第一は、奥さま方の間に広まった、古い服を磁器と交換したり、安楽椅子の張り地にしたり、つぎはぎ細工にして衝立、腰掛け、クッションなどを覆ったりする、あの忌まわしい習慣である。第二は、鍵と錠の付いた小箱や長持ちが発明され、侍女が生きていくのに欠かせない茶と砂糖を、奥さま方がそこにしまうことである。このため、あなたは黒砂糖を買い、香りも味もすっかり抜けた茶葉に湯を注がなければならなくなる。どちらの害にも、完全な救済策は思いつかない。第一については、公益のため、あらゆる家の奉公人全員が同盟し、磁器の行商人を戸口から追い払うべきだと思う。第二については、合鍵で身を助けるほかないが、これを手に入れるのは難しく、危険でもある。だが、手に入れることが正直かどうかという点には、私は何の疑問も持たない。奥さまが、古くからの正当な役得を拒み、それほどもっともな憤りの種を与えているのだから。茶の店の女将が、ときどき半オンスくれるかもしれないが、それも大海の一滴にすぎない。だから恐らく、ほかの仲間たちと同じく、つけで買い、賃金の続く限りそこから払うほかないだろう。奥さまが美しいか、お嬢さまたちに十分な財産があれば、ほかの方法で簡単に取り戻せる。
大きな家で奥方付きの侍女をしているなら、あなたが奥方の半分ほども美しくなくても、旦那さまに気に入られることがある。この場合は、できるだけ多くを引き出すよう心がけなさい。どんなささいな自由も許さず、手を握るだけでも、そこへ一ギニー入れてもらわなければいけない。そうして、新しい試みのたびに相応の金を払わせ、譲歩する分に応じて、取り分を倍にしていきなさい。金を受け取っても、いつも抵抗し、大声を出すとか、奥方に話すとか脅すこと。力いっぱい拒んでいるように見せながらでも、胸を触らせるのに五ギニーなら、安い買い物だ。ただし、最後の恩恵だけは、百ギニーか、生涯年二十ポンドを受け取る取り決めがなければ、決して許してはいけない。
そのような家で、あなたに器量があれば、付き牧師、家令、旦那さま付きの従者という、三人の恋人から選べるだろう。まず家令を選ぶことを勧める。だが、もし旦那さまの子を身ごもって間もないなら、付き牧師で手を打たなければならない。三人のうち、旦那さま付きの従者は、私はいちばん気に入らない。お仕着せを脱ぎ捨てたときから、たいてい気取り屋で生意気になるうえ、軍旗を持つ職か、入港船の税関監視員の職を逃せば、追い剥ぎ以外に道がないからだ。
旦那さまの長男には、特に用心するよう言っておかねばならない。十分に手際がよければ、結婚へ引き込んで、奥方にしてもらえる見込みは大きい。ありふれた放蕩者なら――どちらかに違いないのだが――悪魔同然に避けなさい。旦那さまが奥方を恐れるほどには、母親を恐れていないからだ。一万もの約束のあとに手に入るのは、大きな腹か淋病だけで、おそらく両方一緒だろう。
奥さまが病気で、ひどい夜を過ごしたあと、朝になって少しうとうとしているとき、従僕が容体伺いの伝言を持ってきたら、その挨拶を無駄にせず、そっと揺すって起こしなさい。それから伝言を伝え、返事を受け取り、そのまま眠らせておくこと。
幸運にも、大きな財産のある若いお嬢さまに仕えているなら、その結婚の始末をつけて五、六百ポンドを得られないのは、あなたの取り回しが悪いからだ。たびたびお嬢さまに思い出させなさい。どんな男でも幸せにできるだけの財産があること、本当の幸せは恋にしかないこと、罪のない情熱を決して大目に見ない親の指図ではなく、どこでも好きに選ぶ自由があること、町には足元で喜んで死のうという、男前で、立派で、優しい若い紳士が大勢いること、恋人どうしの語らいは地上の天国であること、恋は死と同じく、あらゆる身分を等しくすること、生まれと財産で劣る若者に目を向けても、その人は結婚すれば紳士になること、昨日モールの並木道で、この上なくすてきな少尉を見たこと、自分に四万ポンドあれば、その人へ差し出すのに、ということを。自分がどのお嬢さまに仕え、どれほど気に入られ、いつも自分の助言が受け入れられるか、誰もが知るようにしておきなさい。セント・ジェームズ公園へしばしば行けば、すてきな男たちはすぐあなたを見つけ、袖や胸元へ手紙を滑り込ませようとするだろう。一緒に少なくとも二ギニーが入っていない限り、怒り狂って引きずり出し、地面へ投げ捨てること。入っていれば、気づかないふりをし、ただいたずらをされたと思っているようにしなさい。帰宅したら、お嬢さまの部屋へ、うっかり手紙を落とすこと。見つけて怒られたら、何も知らなかった、ただ、公園である紳士が口づけしようと揉み合ったのを覚えている、その人が袖かペティコートへ入れたのだと思う、実際、今まで見た中でも特別にすてきな方だった、手紙はお望みなら焼いてよい、と言い張りなさい。お嬢さまが賢ければ、あなたの前では別の紙を焼き、あなたが下へ去ってから手紙を読む。このやり方は、安全な限り何度でも続けること。ただし、手紙のたびにいちばん多く払う男を、いちばん男前にしておきなさい。従僕が、お嬢さま宛ての手紙をあなたに渡そうと、厚かましくも家へ持ってきたら、たとえいちばんの得意客からであっても、その頭に投げつけなさい。無礼な悪党、ならず者と罵り、鼻先で戸を閉めること。それからお嬢さまのもとへ駆け上がり、忠実さの証拠として、自分のしたことを話しなさい。
この話はいくらでも長くできるが、あとはあなた自身の分別に任せよう。
恋の戯れを少し好む奥さまに仕えているなら、どう取り回すかは、大いに賢さの要る問題となる。必要なのは三つだ。第一に、どうすれば奥さまを喜ばせられるか。第二に、どうすれば夫や家の者に疑われずにすむか。そして最後に、何よりも、自分の利益を最大にするにはどうすればよいか。この大事な仕事について、すべて教えを授けるには、分厚い一巻が必要になる。家の中での逢い引きは、どれも奥さまにもあなたにも危険なので、できる限り、よそで会うよう工夫しなさい。特に、百に一つを除けばまずそうだが、奥さまに恋人が二人以上いる場合には、なおさらだ。そういう男は、一人でも夫千人より嫉妬深いことが多く、どれほどうまく取り計らっても、ひどくまずい鉢合わせは、しばしば起こり得る。いちばん気前のよい男を主に取り持つよう、わざわざ忠告する必要はあるまい。ただし、奥さまがたまたま男前の従僕に目を向けたなら、その好みを許すだけの寛大さを持つこと。変わったことではなく、とても自然な欲求なのだから。それでもなお、家の中の情事では、これがいちばん安全だ。近年、より普通になるまでは、以前はいちばん疑われなかったものでもある。大きな危険は、この種の紳士たちが、しょっちゅう悪い品物を扱っているので、たまたま身体が健全でないかもしれないことだ。そうなると、奥さまもあなたも、まるで絶望的とはいえないにしても、ひどく困った立場になる。
だが本当のところ、奥さまの恋の取り回しについて、あなたに何か教えようというのは、大いなる思い上がりだと認める。あなたがたの仲間全員が、すでにそれほど熟達し、深く学んでいるのだから。もっとも、同じような場合に、わが同業の従僕たちが主人を手助けするより、ずっと難しくはある。だから、この仕事は、もっと腕のよい書き手に任せよう。
絹のドレスやレースの頭飾りを長持ちや箱にしまって鍵をかけるときは、少しはみ出させておきなさい。次に開けたとき、どこにあるか分かるようにするためだ。
第十章
女中心得。
主人と奥さまが一週間かそれ以上、田舎へ出かけたら、寝室と食堂の床は、帰宅の予定時刻のわずか一時間前まで、決して水拭きしてはいけない。そうすれば、部屋は完全に清潔な状態で迎えられ、それだけ早くまた洗う手間もかからずにすむ。
私をひどく不快にさせるのは、高慢で怠け者のあまり、庭へ出て薔薇を一輪摘む手間さえ嫌がり、ときには寝室そのものに、少なくとも隣の暗い小部屋に、忌まわしい道具を置いて、いちばん厄介な用を足す奥さま方である。その器を運び去るのは、普通あなたの役目なので、部屋だけでなく、奥さまの服まで、近寄る誰にとっても臭くなる。そこで、この忌まわしい習慣を直させるため、その道具を運び去る役目を負うあなたに、助言しよう。大階段を、従僕たちの目の前で、堂々と運び下ろしなさい。誰かが戸をたたけば、中身の入った器を手にしたまま、表の戸を開けること。何かが効くとすれば、これこそ、奥さまが家じゅうの男の奉公人に汚物をさらすより、しかるべき場所へ行って用を足す手間をかける気になるはずだ。
汚れた水とモップの入った桶、石炭箱、瓶、ほうき、便器、その他の見苦しいものは、奥まった通路か、裏階段のいちばん暗いところに置き、見えないようにしなさい。人がそれにつまずいて脛を傷めても、本人の落ち度である。
便器は、いっぱいになるまで、決して空けてはいけない。夜中にいっぱいになれば通りへ、朝なら庭へ捨てること。屋根裏や上の部屋から裏庭まで、十二度も降りていては、きりがない。だが、洗うときは、中身の尿以外の液体を決して使わないこと。清潔な娘が、よその人の尿を手でいじくり回すだろうか。そのうえ、先にも述べたように、古い尿の匂いは、憂鬱な気分によく効く。百に一つを除けば、奥さまもその病かもしれないのだから。
蜘蛛の巣は、濡れて汚れたほうきで払い落としなさい。そのほうが、ほうきへしっかりくっつき、よく落とせる。
朝、居間の炉床を片づけるときは、昨晩の灰をふるいへ放り込みなさい。運び下ろす途中でこぼれ落ちる分は、部屋や階段にまく砂の代わりになる。
居間の暖炉の真鍮や鉄の道具を磨いたら、汚れた濡れ布は、いちばん近くの椅子へ置き、仕事を怠らなかったと奥さまに分かってもらいなさい。真鍮の錠前を磨いたときも、同じ決まりを守ること。ただし、こちらはもう一つ、忘れずにやったと示すため、戸に指の跡を残しておきなさい。
奥さまの便器は、一日中、寝室の窓に置き、風に当てておきなさい。
食堂と奥さまの部屋へは、大きな石炭だけを運びなさい。いちばんよい火ができるし、大きすぎたら、大理石の炉床で簡単に割れる。
寝るときは、必ず火の用心をしなさい。だから、ろうそくは息で吹き消し、そのあと寝床の下へ押し込むこと。なお、焦げた芯の匂いは、憂鬱な気分にたいそうよく効く。
自分を身ごもらせた従僕には、妊娠六か月になる前に結婚するよう説得しなさい。奥さまに、一グロートの値打ちもない男をなぜ選ぶのかと聞かれたら、奉公は世襲の財産ではありませんから、と答えること。
奥さまの寝床を整えたら、その下へ便器を置きなさい。ただし、寝台の垂れ布も一緒に押し込み、便器がすっかり見え、奥さまが使いたくなったら、すぐ用意ができているようにすること。
猫か犬をどこかの部屋か小部屋へ閉じ込め、家じゅうに響く騒ぎをさせなさい。押し入ったり、忍び込んだりしようとする盗人がいれば、怖がって逃げるようにするためだ。
晩、通りに面した部屋を水拭きしたら、汚れた水は表の戸から放り出しなさい。ただし、決して前を見ないこと。水をかけられた人に、あなたが無作法で、わざとしたと思われてはいけないからだ。被害者が仕返しに窓を割り、奥さまが叱って、桶を下へ運び、流しへ空けろと厳命なさったら、簡単な手がある。上の部屋を洗ったとき、桶を運び下ろしながら、台所までの階段にずっと水が垂れるようにするのだ。そうすれば、荷が軽くなるばかりか、窓からか、表の戸口の段へ水を捨てるほうがよいと、奥さまに納得してもらえる。そのうえ、凍える晩には、後のやり方は、あなたも一家もたいそう楽しめる。水が凍ると、戸口の前で百人もの人が、鼻から倒れたり、尻餅をついたりするのを見られるからだ。
大理石の炉床や暖炉飾りは、脂に浸した布で磨いて光らせなさい。これほどよく光るものはない。ペティコートに気をつけるのは、奥さま方の仕事である。
奥さまが気難しくて、部屋を磨き石で磨かせたがるなら、必ず壁板の下の周りに、六インチ幅の磨き石の跡を残し、命令に従ったことが分かるようにしなさい。
第十一章
乳搾り女心得。
バター作りの骨折り。夏でも、攪乳桶へ煮え湯を入れ、台所の火のすぐそばで、一週間たったクリームを攪拌すること。恋人のためにクリームを取っておく。
第十二章
子守心得。
子供が病気なら、医者から特に禁じられていても、食べたいもの、飲みたいものは何でも与えなさい。病気のときに欲しくなるものは、身体によいのだから。そして薬は窓から捨てること。子供はあなたをもっと好きになる。ただし、言いつけないように言っておきなさい。奥さまが病気で何かを欲しがるときも、同じようにし、きっとお身体によいと請け合うこと。
奥さまが子供部屋へ来て、子供を鞭で打とうとしたら、怒ってその手から子供を奪い、今まで見た中でいちばん残酷な母親だと言いなさい。奥さまは叱るだろうが、あなたをもっと好きになる。子供たちが泣こうとしたら、幽霊の話をしてやること、など。
子供たちは必ず乳離れさせること、など。
第十三章
乳母心得。
うっかり子供を落として、脚を不自由にしてしまっても、決して白状しないこと。その子が死ねば、すべて安心だ。
乳を飲ませている間に、できるだけ早く妊娠するよう工夫しなさい。乳をやっている子が死ぬか、乳離れしたら、次の奉公に備えられるようにするためだ。
第十四章
洗濯女心得。
アイロンで亜麻布を焦がしたら、その場所に小麦粉か、白墨か、白い粉をこすりつけなさい。何をしても駄目なら、焦げが見えなくなるか、ぼろぼろに破れるまで、長く洗うこと。
洗濯で亜麻布を破くことについて。
干し綱か生け垣に亜麻布を留めておいて、雨が降ったら、破れてもかまわず、さっと引き取ること、など。だが、掛けるべき場所は若い果樹、特に花盛りの木である。亜麻布は破れず、木がよい香りを付けてくれる。
第十五章
家政婦心得。
いつも、頼りにできるお気に入りの従僕を一人持ち、第二の膳を下げるときには、十分気をつけて、無事にあなたの部屋へ持ってこさせなさい。あなたと家令が、一緒にうまいものをつまめるようにするためだ。
第十六章
家庭女教師、または教育係心得。
子供たちは目を痛めている、ベティお嬢さまは勉強に身を入れようとしない、と言うこと、など。
お嬢さまたちには、フランスとイングランドの小説や、フランスの恋愛物語、チャールズ二世とウィリアム王の治世に書かれたすべての喜劇を読ませ、気性を柔らかくし、情け深くしてやること、など。
編者注
これは正しい英語ではない。動詞findのあとでは、growという語の前にtoを置くべきではない。「If you find yourself growing into favour(気に入られるようになっていると気づいたら)」などとするほうがよい。