文学 / ヴィクトル・ユゴー王は楽しむLe Roi s’amuse

夕暮れの宮廷で玉座を見つめる道化師を描いた、『王は楽しむ』の独自装画

文学 / ヴィクトル・ユゴー

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原著・底本

原題
Le Roi s’amuse
著者
ヴィクトル・ユゴー
出典・参照
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収録範囲
序文、登場人物、全五幕二十四場、原注三件。フランス語原文からの日本語訳。

日本語訳

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表紙

装画
日本人文
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本書のために制作した独自装画。原刊の装丁とは異なります。

追加日: 2026-10-15 / 更新日: 2026-10-15

序文、登場人物、全五幕二十四場、原注三件。フランス語原文からの日本語訳。

刊行年

一八三二年

序文

この戯曲が舞台に登場したことから、前代未聞の大臣命令が発せられた。

初演の翌日、作者はテアトル=フランセの舞台監督ジュスラン・ド・ラ・サル氏から、次の書状を受け取った。その原本は大切に保管している。

「ただいま十時半です。たったいま、『王は楽しむ』の上演を中止せよとの命令[1]を受け取りました。

「テイラー氏が、大臣からのこの命令を私に伝えてきたのです。

「十一月二十三日」

作者は、まず耳を疑った。その措置は、あまりに専横で、信じがたいほどだった。

実際、いわゆる「真実の憲章」には、「フランス人は公表する権利を持つ」とある。条文が単に印刷する権利と言わず、広く大きく、公表する権利と言っていることに注意してほしい。演劇も、新聞や銅版画や石版画と同じく、公表の一手段にすぎない。したがって演劇の自由も、思想に関するほかのあらゆる自由とともに、憲章に含まれているのである。この国の基本法は、さらに「検閲は、いかなる場合にも再び設けることができない」と付け加える。条文は新聞の検閲とも、書籍の検閲とも言っていない。検閲と言っているのだ。検閲一般、あらゆる検閲、文書の検閲と同じく演劇の検閲をも指す。ゆえに、今後演劇を合法的に検閲することはできない。

憲章の別の箇所には、「没収は廃止する」とある。ところが、上演された後の戯曲を禁止するのは、検閲と専横の怪物じみた行為であるばかりか、まさしく没収であり、劇場と作者から力ずくで財産を奪うことにほかならない。

最後に、何もかもを明白にするため、フランス革命が青銅に鋳込んだ四つか五つの社会の大原則を、花崗岩の台座の上に傷つけず保つため、また、法の武器庫で錆と時代遅れに食い荒らされている四万本もの刃こぼれした古い武器を使って、フランス人に共通の権利をこっそり攻撃できないようにするため、憲章はその最終条項で、従来の法律のうち、その条文と精神に反するすべてを明文で廃止している。

これは明確である。大臣が戯曲を禁止することは、検閲によって自由を、没収によって財産を侵害する行為だ。わが国の公法の全体が、こうした不法な実力行使に抗議する。

これほどの傲慢と狂気を信じられず、作者は劇場へ駆けつけた。そこで誰に聞いても、事実だと確かめられた。大臣は実際に、個人の権威で、大臣の神授の権利によって、問題の命令を下していた。大臣は理由を説明する必要もなかった。大臣は作者の戯曲を奪い、その権利を奪い、その所有物を奪った。あとは詩人である彼自身を、バスティーユへ投げ込めば済むことだった。

繰り返すが、私たちの生きるこの時代に、こうした行為が道をふさぎ、不意に襟首をつかんできたとき、最初に覚えるのは深い驚きである。頭の中に無数の問いが押し寄せる。――法律はどこにある。権利はどこにある。こんなことがまかり通るのか。そもそも、七月革命と呼ばれた出来事は本当にあったのか。ここがもはやパリでないのは明らかだ。私たちは、どこの太守の領国に暮らしているのだろう。――

驚きあきれ、うちひしがれたコメディ=フランセーズは、この奇怪な決定を撤回してもらおうと、なおも大臣に働きかけた。しかし骨折り損だった。その日のうちにディヴァン、いや、閣議が開かれていたのである。二十三日には一大臣の命令にすぎなかったものが、二十四日には内閣の命令になった。二十三日には上演停止にすぎなかったものが、二十四日には全面的な上演禁止になった。劇場は、掲示からあの恐るべき四語、Le Roi s’amuseを消せとまで命じられた。さらに、この気の毒なテアトル=フランセは、訴えもせず、一言も漏らすなと命じられた。こうしたアジア的な専制に抵抗することは、美しく、誠実で、気高い行為だろう。しかし劇場にはその勇気がない。特許を取り消される恐怖が、彼らを農奴や臣下にし、意のままに課税され労役に駆られる者、宦官や唖者にしてしまう。

作者は、劇場のこうした陳情には関わらなかったし、関わるべきでもなかった。詩人である彼は、どの大臣にも従属しない。目先の利益だけを考えれば勧められたかもしれない嘆願や懇願も、自由な作家の義務は彼に禁じていた。権力に慈悲を求めることは、その権力を認めることだ。自由や財産は、権門の控えの間で取り扱うものではない。権利を恩恵のように扱ってはならない。恩恵を求めるなら大臣に訴えよ。権利を求めるなら国民に訴えよ。

それゆえ、作者は国民に訴える。正義を得る道は二つある。世論と裁判所だ。彼はその両方を選ぶ。

世論の法廷では、裁きはすでに下り、勝訴している。ここで作者は、この一件に際して数々の共感と友情を示してくれた、文学・芸術の世界の、見識ある独立したすべての人々に、心から感謝しなければならない。その支援は初めから当てにしていた。知性と思想の自由のために闘うとき、自分だけで戦場に向かうのではないと、彼は知っている。

ついでに述べておこう。権力は、かなり卑劣な計算から、この機会に、長年作者の周囲で燃え続けてきた文学上の敵意を、反対派の陣営からさえ味方に引き入れられると期待していた。文学上の憎悪は自尊心に根ざすが、政治上の憎悪は利害に根ざすだけだから、前者のほうがいっそう執念深いと考えたのである。権力は間違っていた。その乱暴な行為は、あらゆる陣営の誠実な人々を憤らせた。昨日まで最も激しく作者を攻撃していた人々さえ、専横と不正に立ち向かうため、彼のもとに集まった。たまたま根深い敵意を捨てなかった者がいても、権力へ一時的な助力を与えたことを、今では後悔している。作者の敵のうち、名誉と誠実さを持つ者はみな、手を差し伸べに来た。政治の闘いが終われば、また文学の闘いを始めればよいのだ。フランスでは、迫害される者にとって、もはや敵は迫害者だけである。

さて、この大臣の行為が憎むべく、名状しがたく、法的には許されないと明らかにしたうえで、しばし、その措置を一つの事実として検討し、どのような要素でできているのか探ってみよう。まず浮かぶ問いは、誰もが一度は自らに問うた、次の問いである。――いったい、何がこのような措置の動機なのか。

事実なのだから、はっきり言わねばならない。後世がいつかわが国の小人物や些事を取り上げるなら、この奇妙な事件の中でも、これはひときわ奇妙な細部になるだろう。検閲を仕組む方々は、『王は楽しむ』によって道徳心を傷つけられたと称しているらしい。この芝居は憲兵たちの羞恥心を逆なでした。レオトー隊は観劇して、猥褻だと判断した。風紀係は顔を覆い、ヴィドック氏は赤面した。要するに、検閲が警察に与え、ここ数日私たちの周囲で口ごもりながら繰り返されている合言葉は、率直に言えば、こういうことだ。この芝居は不道徳だ。――おい、諸君。その話については黙ってもらおう。

それでも説明しておこう。ただし警察にではない。私は一人の誠実な人間として、警察がこうした事柄を論じることを禁じる。相手にするのは、ごく少数の、尊敬すべき良心的な人々である。風聞を聞いたり、上演を十分に見定められなかったりして、その意見に引きずられた人々だ。非難された詩人の名だけでも、その意見への十分な反証になったはずなのだが。いま、この戯曲は刊行された。観劇していない人は読んでほしい。観劇した人も、あらためて読んでほしい。あの上演は、芝居というより戦いだったことを思い出してほしい。いささか大げさな比較を許してもらえば、一種のモンレリの戦いだった。そこではパリ側もブルゴーニュ側も、それぞれ、マチューの言葉を借りれば、勝利を懐に収めたと主張したのである。

この芝居は不道徳なのか。本当にそう思うのか。題材が不道徳なのか。では、その題材を述べよう。トリブレは身体に変形があり、病み、宮廷道化である。この三重の不幸が彼を悪意ある人間にしている。彼は王を、王であるという理由で憎み、貴族を、貴族であるという理由で憎み、人々を、誰もが背中に瘤を持っているわけではないという理由で憎む。唯一の慰みは、貴族たちを絶えず王にぶつけ、弱い者を強い者によって打ち砕くことだ。彼は王を堕落させ、腐敗させ、愚鈍にする。暴政と無知と悪徳へ追いやる。誘惑すべき妻、さらうべき妹、辱めるべき娘を絶えず指さしながら、貴族のあらゆる家の中へ王を放つ。トリブレの手の中にある王は、ただ全能の操り人形にすぎず、道化に操られて動き回る先で、あらゆる人生を打ち壊す。ある日、宴のさなか、まさにトリブレがコセ氏の妻をさらうよう王をそそのかしているとき、サン=ヴァリエ氏が王の前まで進み出て、ディアーヌ・ド・ポワチエを辱めた罪を声高に責める。娘を王に奪われたこの父を、トリブレは嘲り、侮辱する。父は腕を上げてトリブレを呪う。芝居のすべては、ここから生じる。この戯曲の本当の主題は、サン=ヴァリエ氏の呪いなのだ。聞いてほしい。第二幕である。この呪いは誰に降りかかったのか。王の道化トリブレにか。そうではない。一人の人間、一人の父、心を持ち、娘を持つトリブレに降りかかったのだ。トリブレには娘がいる。すべてはそこにある。この世で彼には娘しかいない。人目から遠ざけ、寂しい街区の、ひっそりした家に隠している。放蕩と悪徳の伝染を街じゅうに広げるほど、いっそう娘を孤立させ、壁の内に閉じ込める。わが子を、無垢と信仰と慎みの中で育てている。何より恐れているのは、娘が悪に陥ることだ。自分は悪人だからこそ、そこでどれほど苦しむかを知っている。ところが、老人の呪いは、トリブレがこの世でただ一つ愛するもの、娘を襲うのだ。彼が誘拐へと駆り立てる、その王が、トリブレの娘をさらう。摂理は道化を、サン=ヴァリエ氏とまったく同じ仕方で打つ。さらに、娘が誘惑され、身を破滅させたのち、彼は娘の仇を討つため王に罠を仕掛ける。そこへ落ちるのも娘なのだ。こうしてトリブレには二人の教え子がいる。王と娘だ。王を悪へと仕込み、娘を徳のために育てる。一方が他方を破滅させる。王のためにコセ夫人をさらおうとすれば、自分の娘をさらってしまう。娘の仇を討つため王を殺そうとすれば、自分の娘を殺してしまう。懲罰は途中で止まらない。ディアーヌの父の呪いは、ブランシュの父の上に成就する。

これが劇的な着想かどうかを決めるのは、むろん私たちではない。しかし、道徳的な着想であることは確かだ。

作者の別の一作品の根底には宿命がある。この作品の根底には摂理がある。

明言して繰り返すが、ここで議論している相手は警察ではない。警察にそれほどの名誉を与えはしない。この議論を必要と感じるかもしれない観客の一部が相手なのである。先へ進もう。

着想において道徳的な作品が、表現において不道徳になりうるのか。このように問えば、問いそのものが消えてしまうように思われるが、ともかく検討しよう。第一幕と第二幕には、おそらく何も不道徳なところはない。第三幕の状況が気に障るのか。それなら第三幕を読み、そこから受ける印象が、深く清らかで、善良で、誠実なものではないかどうか、良心に照らして答えてほしい。

第四幕なのか。しかし、王が舞台で宿の女中を口説いてはいけなくなったのは、いつからだろう。それは歴史にも演劇にも、何ら目新しいことではない。それどころか、歴史に従えば、ペリカン通りのいかがわしい酒場で酔うフランソワ一世をお見せすることさえできた。王をそういう場所へ連れていくのも、決して新しくはない。古典劇たるギリシア演劇はそれをした。ロマン派の演劇たるシェイクスピアもそれをした。ところが、この戯曲の作者はしていない。サルタバディルの家について書かれたことは、すべて承知している。しかし、なぜ作者が言っていないことを言わせるのか。この種の問題では決定的な意味を持つ一線を、作者は越えていないのに、なぜ無理やり越えさせるのか。あれほど中傷されたジプシーの娘マグロンヌも、昔の芝居のリゼットやマルトンたちより厚かましいわけでは、決してない。サルタバディルの小屋は宿屋であり、酒場であり、「松かさ亭」のような居酒屋であり、怪しげな旅籠であり、人殺しの巣であってもよい。しかし、売春宿ではない。不吉で、恐ろしく、おぞましく、ぞっとする場所と呼ぶのはかまわないが、猥褻な場所ではない。

すると残るのは、文体の細部だ。読んでほしい[2]。作者は、自分の文体の厳しく慎ましい性格を裁く者として、ジュリエットの乳母やオフィーリアの父、ボーマルシェやルニャール、『女房学校』や『アンフィトリヨン』、ダンダンやスガナレル、さらには『タルチュフ』のあの大場面に眉をひそめる人々をも受け入れる。その『タルチュフ』も、当時は不道徳だと非難された作品なのだ。ただ、率直であるべき箇所では、自分の責任と危険において、率直でなければならないと考えた。しかし、つねに真剣さと節度を守っている。作者が求めるのは、清らかな芸術であり、貞淑ぶった芸術ではない。

ところが、内閣がこれほど多くの偏見を煽り立てようとしているのは、この芝居なのである。問題の不道徳、問題の猥褻とは、こういうものだったのだ。なんという情けなさか。権力には、できるだけ多くの先入観を『王は楽しむ』へけしかける、隠れた理由があった。それはあとで示そう。権力は、観客が芝居を聞きもせず、架空の罪のために窒息させることを望んでいた。オセロがデズデモーナを絞め殺すように。正直者のイアーゴよ!

だが、オセロがデズデモーナを絞め殺さなかったものだから、イアーゴ自身が仮面を脱ぎ、その役を引き受けた。上演の翌日、芝居は命令によって禁止されたのである。

確かに、もう少しだけ身を低めて、あの馬鹿げた作り話を一分間だけ受け入れてみよう。今回、ご主人様方を動かしたのは公衆道徳への配慮で、この二年間にいくつかの劇場が陥った放縦に憤り、ついに我慢も限界に達し、法律も権利も踏みにじって一つの作品と一人の作家を見せしめにしたかった、という話だ。その場合、作品の選び方が奇妙であることは認めねばならないが、作家の選び方もそれに劣らず奇妙である。この近視眼の権力が、こんな奇妙な仕方で襲いかかる相手は、いったいどんな人間なのか。才能なら誰もが疑ってよいが、品性は誰も疑わない立場にある作家だ。誠実な人間であると認められ、証明され、確かめられた男なのである。今の時代には珍しく、尊ぶべきことだ。

彼は、その同じ劇場の放縦に、誰より先に反発し、憤るはずの詩人である。十八か月前、劇場への異端審問が違法に復活するという噂を聞いたときには、ほかの数人の劇作家とともに、自ら大臣のもとへ赴き、そのような措置に手を染めないよう警告した。その席で、検閲に対して、大臣もきっと忘れていない厳しい言葉で抗議する一方、演劇の行きすぎを処罰する法律を、公然と要求したのである。彼は芸術に身を捧げる芸術家であり、卑しい手段で成功を求めたことは一度もなく、生涯、観客を正面からまっすぐ見つめることを習いとしてきた。誠実で節度ある人間であり、あらゆる自由のために、あらゆる専横に抗して、すでに幾度も闘ってきた。一八二九年、王政復古の最後の年には、『マリオン・ド・ロルム』の上演禁止を埋め合わせようと当時の政府が差し出したものを、すべて拒んだ。その一年後の一八三〇年、七月革命が成し遂げられると、同じ『マリオン・ド・ロルム』が、それを禁止した失脚した王への攻撃と侮辱の機会となりうる間は、物質的な利益がどれほど勧めようとも、上演を認めなかった。むろん、ごく当然の行いであり、その立場に置かれた名誉ある人間なら誰でもそうしただろう。しかし、それによって以後いかなる検閲にも侵されない者となってしかるべきだったかもしれない。この行いに関連して、彼は一八三一年八月に、こう書いている。

「告白すれば、わざと醜聞を起こしたり、政治上の当てこすりを使ったりして得る成功には、ほとんど心が動かない。そうした成功は価値も乏しく、長続きもしない。それに、検閲がなくなったときこそ、作者たちは誠実に、良心的に、厳しく、自らを検閲しなければならない。そうしてこそ、芸術の尊厳を高く保てる。自由が余すところなく与えられているなら、節度も余すところなく守るのがふさわしい[3]。」

さあ、判断してほしい。一方にはこの人間とその作品があり、他方には内閣とその行為がある。

この戯曲のいわゆる不道徳性が跡形もなく消え、浅ましく恥ずべき口実の足場がすっかり私たちの足元へ崩れ落ちた今こそ、この措置の本当の動機を指し示すべき時だろう。控えの間の動機、宮廷の動機、秘密の動機、口には出さない動機、自分にさえ打ち明ける勇気のない動機、口実の下へあれほど巧みに隠していた動機である。その動機はすでに世間へ漏れ出し、世間は正しく察した。それ以上は言うまい。敵対者たちに礼節と節度の手本を示すのが私たちであることは、この主張にとって有益かもしれない。尊厳と分別の教えを、一私人が政府へ、迫害される者が迫害する者へ与えるのはよいことだ。それに私たちは、他人の傷口に毒を塗れば自分の傷が治ると考える者ではない。残念ながら、第三幕のある一行に、宮廷の取り巻き数人の不器用な鋭敏さが、当てこすりを見いだしたのは事実だ。私が当てこすりをしたというのか! それまで観客も作者も思いもしなかったものだが、そう告げ口されてしまうと、それは最も残酷で血なまぐさい侮辱になる。そして、その一行だけで、うろたえたテアトル=フランセの掲示は、あのささやかな不穏の文句、『王は楽しむ』を、二度と観客の目に触れさせぬよう命じられたのも事実なのである。その焼け火箸のような一行を、ここで引用しはしない。ほかの場でも、最後の最後まで追い詰められ、相手が無分別にもこちらの弁護をそこへ追い込んだ場合にしか、指し示さない。古い歴史上の醜聞を蒸し返しはしない。ある高位の人に対しても、廷臣のこの軽率さがもたらす結果を、できるかぎり及ぼさないようにしよう。王に対してさえ、寛大な戦いはできる。私たちはそうするつもりだ。ただ、権勢を持つ方々は、顔に止まった目にも見えぬ当てこすりを、検閲という敷石でしか叩き潰せない熊を友とすることの不都合を、よく考えるがよい。

この闘いの中で、内閣そのものにさえ、多少の寛容さを持ってしまうかどうか、私たちにもわからない。正直なところ、この一件は大きな憐れみを催させる。七月政府は生まれたばかりだ。まだ三十三か月、揺りかごの中にいて、子供らしい小さな癇癪を起こしている。こんな相手に、男一人前の怒りをたっぷり使う値打ちが、本当にあるだろうか。大きくなったら考えよう。

しかし、しばし問題を私人としての立場からだけ眺めるなら、今回の検閲による没収は、ほかの誰にも増して、この戯曲の作者に損害を与えているかもしれない。筆を執って十四年になるが、彼の作品は一つとして、世に出るときに戦場に選ばれるという不幸な名誉を受けずに済んだものはなく、多少の長短はあれ、まず埃と煙と騒音の下へ姿を消さなかったものはない。だから彼が劇場に戯曲を出すとき、初日の夜から穏やかな観客を望めない以上、何より大切なのは、その後も上演を重ねることだ。初日には声が騒ぎにかき消され、思想が理解されなくても、その後の日々が初日の誤りを正せる。『エルナニ』は五十三回上演された。『マリオン・ド・ロルム』は六十一回上演された。『王は楽しむ』は、大臣の暴力のおかげで、たった一回の上演で終わることになる。作者の被った不利益が大きいことは確かだ。彼にとってこれほど大切な三度目の試みを、誰が傷つけず、元の段階へ返してくれるのか。あの初演の後に何が起きたはずなのか、誰が教えてくれるのか。翌日の観客を誰が返してくれるのか。普通なら公平で、味方でも敵でもなく、詩人を教え、詩人に教えられる、あの観客を。

私たちのいる政治の過渡期は、奇妙な時期だ。解放と自由の思想が最も深く浸透した社会でさえ、あらゆる専制的な行為が可能になる、全般的な疲労のひとときなのである。フランスは一八三〇年七月に速く歩いた。見事な三日間を成し遂げ、文明と進歩の野を三つの大きな行程で進んだ。今、多くの人が息を切らし、多くの人が休止を求めている。疲れを知らず進み続ける寛大な精神の持ち主を引き止めようとする。後ろに取り残された遅い者を待ち、追いつく時間を与えようとする。そこから、進むもの、動くもの、語るもの、考えるものすべてへの、奇妙な恐れが生まれる。理解しやすく、定義しにくい、異様な状況だ。あらゆる暮らしが、あらゆる思想を恐れている。理論の動きに傷つけられた利害の同盟だ。思想体系に怯える商業であり、売りたい商人であり、通りが店の勘定台を脅かすことであり、武装して身を守る店なのだ。

私たちの考えでは、政府は、この休息を求める気分と、新しい革命への恐れにつけ込んでいる。小さな暴政を振るうまでになった。政府自身のためにも、私たちのためにも、これは誤りだ。今、人々が自由の思想に無関心になっていると思うなら、間違っている。あるのは疲労だけだ。近ごろ積み重なるのを目にしているすべての違法行為について、いつか政府は厳しく責任を問われるだろう。なんという道を私たちに歩ませたことか。二年前には秩序が心配されたのに、今では自由を思って震えねばならない。思想の自由、知性、芸術に関する問題を、バリケードの王に仕える宰相たちが、皇帝のように裁断している。

上半身は美しい女であった七月革命が、いったいどんな結末を迎えるのか。それを見るのは、このうえなく悲しい。

確かに、ここで問題にしている作品と作者の取るに足りなさだけを考えれば、それらを打つ大臣の措置も、大したものではない。卑小で悪質な文学上のクーデターにすぎず、それに先立つ専横の行為の収集物から、さほど浮いて見えないことだけが取り柄だ。しかし、もっと高いところから見れば、この事件で問題となるのが一編の戯曲と一人の詩人だけではないことがわかる。初めに述べたように、自由と財産の双方が、その全体をかけて争われているのである。それは高く重大な利益だ。国務院の門前払いの盾に守られた内閣を直接訴えることができないため、作者は、この重大な事件を、テアトル=フランセに対する単なる商事訴訟から始めざるをえない。それでも、右手に自由を、左手に財産を従えて商事裁判所の法廷に立つ日、自分の訴えが、誰の目にも大義として映ることを望んでいる。必要なら、自分の芸術の独立のため、自ら弁論する。人への憎しみを持たず、恐れも持たず、真剣かつ率直に、揺るがず権利を主張する。すべての人の協力、新聞の率直で温かい支援、世論の正義、裁判所の公平さを頼りにしている。成功を疑ってはいない。政治の都市と同じく、文学の都市でも戒厳令は解除されるだろう。

それが成し遂げられ、詩人として、市民としての自由を、傷つかず、侵されず、神聖なまま家へ持ち帰ったら、作者は穏やかに生涯の仕事へ戻る。暴力によって引き離され、一瞬たりとも離れたくなかった仕事である。自分には果たすべき仕事があると知っている。何ものも、それから気をそらさせはしない。今は政治上の役割がめぐってきた。自ら求めたのではないが、引き受ける。実際、私たちを攻撃する権力も、大した得はしないだろう。芸術に携わる私たちが、良心的で、静かで、誠実で、深い仕事、神聖な仕事、過去と未来の仕事を離れ、憤り、侮辱を受け、厳しい顔をして、あの不敬で嘲り好きな観客席へ加わることになったとしても。その観客席は、十五年来、何人かの哀れな政治の下手な左官職人が通り過ぎるのを、野次と口笛で眺めている。彼らは毎日、汗を流し息を切らし、苦労して、チュイルリーからブルボン宮へ、ブルボン宮からリュクサンブールへと、法案の山を手押し車で運んでいる。それだけで、社会という建物を築いているつもりなのだ!

一八三二年十一月三十日

登場人物

フランソワ一世
トリブレ
ブランシュ
サン=ヴァリエ氏
サルタバディル
マグロンヌ
クレマン・マロ
ピエンヌ氏
ゴルド氏
パルダイヤン氏
ブリオン氏
モンシュニュ氏
モンモランシー氏
コセ氏
ラ・トゥール=ランドリ氏
コセ夫人
ベラルド夫人

王妃に仕える貴族
王の従僕
医師
貴族たち、小姓たち
庶民の男女

パリ、一五二〇年代。

第一幕 サン=ヴァリエ氏

ルーヴルの夜の宴。豪華な広間は着飾った男女で満ちている。松明、音楽、踊り、笑い声。召使いたちが金の皿や七宝の食器を運び、貴族や貴婦人の一団が舞台を行き交う。宴は終わりに近づき、夜明けがステンドグラスを白ませている。どこか気の緩んだ空気が漂い、宴は多少、酒池肉林の様相を呈している。建築、調度、衣装はいずれもルネサンスの趣味。

第一場

王――ティツィアーノの絵に描かれた姿――、ラ・トゥール=ランドリ氏。

王
伯爵、この恋は最後までやり遂げたい。
町人の娘で、生まれも卑しいのだろうが、実に愛らしい!

ラ・トゥール=ランドリ
日曜ごとに教会でお会いになるのですか。

王
サン=ジェルマン=デ=プレだ。毎週日曜に通っている。

ラ・トゥール=ランドリ
それがもう二月近くも続いていると?

王
そうだ。

ラ・トゥール=ランドリ
その美女のお住まいは?

王
ビュシーの袋小路だ。

ラ・トゥール=ランドリ
コセ邸のお近くですか。

王(うなずいて)
高い塀のあるあたりだ。

ラ・トゥール=ランドリ
ああ、わかりました。それで陛下、後をおつけになる?

王
目も口も耳も見張っている、恐ろしい婆さんが、
いつもついているのだ。

ラ・トゥール=ランドリ
何と。

王
しかも妙なのは、晩になると、謎めいた男が、
真っ黒な外套と真っ暗な夜にすっぽり身を包み、
闇に紛れて、その家へ入っていくことだ。

ラ・トゥール=ランドリ
陛下もそうなされば!

王
何を言う! あの家は他人には戸を閉ざし、塀で囲ってある!

ラ・トゥール=ランドリ
お後をおつけになる陛下に、その方は、
何かお気持ちを示されたことは?

王
まあ、あの目つきからすれば、ひどい見当違いでもあるまい。
私をどうしても嫌だとは思っていない。

ラ・トゥール=ランドリ
王に愛されているとご存じですか。

王(首を振って)
毛織りの仕着せと灰色の長衣で、身をやつしている。

ラ・トゥール=ランドリ(笑って)
なるほど、陛下は清らかな恋をしておいでだ。
相手はさぞ神々しいトワノン、司祭の囲い女でしょう!

数人の貴族とトリブレが入ってくる。

王(ラ・トゥール=ランドリに)
しっ、誰か来た。恋をうまく運びたければ、
黙ることも覚えねば。

最後の言葉を聞きながら近づいてきたトリブレに向き直る。

そうだろう?
秘密だけが、壊れやすい恋の企てを
無事に包んでおけるものなのだ。

第二場

王、トリブレ、ゴルド氏、数人の貴族。貴族たちは豪奢な装い。トリブレはボニファーチョの絵に描かれた道化の衣装。
王は、通り過ぎる女たちの一団を眺めている。

ラ・トゥール=ランドリ
ヴァンドーム夫人は神のようだ!

ゴルド
ダルブ夫人とモンシュヴルイユ夫人も、とてもお美しい。

王
コセ夫人は、その三人の誰よりも美しい。

ゴルド
コセ夫人! 陛下、お声を低く。

舞台奥を通るコセ氏を指す。背が低く腹の出た男。「フランスで最も太った四人の貴族の一人」とブラントームはいう。

亭主に聞こえます。

王
おい、シミアーヌ、それがどうした。

ゴルド
ディアーヌ様に言いつけますよ。

王
それがどうした!

奥へ行き、通りかかるほかの女たちと話す。

トリブレ(ゴルドに)
ディアーヌ・ド・ポワチエを怒らせるぞ。
もう丸八日も、口を利いていないんだから。

ゴルド
夫のもとへ帰してしまうのかな。

トリブレ
そうはならないでほしいね。

ゴルド
父親の赦免の代価は払った。それでもう貸し借りなしだ。

トリブレ
サン=ヴァリエ殿といえば、あの変わった老人は、
いったい何を考えていたんだろう。
天が地上へ授けた天使のような、透き通るほど選り抜きの美女、
娘のディアーヌを、背に瘤のある大代官と
ごちゃまぜに、婚礼の床へ押し込んだとはね!

ゴルド
あれは老いぼれの馬鹿だ。赦免が届いたとき、
私は処刑台の上にいた。厳めしい、青白い老人だった。
お前との距離より近くにいた。
言ったのは、ただ「神よ、王をお守りください」だけ。
今ではすっかり正気を失っている。

王(コセ夫人と通りながら)
薄情な方だ! 行ってしまうのか!

コセ夫人(溜息をついて)
ソワソンへ。夫が連れていきますの。

王
ひどい話ではないか。パリじゅうが、
最も高貴な貴族も、最も才気ある人々も、
恋に焦がれる目をあなたへ注いでいるというのに。
これほど美しい生涯の、最も美しい盛りに、
決闘をする者もソネットを書く者も、
最高の詩と最高の剣の技をあなたのために取っておき、
美しい目が至るところに炎を撒いて、
女たちが皆、自分の恋人を見張らねばならない今、
これほどの輝きで宮廷を眩ませ、
この太陽が去れば昼かどうかもわからなくなるあなたが、
公爵も皇帝も王も大公も顧みず、
田舎の空で町人じみた星として輝こうとは!

コセ夫人
落ち着いてくださいな。

王
いやいや、もう何も言うまい。
舞踏会の真っ最中にシャンデリアを消すとは、変わった気まぐれだ!

コセ氏が入ってくる。

コセ夫人
陛下、嫉妬深い人が来ましたわ!

急いで王のそばを離れる。

王
ああ、悪魔に魂をくれてやれ!

トリブレに。

それでもあの女房に四行詩を作ってやったぞ!
マロは、私の新しい詩をお前に見せたか。

トリブレ
陛下の詩なんぞ読みませんよ。
王様の詩というのは、必ずひどい出来ですから。

王
この悪党!

トリブレ
恋と日和の韻を無理やり合わせるのは、
有象無象に任せておけばよろしい。
美女のそばでは、それぞれの役目を守ってください。
陛下は恋をし、マロが詩を作る。韻を踏む王は品位を落とす。

王(熱を込めて)
ああ、美女のために詩を作ると、心が高く舞い上がる!
王の城の主塔にも、翼をつけたい。

トリブレ
風車になってしまいますな。

王
あそこにコワラン夫人が見えなければ、
お前を鞭打たせるところだ。

コワラン夫人へ駆け寄り、口説き文句をささやいている様子。

トリブレ(独白)
お前を運ぶ風に乗って、そっちの女へも行くがいい。

ゴルド(トリブレに近づき、舞台奥の様子を指して)
あっちの戸口からコセ夫人だ。賭けてもいい。
手袋を落として、王に拾わせるぞ。

トリブレ
見ていよう。

王がコワラン夫人へ気を向けるのを見て嫉妬したコセ夫人は、実際に花束を落とす。王はコワラン夫人を離れ、花束を拾い、コセ夫人といかにも親密そうな会話を始める。

ゴルド(トリブレに)
言ったとおりだろう?

トリブレ
お見事!

ゴルド
王はまた捕まった!

トリブレ
女とは、ずいぶん完成された悪魔だね。

王はコセ夫人の腰を抱き、手に接吻する。夫人は笑い、楽しげにしゃべる。不意に奥の戸口からコセ氏が入る。ゴルドがトリブレにそれを知らせる。コセ氏は立ち止まり、王と妻の姿をじっと見つめる。

ゴルド(トリブレに)
亭主だ!

コセ夫人(夫を見つけ、自分をほとんど抱きしめている王に)
離れましょう!

王の手をすり抜けて逃げる。

トリブレ
あの腹の出た嫉妬男、ここへ何しに来たんだ?

王は奥の食卓へ近づき、酒を注がせる。

コセ(考え込みながら前へ出て、独白)
何を話していたのだ?

何か話があると合図したラ・トゥール=ランドリへ、急いで近づく。

何だ?

ラ・トゥール=ランドリ(ひそめかして)
奥様は実にお美しい!

コセはむっとして、何か打ち明けたそうなゴルドの方へ行く。

ゴルド(小声で)
いったい何が頭の中を駆け回っているのです?
なぜそう何度も脇をお眺めになる?

コセは腹を立てて彼を離れ、トリブレと鉢合わせする。トリブレは内密そうな顔で舞台の隅へ引き寄せる。その間、ゴルドとラ・トゥール=ランドリは大口を開けて笑う。

トリブレ(コセに小声で)
旦那、すっかりこんがらがった顔ですな!

大笑いし、怒って出ていくコセに背を向ける。

王(戻ってきて)
ああ、私は何と幸せなのだ! 私に比べれば、
ヘラクレスもユピテルも、滑稽な色男にすぎぬ!
オリュンポスなどあばら屋だ! 女たちは実にすばらしい!
私は幸せだ! お前は?

トリブレ
たいそう幸せですよ。
舞踏会も遊びも色恋も、心の中で笑っている。
俺はけなし、陛下は楽しむ。陛下は王様のように、
俺は背曲がりのように幸せです。

王
母が笑いながら私を身ごもった、めでたい日よ!

出ていくコセを見て。

宴を台無しにするのは、あのコセだけだ。
どういう男だと思う?

トリブレ
とんでもない馬鹿です。

王
ああ、かまうものか! あの嫉妬男を除けば、何もかも気に入っている。
何でもでき、何でも望み、何でも手に入るのだ、トリブレ!
この世にいるのは何と楽しい、生きるとは何とすばらしい!
何という幸せ!

トリブレ
そりゃそうでしょう、陛下。酔っておいでだ!

王
だが、あそこに見えるのは……美しい目だ! 美しい腕だ!

トリブレ
コセ夫人ですか。

王
来い、見張りをしてくれ!

歌う。

楽しき日曜、万歳よ、
パリの町の人々の!
女の肌が白いとき、

トリブレ(歌って)
男は酔って千鳥足。

二人は退場。数人の貴族が入ってくる。

第三場

ゴルド氏、金髪の若い小姓パルダイヤン氏、ヴィック氏、王の侍従の服を着たクレマン・マロ。続いてピエンヌ氏、一、二人の貴族。ときおり、考え込み、ひどく真剣な顔で歩き回るコセ氏。

クレマン・マロ(ゴルドに挨拶して)
今夜はどんなお噂が?

ゴルド
何もない。宴が見事で、王が楽しんでおいでだ。

マロ
ああ、それは大ニュースだ!
王は楽しむ? それは大変!

コセ(二人の後ろを通りながら)
しかも、ひどく不幸なことだ。
楽しむ王とは、危険な王だからね。

そのまま通り過ぎる。

ゴルド
あの気の毒な太っちょコセを見ると、胸が塞がるよ。

マロ(小声で)
王が奥方にしきりに迫っておいでだとか?

ゴルドはうなずく。ピエンヌが入ってくる。

ゴルド
おや、親愛なる公爵だ!

挨拶を交わす。

ピエンヌ(秘密めかして)
諸君、新しい話だ!
どんな賢者の頭も混乱する話!
見事な話、笑える話、
恋の話、ありえない話だ!

ゴルド
何だい?

ピエンヌ(皆を周りに集めて)
しっ!

隅でほかの人と話しているマロに。

こちらへ、クレマン・マロ先生!

マロ(近づいて)
閣下、どんなご用です?

ピエンヌ
君は大馬鹿だ。

マロ
何にせよ、自分が「大」のつく者だとは思いませんでしたが。

ピエンヌ
君の書いたペスキエーラ攻囲の詩で読んだぞ、
トリブレについての、あの句を。
「角の欠けた頭の道化、
三十歳でも生まれた日ほどの知恵しかない……」
君は大馬鹿だ!

マロ
何のことかわかったら、キューピッドに罰してもらいますよ!

ピエンヌ
そうか!

ゴルドに。

シミアーヌ殿、

パルダイヤンに。

パルダイヤン殿、

ゴルド、パルダイヤン、マロ、そして輪に加わったコセが公爵を囲む。

さあ、当ててみてくれ。
トリブレに、とんでもないことが起こっている。

パルダイヤン
背筋が伸びた?

コセ
大元帥にでもなったか?

マロ
こんがり焼かれて食卓へ出されたのでは?

ピエンヌ
違う、もっとおかしい。あいつには……何があるか当ててみろ。
信じられないことだ!

ゴルド
ガルガンチュアとの決闘か!

ピエンヌ
違う。

パルダイヤン
自分より醜い猿か?

ピエンヌ
違う。

マロ
ポケットいっぱいの金貨?

コセ
串焼きの輪を回す犬の仕事か?

マロ
天国で聖母との逢い引きか?

ゴルド
ひょっとして、魂か?

ピエンヌ
十回考えてもわからんぞ!
道化のトリブレ、あの不格好なトリブレに、
何があるか、よく考えろ……途方もないものだ!

マロ
背中の瘤?

ピエンヌ
違う、あいつには……百回考えても当たるまい!
愛人がいる!

一同、大笑いする。

マロ
はっはっ、公爵は面白いことをおっしゃる。

パルダイヤン
いい冗談だ!

ピエンヌ
諸君、魂にかけて誓うよ。
その女の家の戸口も見せてやろう。
あいつは毎晩、茶色の外套を着て通っている。
腹を空かせた詩人のように、陰気で怒った顔をしてね。
からかってやるつもりだ。夜にコセ邸のそばを
ぶらついていて発見した。秘密にしてくれ。

マロ
なんというロンドーの題材だ!
何と、トリブレが夜にはキューピッドに変わるとは!

パルダイヤン(笑って)
トリブレ殿に女だと!

ゴルド(笑って)
木馬に鞍を置くようなものだ!

マロ(笑って)
その娘さんなら、また別のベッドフォードが
カレーに上陸したとしても、
イギリス軍を追い払うだけのものは、十分お持ちだろう!

皆笑う。ヴィックが来る。ピエンヌは唇に指を当てる。

ピエンヌ
しっ!

パルダイヤン(ピエンヌに)
ところで王も、毎日、夕暮れになると一人きりで、
獲物でも探すようにお出かけになるのは、なぜだろう?

ピエンヌ
ヴィックが教えてくれる。

ヴィック
まず知っているのは、
陛下がたいそう楽しんでいらっしゃるということだ。

コセ
ああ、その話は聞かせないでくれ!

ヴィック
だが、気まぐれの風にどちらへ吹かれていくのか、
なぜ晩になると冬の外套を着込み、
服装も様子もすっかり変えて出かけるのか、
どこかの窓を戸口代わりに使うのか、
そんなことを気にするものか。
諸君、私は独身なのだから、何の関係がある!

コセ(首を振って)
王というものは――諸君、古参の貴族なら知っている――、
いつも誰かの家から、楽しみを奪ってくるものだ。
誘惑されそうな妹、妻、娘を持つ者は用心しろ!
上機嫌な権力者は、人に害をなすことしか考えない。
そこには恐ろしいことがいくらでもある。
笑う口からは、歯が残らず見える。

ヴィック(ほかの者たちに小声で)
あれほど王を恐れているとは!

パルダイヤン
美しい奥方のほうは、ご亭主ほど怖がっていないのに。

マロ
それがご亭主には怖いのさ。

ゴルド
コセ、考え違いだ。王には陽気で、気前よく、
満足していていただくことが、たいへん大事なのだ。

ピエンヌ(ゴルドに)
同感だ、伯爵! 退屈している王は、
黒い服の若い娘、雨ばかりの夏のようなものだ。

パルダイヤン
決闘のない恋だ。

ヴィック
水を詰めた酒瓶だ。

マロ(小声で)
王がトリブレ=キューピッドと戻ってくる。

王とトリブレが入る。廷臣たちは恭しく道を開ける。

第四場

前場の人々、王、トリブレ。

トリブレ(入ってきて、すでに始まった会話を続けるように)
宮廷に学者ですって! 世にも珍しい化け物だ!

王
ナヴァールの姉を説得してくれ。
私の周りに学者を集めたいと言うのだ。

トリブレ
ここだけの話、これだけはお認めください。
俺は陛下ほど飲んでいない。
つまり、物事の原因から結果まで正しく判断するには、
俺には陛下より、ずっと大きな強みがある。いや、二つだ。
酔っていないことと、王ではないことです。
学者など置くくらいなら、ここへ疫病や熱病、その他もろもろを!

王
ずいぶん無造作な忠告だ。姉は学者を集めたいと言う!

トリブレ
姉君ともあろう方が、ひどいことを。
どんな獣も、貪欲な烏も、狼も、梟も、
雛鵞鳥も、牛も、詩人さえも、
マホメット教徒も、神学者も、
フランドルの参事会員も、熊も、犬も、
学者と呼ばれる、あの荷鞍を載せた驢馬ほど、
醜く、毛むくじゃらで、見るも嫌な姿で、
途方もない馬鹿げた話を鎧にし、
逆毛立ち、汚らしく、空威張りしたものはいませんよ!
陛下には、楽しみや権力や征服が足りないのですか。
宴を香らせる、花盛りの女たちが足りないのですか。

王
うむ……姉のマルグリットが、ある晩そっと言ったのだ。
女だけでいつまでも満足はできまい、
いずれ退屈するようになったら、と。

トリブレ
前代未聞の処方だ!
退屈している人に学者を勧めるとは!
マルグリット様は、陛下も認めるでしょうが、
いつも最も絶望的な手をお選びになる。

王
では学者はよそう。だが、詩人を五、六人……

トリブレ
陛下のお立場なら、いつも韻まみれの詩人一人を、
ベルゼブブが濡れた聖水撒きを怖がる以上に怖がりますね。

王
五、六人……

トリブレ
五、六人! 馬屋一軒分だ!
学士院だ、動物小屋だ!

マロを指して。

ここにいるマロだけで十分でしょう。
そのうえ詩人どもに毒されなくても!

マロ
これはどうも!

独白。

あの道化、黙っていればよかったものを!

トリブレ
女ですよ、陛下! ああ、女こそ天、女こそ地、
女こそすべて! ところが陛下には女がいる!
女がいるんです! 勘弁してください。
それで学者が欲しいとは、夢でも見ておいでだ!

王
私は、貴族の名誉にかけて、
魚が林檎を欲しがるほどにも欲しくはない。

奥の一団で笑い声が上がる。トリブレに。

ほら、あの伊達男どもがお前を笑っているぞ。

トリブレは聞きに行き、戻る。

トリブレ
違います。別の馬鹿を笑っているんです。

王
何だと、誰を?

トリブレ
王を。

王
本当か! 何をぬかしている?

トリブレ
陛下はけちだと。
金も恩賞もナヴァールへ流れて、
自分たちには何もしてくれないと。

王
ああ、ここからでも三人とも見える。
モンシュニュ、ブリオン、モンモランシー……

トリブレ
そのとおり。

王
廷臣どもめ! 忌々しい連中だ!
一人は海軍提督、次は大元帥にし、
もう一人のモンシュニュは王室家政長にした。
それでも不満なのだ! こんな話があるか?

トリブレ
でも、あの方々を公平に扱うなら、
まだ何かにしてやれますよ。

王
何にだ?

トリブレ
絞首台のぶら下がりに。

ピエンヌ(笑い、奥にいる三人の貴族に)
諸君、トリブレの言葉が聞こえたか?

ブリオン(道化を怒りの目で見て)
ああ、聞こえたとも!

モンモランシー
ただでは済まさん!

モンシュニュ
卑しい下僕め!

トリブレ(王に)
しかし陛下、ときには心が空しくなるでしょう。
目は「いや」と言いながら、心は「はい」と言う女が、
おそばには一人もいないのですから!

王
お前に何がわかる?

トリブレ
王の威光に目が眩んだ心に愛されるだけでは、
愛されているとは言えません。

王
この世に、私自身を愛してくれる女が
いないとでも、お前にはわかるのか?

トリブレ
どなたかも知らずに?

王
ああ、そうだ。

独白。

ここでビュシーの袋小路の可愛い娘を
危うい目に遭わせぬようにしよう。

トリブレ
では、町人の娘ですか?

王
それが悪いか?

トリブレ(急に)
お気をつけください。
町人の娘! ああ、危ない恋ですよ。
町人は、ときには手ごわい古代ローマ人になる。
持ち物に手を出せば、こちらの手に傷が残ります。
道化と王なんですから、おとなしく、
陛下の忠実な貴族どもの、妻や妹で満足しましょう。

王
ああ、コセの女房なら、私も異存はない。

トリブレ
お取りなさい。

王(笑って)
言うは易く、行うは難しだ。

トリブレ
今夜さらいましょう。

王(コセを指して)
伯爵はどうする?

トリブレ
バスティーユは何のために?

王
いや、それは駄目だ。

トリブレ
話をつけるなら、公爵にしておやりなさい。

王
町人のように嫉妬深い男だ。
何をやっても断って、屋根の上からでも騒ぎ立てるぞ。

トリブレ(考えて)
邪魔な男だ。金をやるか、追放するか……

少し前から、コセは王と道化の背後へ近づき、会話を聞いている。トリブレは嬉しそうに額を打つ。

だが、手軽で、ごく簡単で、
もっと早く思いつくべきだった方法がある。

コセは近づいて耳を澄ます。

コセ氏の首を刎ねさせなさい。

コセは仰天して後ずさる。

……スペインかローマとの陰謀があったことにして……

コセ(たまりかねて)
この小悪魔め!

王(笑ってコセの肩を叩き、トリブレに)
おいおい、貴族の名誉にかけて、
本気か? この首を刎ねるのか!
見ろよ、この頭を。わかるか?
ここから考えが出てくれば、きっと角が生えているぞ。

トリブレ
考えを入れていた鋳型と同じにね。

コセ
私の首を刎ねるだと!

トリブレ
それが何か?

王(トリブレに)
とことん怒らせる気か?

トリブレ
何です、何もかも遠慮して、
ささやかな気まぐれ一つ通せないなら、王になった甲斐がない!

コセ
私の首を刎ねるだと! ああ、ぞっとする!

トリブレ
実に簡単な話でしょう。
あなたの首を刎ねてはいけない理由が、どこにあるんです?

コセ
まったく!
懲らしめてくれるぞ、悪党!

トリブレ
おお、ちっとも怖くない!
戦いを挑んでいる権力者たちに囲まれていても、
俺は何も怖くない。首の上にあるのは、
失って惜しいものでもない、道化の頭だけですからね。
ただ一つ怖いのは、背中の瘤が体の中へめり込み、
あなたのように腹へ落ちてくることだ。
それでは俺も醜くなります。

コセ(剣に手をかけて)
ならず者!

王
伯爵、待て。来い、道化!

トリブレを連れ、笑いながら離れていく。

ゴルド
王は腹を抱えてお笑いだ!

パルダイヤン
ちょっとしたことにも、あんなに無邪気にお笑いになる!

マロ
自ら楽しむ王とは、面白いものだ!

道化と王が離れると、廷臣たちは集まり、憎しみの目でトリブレを追う。

ブリオン
あの道化に仕返しだ!

一同
うむ!

マロ
だが、鎧に守られている。
どこから捕まえる? どこを打つ?

ピエンヌ
私は知っている。
皆、それぞれに恨みがある。復讐はできる。

皆、興味をそそられてピエンヌに近寄る。

今晩、日暮れに、十分武装して、
ビュシーの袋小路、コセ邸のそばへ集まれ。
この件は、もう一言も口にするな。

マロ
わかったぞ。

ピエンヌ
決まりだな?

一同
決まりだ。

ピエンヌ
静かに、戻ってくる。

トリブレと、女たちに囲まれた王が戻る。

トリブレ(一人離れて、独白)
さて、次は誰をからかってやろう。王か……おや!

従僕(入ってきて、トリブレに小声で)
黒ずくめの老人、サン=ヴァリエ様が、
王にお目にかかりたいと。

トリブレ(手を擦り合わせて)
こいつはいい! サン=ヴァリエ殿をお通ししろ。

従僕は退場。

すばらしい! こいつはどうしたことだ!
とんでもない大騒ぎになるぞ!

奥の大扉のあたりで物音と騒ぎ。

外の声
王に話がある!

王(会話を中断して)
駄目だ!……誰が入ってきた?

同じ声
王に話がある!

王(急いで)
駄目だ、駄目だ!

喪服の老人が人波をかき分け、王の前に立って、じっと見据える。廷臣たちは皆、驚いて道を開ける。

第五場

前場の人々、深い喪の装いのサン=ヴァリエ氏。髪も髭も白い。

サン=ヴァリエ(王に)
いいえ、お話しします!

王
サン=ヴァリエ殿!

サン=ヴァリエ(敷居に立ったまま)
そう呼ばれております。

王は怒って一歩近づく。トリブレが止める。

トリブレ
おお陛下、あの爺さんには俺からご挨拶を。

芝居がかった姿勢でサン=ヴァリエに。

閣下! そなたは余に対して陰謀を企てた。
余は寛大で慈悲深い王として、そなたを赦した。
それは結構なことだ。なのに今、何を血迷って、
婿殿の子供を孫に持とうとなさる?
あの婿殿はひどく醜く、格好も悪く、姿も悪い。
鼻の真ん中に疣があり、
片目だという者もあるし、毛深く、痩せて青白く、
腹は、この方のように出ており、

コセを指す。コセは反り返る。

背中は俺のように曲がっている。
あの横に娘さんが並べば、誰だって笑うだろう。
王がお計らいにならなければ、あの婿は
歪んだ孫、恐ろしい孫を作っていたはず。
赤毛で、歯抜けで、出来損ないで、恐ろしく、滑稽で、
腹はこの方のように出ており、

またコセを指し、一礼する。コセは憤る。

背中は俺のように曲がっている!
婿殿は醜すぎる! 王にお任せなさい。
そうすれば、いつか足腰のしっかりした孫たちが、
髭を引っ張り、膝によじ登ってくれるでしょう。

廷臣たちは野次と笑い声を上げ、トリブレに喝采する。

サン=ヴァリエ(道化には目も向けず)
また一つ侮辱を! 陛下、あなたは私の話をお聞きください。
王である以上、お聞きになる義務がある!
ある日あなたは、私を裸足でグレーヴ広場へ引かせ、
そこで夢のように赦免なさいました。
私はあなたを祝福しました。王が赦免の奥に
何を隠しているか、知らなかったからです。
あなたは、私への赦免の中に、私の恥を隠していたのだ。
そうです、陛下。古い家柄も、
千年も高貴であったポワチエの血も顧みず、
私がグレーヴからゆっくり帰りながら、
心の中で勝利の神に、私に残された命の日々を
あなたの栄光の日々として授けてほしいと祈っていたとき、
あなた、フランソワ・ド・ヴァロワは、その日の晩、
恐れも、憐れみも、慎みも、愛もなく、
女の徳の墓場である寝床の中で、
忌まわしい接吻の下に、冷酷にも、
ブレゼ伯爵夫人ディアーヌ・ド・ポワチエを、
曇らせ、萎れさせ、汚し、辱め、打ち砕いた!
何ということだ! 私が有罪の宣告を待っていたとき、
お前はルーヴルへ駆けていたのか、清らかなディアーヌ!
そしてあの男、バイヤールから騎士に叙せられた王、
若い身で老いぼれの享楽を求める男は、
神だけがその数を知る、わずかな延命の日々と引き換えに、
父を足元に置き、お前の辱めを値切っていたのか。
考えるだに恐ろしい、あの忌まわしい台、
ある朝、死刑執行人がグレーヴに組み立てた台は、
その日の暮れまでに、ああ悲惨なことに、
娘の寝床か、父の処刑台か、どちらかになるはずだった!
私たちをお裁きになる神よ、天上で何とおっしゃったのです。
同じあの処刑台の上で、
陰気で、後ろ暗く、血と汚れにまみれ、
慈悲の衣を着た王の色欲が転げ回るのを、ご覧になったとき!
陛下、これは悪い行いです。
老人の血で敷石を赤く染めたとしても、
それはよい。たとえ尊敬に値する老人でも、
大元帥の一味だったのだから、当然の報いでしょう。
しかし老人の代わりに、その子を奪い、
恐れやすい、泣く哀れな女を、
勝ち誇った足で踏み砕いたこと、
それは神に背く行いで、いずれ責任を問われます!
あなたは権利の範囲を、大きく踏み越えた。
父はあなたのものでも、娘は違う。
ああ、私を赦免したと! ああ、これを
恩赦とお呼びになる! ならば私は恩知らずというのでしょう!
陛下、娘を辱めるくらいなら、なぜ御自身で
私の牢へおいでにならなかったのです!
私は叫んだでしょう。どうか私をお殺しください、慈悲を!
娘に慈悲を、わが家に慈悲を!
ああ、私を殺してください! 屈辱より墓を!
額に汚点をつけるくらいなら、首などなくてよい!
おお、王なる殿、そうお呼びするのですから、
キリスト教徒、伯爵、貴族たる者が、
頭でなく名誉を失えば、
首を刎ねられたのと変わりがあるとお思いか。お答えください!
私はそう言ったでしょう。そうすればその晩、教会で、
血に染まった棺に眠る私の白い髭へ接吻し、
清らかな心、聖らかな額を持つわがディアーヌは、
名誉を保った娘として、名誉を保った父のため祈ったでしょう!
陛下、娘を返せと言いに来たのではありません。
名誉を失えば、家族も失う。
娘が狂おしい恋であなたを愛していようと、いまいと、
恥が通ったところに、私が取り返すものはない。
お持ちになるがよい。ただ私は、これから
宴のたびに、こうして邪魔をしに来ようと決めた。
いつか父か、兄か、夫の誰かが、
――必ずその時は来る――あなたに私たちの仇を討つまで、
青ざめた姿で、すべての宴へ戻ってきて告げます。
あなたは悪いことをなさった、陛下、悪い行いをなさった!
あなたは聞かねばならない。汚れた額を
上げられるのは、私が話し終えたときだけだ。
私の復讐を黙らせるため、
また死刑執行人へ渡したくなるでしょう。いや、できまい。
翌日には私の亡霊が、

自分の頭を指して。

この頭を手に持って、また話しかけに来るのが怖いからだ!

王(怒りに息を詰まらせて)
よくも、ここまで無礼と狂乱に我を忘れて……!

ピエンヌに。

公爵、この男を捕らえよ!

ピエンヌが合図すると、槍斧を持つ兵二人がサン=ヴァリエの両側に立つ。

トリブレ(笑って)
爺さんは気が触れていますよ、陛下!

サン=ヴァリエ(腕を上げて)
二人とも、呪われよ!

王に。

陛下、それはよくない。
死にかけた獅子へ、飼い犬をけしかけるとは!

トリブレに。

お前が何者であろうと、蝮の舌を持つ下僕よ、
父の悲しみを、そうやって笑いものにする者よ、
呪われよ!

王に。

私は、あなたから、王が王へするように
遇される権利がありました。
あなたは王、私は父。老齢は玉座に等しい。
私たちは二人とも、額に冠を戴いている。
誰も不遜な目を上げてはならない冠を。
あなたのは黄金の百合、私のは白い髪だ。
王よ、不敬な者があなたの冠を侮辱すれば、
報復するのはあなた。もう一方に報復するのは、神だ。

第二幕 サルタバディル

ビュシーの袋小路の、最もひっそりした一角。右に、目立たない小さな家。小さな庭を囲む塀が舞台の一部を占める。庭には木が数本と石の腰掛け。塀には通りに出る戸があり、塀の上の狭い回廊には、ルネサンス風のアーチで支えた屋根がかかっている。家の上階の戸は露台に通じ、そこから階段で庭へ下りられる。左は、コセ邸の庭を囲む非常に高い壁。奥には遠くの家々と、サン=セヴランの鐘楼。

第一場

トリブレ、サルタバディル。場面の一部では、舞台奥にピエンヌ氏とゴルド氏。
道化の身につける物を一切着けず、外套にくるまったトリブレが通りに現れ、塀の戸へ向かう。黒い服に、剣のため裾の持ち上がった外套を着た男が、後をつける。

トリブレ(考え込みながら)
あの老人が、俺を呪った!

男(一礼して)
旦那……

トリブレ(不機嫌に振り返って)
ああ!

ポケットを探って。

何も持っていないよ。

男
何もねだってやしませんよ、旦那。とんでもない!

トリブレ(放っておいて立ち去れと合図して)
わかったよ!

ピエンヌとゴルドが入り、奥で立ち止まって様子をうかがう。

男(一礼して)
見当違いです、旦那。俺は剣で身を立てる男です。

トリブレ(後ずさって)
追い剝ぎか?

男(猫なで声で近づいて)
何かお悩みのご様子ですね。
毎晩この辺りを歩いておいでだ。
女を見張っていらっしゃる顔だ!

トリブレ(独白)
まずい!

声に出して。

自分の用を他人に話す気はない。

通り過ぎようとするが、男が引き止める。

男
あなたのためを思って、お節介を焼いているんです。
俺のことがわかれば、もっと親切にしてくださるはずだ。

近づいて。

奥方へ、どこかの色男が流し目を送り、
嫉妬なさっているのでは?

トリブレ(苛立って)
結局、何が言いたい?

男(愛想よく笑い、小声で早口に)
少しばかりのお心付けで、そいつを殺して差し上げますよ。

トリブレ(ほっとして)
ああ、そいつは結構だ!

男
旦那、これでおわかりでしょう。俺は堅気の人間です。

トリブレ
これは驚いた!

男
後をつけるのも、よいお役に立つためでさ。

トリブレ
なるほど、役に立つ男だ!

男(慎ましく)
この町のご婦人方の名誉の番人です。

トリブレ
色男を一人殺すのに、いくら取る?

男
殺す色男次第です。こちらの腕前にもよります。

トリブレ
大貴族を片づけるなら?

男
ああ、それは!
こっちの腹へ剣を食らう危険が、いくつもある。
あの方々は武装しています。身を危険にさらすわけで、
大貴族は高くつきます。

トリブレ
大貴族は高くつく!
まさか町人同士でも、
金を出して殺し合ったりするのか?

男(笑って)
ところが、やり始めていますよ!
まあ贅沢なんです。贅沢ですからね、
たいていは育ちのよい方々に限られる。
それでも、大金を払って貴族ぶりたい下賤な者もいて、
仕事を頼んでくる。
ああいう連中は気の毒ですがね。
代金は半分を前金、半分を後で。

トリブレ(首を振って)
だが、絞首台や処刑の危険はあるだろう……

男(笑って)
いえいえ、警察には口銭を納めています。

トリブレ
一人につき、いくらというわけか?

男(うなずいて)
ただし……何と言いますかね、
その、殺したのが……王様でなければ!

トリブレ
それで、どうやるんだ?

男
旦那、お望み次第で、出張でも、自宅でも。

トリブレ
礼儀正しいやり方だね。

男
出張には、よく尖った刺突剣を使います。
晩に相手を待ち伏せて……

トリブレ
家ではどうやる?

男
俺にはマグロンヌという妹がいましてね。たいそう美しい娘で、
通りで踊りを踊り、可愛いと評判です。
そいつがある晩、色男をうちへ誘い込み……

トリブレ
なるほど。

男
ね、音も立てずに済むでしょう。
行儀がいいんです。旦那、ぜひご贔屓に。
ご満足いただけますよ。店を構えるでもなく、
騒ぎを起こすでもない。ことに俺は、
窮屈な胴着に短剣を忍ばせ、ちょっとした仕事に
十人も群れて出かける連中とは違う。
剣と同じくらい肝っ玉の短い、あんな山賊どもとはね。

外套の下から、途方もなく長い剣を抜く。

これが俺の商売道具です。

トリブレは恐れて後ずさる。

お役に立ちますよ。

トリブレ(驚いて剣を眺め)
なるほど!
ありがとう。今のところは、何も用はない。

男(剣を鞘へ戻して)
それは残念。俺に会いたくなったら、
毎日正午、メーヌ邸の前を歩いています。
名はサルタバディル。

トリブレ
ジプシーか?

男(一礼して)
それに、ブルゴーニュ生まれで。

ゴルド(奥で手帳に書きつけ、ピエンヌに小声で)
ありがたい男だ。名前を控えておこう。

男(トリブレに)
旦那、どうか俺を悪く思わないでください。

トリブレ
思わないとも。何だって、生業は必要だからな!

男
物乞いだの、怠け者だの、
乞食にでもならないかぎりね。俺には子供が四人います。

トリブレ
そいつらを、もう育てません、というわけにもいくまい。

帰すようにして。

どうか、お達者で!

ピエンヌ(奥で、トリブレを指し、ゴルドに)
まだ明るい。見つかりそうで心配だ。

二人は退場。

トリブレ(男に)
ではな!

男(一礼して)
さようなら。何なりと、お申しつけを。

退場。

トリブレ(去っていく男を見て)
俺たちは、二人とも同じ高さにいる。
鋭い舌と、尖った刃。
俺は笑う男、あいつは殺す男だ。

第二場

男が去ると、トリブレは庭の塀にある小戸をそっと開ける。用心深く外を見てから、鍵穴から鍵を抜き、内側から戸を念入りに閉める。気にかかることに心を奪われた様子で、庭を数歩歩く。

トリブレ(一人で)
あの老人は、俺を呪った……
俺に向かって話し、「呪われろ、下僕!」と叫んでいたとき、
俺はその悲しみをからかった。
ああ、そうだ、卑劣だった。
笑っていたが、心の中では恐ろしくてたまらなかった。

石の卓のそばの小さな腰掛けに座る。

呪われた!

額に手を当て、深く考え込む。

ああ、自然と人間が、俺を
これほど意地悪く、残酷で、卑怯な男にした。
口惜しい、道化であるとは! 口惜しい、この体であるとは!
いつもこの思いだ。起きていても眠っていても、
夢で世界を一巡りしたところで、
戻ってくるのはこれだ。俺は宮廷道化だ!
笑うことしか望めず、できず、許されず、行えない!
何という恥辱と惨めさの極みだ!
旗と呼ぶぼろ切れの周りに群がる兵士にも、
スペインの乞食にも、チュニスの奴隷にも、
牢獄の徒刑囚にも、結局は残されるもの、
この世で息をし、動いている人間なら誰にでもあるもの、
笑わずにいる権利、泣きたければ泣く権利を、
俺は持たない! 神よ!
悲しく、不機嫌で、居心地の悪い歪んだ体に閉じ込められ、
自分の姿に吐き気を催し、
あらゆる強さ、あらゆる美しさに嫉妬し、
ますます心を暗くする輝かしさに囲まれて、
ときに、荒んだ心で一人、少しばかりの物陰を探し、
激しくすすり泣く魂を、
一瞬でも落ち着かせようとすると、
不意に主人が現れる、陽気な主人が。
何でもでき、女に愛され、生きていることに満足し、
あまりに幸せで、墓のことなど忘れている。
背が高く、若く、健康で、フランスの王で、美しい。
そいつが、俺の溜息をつく物陰で、俺を足で突き、
欠伸しながら言う。「道化、俺を笑わせろ!」
ああ、哀れな宮廷道化! それでも人間なのだ!
心に煮えたぎる激情、
恨み、誇り、高慢な怒り、
胸いっぱいの嫉妬と憤激、
恐ろしい企みを絶えずめぐらす思案、
心の内を食い荒らす、そうした黒い感情のすべてを、
主人の合図一つで自分の中で擦り潰し、
欲しがる誰にでも、笑いに変えて差し出す!
卑しさ! 歩こうと、立とうと、座ろうと、
足を引く糸を、いつも感じている。
どこからも蔑み! 誰もがこの男を辱める。
あるいは、王妃、美しい女が、
半ば裸で愛らしく、彼だって欲しくなるような女が、
犬のように、寝床の上で遊ばせておく!
だからな、麗しの貴族諸君、嘲り好きの貴族諸君、
ふん、こいつはお前たちを憎んでいるぞ! 何という敵同士だ!
ときには、お前たちの侮蔑に、何と高い代価を払わせることか。
何とすばやく、仕返しの一撃を見つけることか。
主人に入れ知恵する、黒い悪魔なのだ。
諸君、お前たちの栄達には、芽を出す暇さえない。
美しい人生を爪でつかめば、
楽しみながら、一枚ずつ花びらをむしり取る!
お前たちが、こいつを悪くしたのだ!
ああ苦しい! こんなものが生きることか。
他人を酔わせる酒に、胆汁を混ぜる。
自分の中によい心が芽生えたら、消してしまう。
考えようとする精神を、鈴の音で痺れさせる。
自分にはただの皮肉にすぎない宴を、
毎日、悪霊のように通り抜け、
退屈しのぎに幸せな者の幸福を壊し、
他人の破滅にしか望みを持たず、
偶然どこへ置かれようと、誰に対しても、
絶えず自分の中に持ち歩き、あらゆるものに混ぜ、
しまい込み、嘲笑の下へ隠し続ける、
心の奥へ溢れ出した、古い憎しみを!
ああ、俺は不幸だ!

座っていた石の腰掛けから立つ。

だが、ここでそんなことが何になる?
この戸を通れば、俺は別の人間ではないか。
出てきた世界を、少し忘れよう。
ここへ、外のものを持ち込んではならない。

再び物思いに沈む。

俺はどうかしているのか?

家の戸へ行って叩く。戸が開き、白い服の若い娘が出てきて、嬉しそうにその胸へ飛び込む。

第三場

トリブレ、ブランシュ、のちにベラルド夫人。

トリブレ
わが娘!

夢中で娘を胸に抱きしめる。

ああ、腕を父さんの首に回しておくれ!
この胸に! お前のそばでは、すべてが微笑み、重荷は何もない。
父さんは幸せだ。のびのびと息ができる!

うっとりと娘を見つめる。

毎日きれいになる! 足りないものはないか、ねえ?
ここは居心地がよいか? ブランシュ、しっかり接吻しておくれ!

ブランシュ(父の腕の中で)
お父様は、何てお優しいの!

トリブレ(腰を下ろして)
いや、お前を愛している、それだけだ。
お前は父さんの命、父さんの血そのものではないか。
お前がいなかったら、どうすればよいのだろう。
ああ、神様!

ブランシュ(父の額に手を置いて)
溜息をついていらっしゃる。何か内緒のお悩みがあるのね?
この、つまらない娘に話してください。
ああ、私、自分の家族がどんな人たちなのかも知らないの。

トリブレ
お前には、ほかに家族はいない。

ブランシュ
お父様のお名前も知らないわ。

トリブレ
名前が何だというのだ?

ブランシュ
私の育った小さな町、シノンのご近所の人たちは、
お父様がいらっしゃるまで、私を孤児だと思っていました。

トリブレ
あそこに置いておけばよかった。そのほうが用心深かった。
だが、あんな暮らしはもう続けられなかった。
お前が必要だった。父さんを愛してくれる心が必要だったのだ。

また娘を抱きしめる。

ブランシュ
ご自分のことを話したくないのなら……

トリブレ
決して外へ出てはいけない!

ブランシュ
ここに来て二月、
出かけたのは、教会へ行った八回だけです。

トリブレ
よし。

ブランシュ
優しいお父様、せめて母のことを聞かせて!

トリブレ
ああ、苦しい思いを呼び覚まさないでおくれ。
かつて、一人の女に出会ったことを思い出させないでおくれ。
お前がここにいなければ、夢だったと言うところだ。
たいていの女とは違う人だった。
魂と魂を結ぶものなど何もないこの世で、
一人ぼっちで、体も不自由で、貧しく、嫌われた父さんを見て、
その惨めさと歪んだ姿ゆえに、愛してくれた。
母さんは死んだ。あの一途な愛の、
天使のような秘密を墓へ持っていった。
稲妻のように父さんの上を走り去った、あの愛。
父さんの地獄へ差し込んだ、天国の光!
いつも私たちを迎えようと待っている土が、
父さんの頭を休ませてくれた、あの胸に、軽くありますように!
残されたのは、お前だけだ!

天を見上げて。

それでも、神よ、ありがとうございます!

泣いて、両手に額を隠す。

ブランシュ
どんなにおつらいのでしょう! そんなふうにお泣きになるのを、
私、見ていられない。胸が張り裂けるわ!

トリブレ
では、父さんの笑うところを見たら、何と言うだろうな?

ブランシュ
お父様、どうなさったの? お名前を教えて。
ああ、悲しみを何もかも、私の胸へ注いでください!

トリブレ
いや。名前を言って、何になる? 父さんはお前の父親だ。
いいか、ここを出れば、人は父さんを恐れているかもしれない。
わからないが、ある者は蔑み、ある者は呪う。
名前を教えたとして、お前はそれをどうする?
せめてここでは、お前の前では、
すべてが無垢な、この世でただ一つの片隅では、
ただの父親でいたい。敬われる父親、
聖く、尊く、神聖なものでありたいのだ!

ブランシュ
お父様!

トリブレ(激しく抱きしめて)
ほかに父さんへ応えてくれる心があるか?
この世で憎むすべてのものの分まで、お前を愛している!
隣にお座り。さあ、その話をしよう。
言っておくれ、父さんが好きかい?
こうして一緒にいて、お前の手を両手で包んでいるのに、
なぜほかの話をしなければならない?
わが娘、天が父さんに許してくれた、ただ一つの幸福よ。
ほかの者には親戚、兄弟、友、
妻、夫、家臣、ずらりと並ぶ祖先や縁者、
何人もの子供、ほかにもいろいろあるだろう。
父さんにはお前だけだ! ほかの者は金持ちだが、
父さんの宝も財産も、お前一人。
ほかの者は神を信じる。父さんはお前の心だけを信じる!
ほかの者には若さと女の愛があり、
誇り、輝き、優美、健康がある。
皆美しい。だが父さんには、お前の美しさしかない!
いとしい子! 父さんの町、国、家族、
妻、母、妹、娘、
幸福、富、信仰、掟、
世界はお前だ。いつもお前、ただお前だけだ!
ほかのどちらへ向いても、この哀れな心は傷つけられる。
もし、お前を失ったら!……いや、そんなことは
一瞬だって考えるのに耐えられない!
少し笑っておくれ。お前の笑顔は愛らしい。
そう、まったく母さんだ。母さんも、それほど美しかった。
お前もよく、母さんのように額へ手をやる。
拭うようにね。清らかな心には、
無垢そのものの額と、青空のような目が必要なのだ。
お前は天使の炎で、父さんを照らしてくれる。
その美しい体を透かして、父さんの魂はお前の魂を見る。
目を閉じても同じだ、お前が見える。
父さんの昼の光は、お前から来る。ときには
目が見えず、深い闇に瞳を覆われたらと思う。
この世に、お前以外の太陽を持たずに済むように!

ブランシュ
ああ、お父様を幸せにして差し上げたい!

トリブレ
誰を、父さんを?
ここでは幸せだよ。娘よ、お前が見えるだけで、
心がとろけてしまう。

笑いながら娘の髪を撫でる。

ああ、美しい黒髪! 小さいときは金髪だったのに。
誰が信じるだろう!

ブランシュ(甘える様子で)
いつか、夜の消灯の鐘が鳴る前に、
少し外へ出て、パリを見てみたいの。

トリブレ(激しく)
決して、決して駄目だ! ベラルド夫人と、
外へ出たことなどないだろうな?

ブランシュ(震えて)
ありません。

トリブレ
気をつけるんだ!

ブランシュ
教会へしか行きません。

トリブレ(独白)
ああ、見られる! 後をつけられる!
ひょっとすれば、さらわれる!
道化の娘など、辱めたところで、
ただ笑って済まされるのだ! ああ!

声に出して。

もう一度頼む。ここに閉じこもっていておくれ!
この子よ、パリの空気が女にどれほど悪いか、
放蕩者がどれほど町じゅうを走り回っているか、
知っていたなら! とりわけ貴族たちは……

天を仰いで。

神よ、この隠れ家で、御目の下に育ててください。
ほかの花を萎らす悲しみや嵐の風からお守りください。
夢の中でさえ、不浄な息に触れさせないでください。
不幸な父が、休戦のひとときに、
守られた香りを吸えるように。
この、優美と純潔の薔薇を!

両手に顔を隠し、泣く。

ブランシュ
もう外へ出たいとは言いません。だから、お願い、
そんなふうに泣かないで!

トリブレ
いや、これで気が休まる。
この前の晩には、あんなに笑ったからな。

立ち上がって。

だが、自分の身を忘れすぎた。
ブランシュ、また首輪をつけに戻る時刻だ。
さようなら。

日が暮れていく。

ブランシュ(父に接吻して)
すぐ帰っていらっしゃる? ねえ?

トリブレ
たぶんな。
かわいそうな子、父さんは自分の自由にならないのだ。

呼ぶ。

ベラルド夫人!

年老いた付添い女が、家の戸口に現れる。

ベラルド
何でしょう、旦那様。

トリブレ
私が来るとき、入るところを誰にも見られていないね?

ベラルド
大丈夫でしょう。こんなに人けがないのですもの!

ほぼ夜になる。塀の向こうの通りに、地味な暗い色の服で変装した王が現れる。塀の高さと、閉じた戸を調べ、苛立ちと落胆の様子を示す。

トリブレ(ブランシュを抱いて)
さようなら、いとしい娘!

ベラルドに。

河岸のほうの戸も、閉めてあるね?

ベラルドはうなずく。

サン=ジェルマンの裏に、もっとひっそりした家を知っている。
明日、見てこよう。

ブランシュ
お父様、私はこの家が好き。露台から庭が見えるから。

トリブレ
頼むから、あそこへは上がらないでおくれ!

耳を澄ます。

外を誰か歩いていないか?

庭の戸へ行き、開けて、不安そうに通りを見る。王は戸の近くの窪みに隠れる。トリブレは戸を少し開けたままにする。

ブランシュ(露台を指して)
まあ、晩にあそこで風に当たることもできないの?

トリブレ(戻ってきて)
気をつけるんだ。あそこなら見えてしまう。

背を向けている隙に、王は半開きの戸から庭へ忍び込み、大きな木の陰に隠れる。

それから、窓辺に灯りを置いては駄目だ。

ベラルド(手を合わせて)
いったい、どうやって男がここへ入ってこられるとお思いです?

振り返って木の陰の王を見つけ、呆気に取られて言葉を切る。叫ぼうと口を開けた瞬間、王が胸元へ財布を投げ込む。女は受け取り、手で重さを量ると、黙ってしまう。

ブランシュ(提灯を持って露台を調べに行ったトリブレに)
何という用心! お父様、教えて。
そんなに何が怖いの?

トリブレ
自分には何も、お前には何もかもだ!

もう一度、娘を抱きしめる。

ブランシュ、娘よ、さようなら!

ベラルドの提灯の光が、トリブレとブランシュを照らす。

王(木の陰で独白)
トリブレ!

笑う。

何とまあ!
トリブレの娘か! こいつは傑作だ!

トリブレ(出かけようとして引き返す)
そうだ、お祈りに教会へ行くとき、
誰かに後をつけられたりは?

ブランシュは困って目を伏せる。

ベラルド
一度も!

トリブレ
後をつけられたら、大声を上げるんだよ。

ベラルド
ええ、助けを呼びますとも!

トリブレ
それから、誰が叩いても決して戸を開けないこと。

ベラルド(トリブレの用心に輪をかけるように)
王様でいらしても!

トリブレ
王なら、なおさらだ!

もう一度娘に接吻し、念入りに戸を閉めて出ていく。

第四場

ブランシュ、ベラルド夫人、王。
場面の前半では、王は木の陰に隠れたまま。

ブランシュ(遠ざかる父の足音を聞き、物思いに沈んで)
でも、後ろめたいわ!

ベラルド
後ろめたい? どうして?

ブランシュ
ほんの小さなことにも、あんなに怯えて心配なさる。
帰りがけ、目に涙が光るのが見えたわ。
かわいそうなお父様! あんなに優しいのに!
日曜、私たちが外へ出られる時間に、
若い方が後をつけてくることを、話すべきだった。
ほら、あの美しい若い方よ。

ベラルド
なぜそんなことをお話しになるの、お嬢様。
お父様は、少し気難しくて、変わった方ですから。
それほどあの若い殿方がお嫌いなの?

ブランシュ
私が、あの方を嫌い? いいえ! ああ、まるで反対よ。
お会いしてから、何をしても忘れられない。
あの方の目が私の目へ語りかけた日から、
ほかのことは何でもなくなり、いつも、ここにあの方が見える。
私はあの方のもの! ねえ、私にはこう思えるの。
誰よりも、一キュビトも背が高いように!
何て勇ましく、優しく、高貴で、誇らしげなのでしょう。
ベラルド、馬にお乗りになったら、どんなにすてきかしら!

ベラルド
本当に魅力的な方ですわ!

王のそばを通る。王は一握りの金貨を与え、女は懐へしまう。

ブランシュ
あんな方は、きっと……

ベラルド(王へ手を出す。王はまた金を与える)
非の打ちどころがありませんとも。

ブランシュ
目を見れば、心がわかるわ。大きな心が!

ベラルド
ええ、途方もなく大きな心!

ベラルドは一言しゃべるたび王へ手を出し、王はそこへ金貨を満たす。

ブランシュ
勇敢で。

ベラルド(同じことを続けて)
恐ろしいほど!

ブランシュ
それでいて……親切。

ベラルド(手を出して)
情け深い!

ブランシュ
気前がよくて。

ベラルド(手を出して)
豪勢な方!

ブランシュ(深い溜息とともに)
好きなの!

ベラルド(一言ごとに、なお手を出して)
あのお姿は並ぶものもない!
あの目! あの額! あの鼻!……

王(独白)
おやまあ、婆さん、俺を部品ごとに褒め始めた!
身ぐるみ剝がされるぞ!

ブランシュ
そんなに褒めてくれるあなたが、大好きよ。

ベラルド
存じていますとも。

王(独白)
火に油だ!

ベラルド
親切で、情け深く、広い心!
勇敢で、気前よく……

王(ポケットを空にして)
しまった、また始まった!

ベラルド(続けて)
たいそうお偉い貴族ですわ。身なりも優雅で、
手袋には、何か金の刺繡がしてあります。

手を出す。王は、もうないと合図する。

ブランシュ
いいえ、貴族や大公であってほしくないの。
田舎から出てきた、貧しい学生がいい!
そのほうが、深く愛してくれそう。

ベラルド
まあ、そうかもしれませんね。
お嬢様がそうお望みなら。

独白。

変わった好み!
娘の頭は、何でもあべこべだ!

なおも王へ手を出してみる。

あの美しい方は、夢中でお嬢様を愛していますよ。

王は与えない。

独白。

もう干上がったらしい。一文もなければ、一言もなし。

ブランシュ(まだ王には気づかず)
日曜は、いくら早く来ても待ち遠しい。
会えないと、本当に悲しいの。
ああ、この前、献金のとき、
話しかけてくださるかと思って、胸がどきどきした!
昼も夜も考えているわ! あの方だって、ねえ、
私への恋に心を奪われているのよ。
いつも心の中に、私の姿を抱いているに決まっている。
あの方はそういう人。見ればよくわかるわ!
ほかの女なんて、何とも思わない。
遊びも、気晴らしも、お祭りもない。
私のことだけを考えて……

ベラルド(最後にもう一度、王へ手を差し出して)
首を賭けてもよろしい!

王(指輪を抜いて与え)
その首に、この指輪だ!

ブランシュ
ああ、昼には考え、夜には夢に見て、
何度、ここに……目の前にいてくださればと思うことか。

王は隠れ場所を出て、娘のそばにひざまずく。娘は反対側を向いている。

そしてご本人へ言いたいの。
幸せになって、喜んで、ええ、私はあなたをあい……

振り返り、ひざまずく王を見て、石のように固まる。

王(両腕を差し伸べて)
愛している!
最後まで、最後まで言って! ああ、「愛している」と!
怖がらなくていい。そんな唇に、その言葉は何と似合う!

ブランシュ(怯え、姿を消したベラルドを目で探して)
ベラルド! ああ神様、答えてくれる人がいない!
誰もいない!

王(ひざまずいたまま)
幸せな恋人が二人いれば、それで一つの世界だ!

ブランシュ(震えて)
どこからいらしたのです?

王
地獄からでも天国からでも、どうでもよいではないか!
私がサタンでもガブリエルでも、
あなたを愛している!

ブランシュ
ああ、どうか、お願い……
誰にも見られなかったでしょうね! 帰って!
神様、もしお父様が……

王
帰れと、震えるあなたをこの腕に抱いているのに?
私があなたのもの、あなたが私のものとなったのに!
私を愛している、そう言ったね。

ブランシュ(恥じらって)
聞いていらしたの!

王
もちろん。これ以上に天の音楽らしいものを、
ほかに何を聞けばよいのだろう?

ブランシュ(懇願して)
ああ、お話ししてくださったわ。
だからもう、お願い、帰って!

王
帰れと、私の運命があなたの運命に結ばれ、
二人の星が同じ空に輝き、
娘の心を目覚めさせるため私が来て、
まだ無垢な魂を愛へ、まぶたを光へ開くため、
天が私を選んだというのに!
さあ、見てごらん! 恋は魂の太陽だ!
この優しい炎に、暖まるのを感じないか?
死が人に与え、また取り上げる王笏、
戦場を駆け回って拾い集める栄光、
高い名声を得ること、広い領地を持つこと、
皇帝や王であること、それは人間の事柄。
何もかもが順番に過ぎ去るこの地上で、
神に属するものは、ただ一つ、愛なのだ!
ブランシュ、恋人が運んできたのは幸福だ。
気おくれしながら、戸口で待っていた幸福だ!
人生が花なら、愛はその蜜。
空で鷲と結ばれる鳩、
強さに身を預ける、震える優美、
私の手の中へ、そっと預けたあなたの手……
愛し合おう、愛し合おう!

接吻しようとする。娘は身をよじる。

ブランシュ
いや! 離して!

王は娘を抱きすくめ、接吻を奪う。

ベラルド(奥の露台で独白)
うまいものね!

王(独白)
捕まえた!

声に出して。

愛していると言っておくれ!

ベラルド(奥で独白)
悪党め!

王
ブランシュ、もう一度、言って!

ブランシュ(目を伏せて)
聞いたでしょう。ご存じのくせに。

王(夢中でまた抱きしめる)
私は幸せだ!

ブランシュ
私は、もうおしまい!

王
いや、私と一緒に幸せになる!

ブランシュ(腕から身を振りほどいて)
あなたがどなたかも知らないわ。
お名前を教えて。

ベラルド(奥で独白)
今ごろ気がついたのね!

ブランシュ
まさか、領主様や貴族ではないでしょう?
父はあの人たちを、あんなに恐れているの!

王
とんでもない、違う。私の名は……

独白。

さて、どうする?

考える。

ゴーシェ・マイエ。ひどく貧しい学生だ!

ベラルド(ちょうど、王からもらった金を数えて)
よくもまあ、そんな嘘を!

外套にくるまり、光を隠せる提灯を手にしたピエンヌとパルダイヤンが通りへ入る。

ピエンヌ(パルダイヤンに小声で)
ここだ、騎士殿!

ベラルド(小声で、慌てて露台から下りて)
外に誰かいる音がします。

ブランシュ(怯えて)
お父様かもしれない!

ベラルド(王に)
お帰りください!

王
邪魔をする不届き者め、
この手で捕まえられたら!

ブランシュ(ベラルドに)
早く河岸の戸からお通しして。

王(ブランシュに)
何と、もうお別れか!
明日も愛してくれる?

ブランシュ
あなたは?

王
一生ずっと!

ブランシュ
ああ、あなたは私を騙すわ。私が父を騙しているのだから。

王
決して! ブランシュ、美しい目へ、ただ一つ接吻を。

ベラルド(独白)
とことん、接吻に夢中な方ね!

ブランシュ(少し抵抗して)
いや、いや!

王は娘に接吻し、ベラルドと家へ入る。
ブランシュは、王が消えた戸口をしばらく見つめてから、自分も入る。その間、通りには、外套を着て仮面をつけた、武装した貴族たちが集まる。ゴルド、コセ、モンシュニュ、ブリオン、モンモランシー、クレマン・マロが、次々とピエンヌとパルダイヤンに合流する。ひどく暗い夜。彼らの提灯は覆いを閉じてある。互いに合図で確かめ合い、ブランシュの家を指し示す。従僕が梯子を担いでついてくる。

第五場

貴族たち、のちにトリブレ、ついでブランシュ。
ブランシュが上階の戸から露台へ現れる。手にした灯火が顔を照らしている。

ブランシュ(露台で)
ゴーシェ・マイエ! 愛する方のお名前、
私の心に刻まれて!

ピエンヌ(貴族たちに)
諸君、あれが当人だ!

パルダイヤン
見よう!

ゴルド(見下した調子で)
どうせ町人の美人だろう!

ピエンヌに。

平民の女を珍味にするとは、お気の毒に!

そのときブランシュが振り向き、貴族たちに顔が見える。

ピエンヌ(ゴルドに)
どう思う?

マロ
平民の娘が美しいぞ!

ゴルド
妖精だ、天使だ、優美そのものだ!

パルダイヤン
何だと! あれがトリブレ殿の愛人か!
食えない奴!

ゴルド
卑しい奴め!

マロ
最も美しい女が、最も醜い男に。
公平だ。ユピテルは血筋を交ぜるのがお好きだから。

ブランシュは家へ入る。窓の灯りだけが残る。

ピエンヌ
諸君、無駄口で時間を失うのはよそう。
トリブレを懲らしめると決めたのだ。
今ここには、皆の恨みと、
そのうえ梯子まで揃っている。
塀を越えて、あいつの美女を盗み出そう。
娘をルーヴルへ運び、明日の朝のお目覚めに、
陛下にこの美人を見つけていただくのだ。

コセ
王は、さっそく手をおつけになるだろうな。

マロ
悪魔が、自分の流儀で話をつけるさ!

ピエンヌ
よく言った。さあ、仕事だ!

ゴルド
実際、王の御馳走にふさわしい。

トリブレが入ってくる。

トリブレ(奥で、考え込みながら)
戻ってきた……何のためだ? ああ、自分でもわからない!

コセ(貴族たちに)
ところで諸君、黒髪だろうと金髪だろうと、
王が皆の女をああして奪うのを、本当によいと思うかね?
誰かが王妃を横取りしたら、
王は何と言うだろう、聞きたいものだ。

トリブレ(少し前へ進み)
ああ、俺の秘密!
あの老人が俺を呪った! 何かが胸を騒がせる!

夜があまりに暗く、すぐそばにいるゴルドが見えず、通りすがりにぶつかる。

誰だ?

ゴルド(驚いて戻り、貴族たちに小声で)
トリブレだ、諸君!

コセ(小声で)
勝利が二つだ! あの悪党を殺せ!

ピエンヌ
いや、いけない。

コセ
こっちの手の中にいる。

ピエンヌ
殺したら、明日笑ってやる相手がいなくなるではないか!

ゴルド
そうだ。殺しては、いたずらの面白さが減る。

コセ
だが、邪魔をされるぞ。

マロ
私に話させてくれ。すべてうまく運んでやる。

トリブレ(隅にとどまり、用心して耳を澄ましていた)
小声で話している奴がいる。

マロ(近づいて)
トリブレ!

トリブレ(恐ろしい声で)
誰だ?

マロ
おい、食ってかからないでくれ。私だ。

トリブレ
誰が「私」だ?

マロ
マロだ。

トリブレ
ああ、ひどい闇だ!

マロ
そう、悪魔が空を墨壺にしたのさ。

トリブレ
何の用だ?

マロ
察しなかったかね。王のために、
コセ夫人をさらいに来た。

トリブレ(ほっとして)
ああ……結構だ!

コセ(独白)
手足の一本でも、へし折ってやりたい!

トリブレ(マロに)
だが、どうやって寝室へ入る?

マロ(コセに小声で)
鍵を貸してくれ。

コセが鍵を渡す。マロはトリブレへ渡す。

ほら、この鍵に触ってみろ。
彫ってあるコセ家の紋章がわかるか?

トリブレ(鍵を撫でて)
三枚の鋸の刃だ、そうだな。

独白。

何だ、俺は馬鹿だ!

左の壁を指して。

あれがコセ邸だ。いったい何を考えていたんだ?

鍵を返しながら、マロに。

太っちょコセの女房をさらうのか? 俺も加わろう!

マロ
皆、仮面をつけている。

トリブレ
なら、仮面をくれ!

マロは仮面をつけてやり、そのうえ布を目と耳に巻きつける。

それから?

マロ
梯子を支えてくれ。

貴族たちは露台の塀へ梯子をかける。マロはトリブレを連れていき、支えさせる。

トリブレ(梯子を持って)
ふむ、人数は足りているか?
まったく見えなくなった。

マロ
夜が暗いからだ。

皆に、笑いながら。

大声でも、重い足音でも平気だ。
あの布で、目も耳も利かなくなっている。

貴族たちは梯子を上がり、露台に通じる上階の戸を破って家へ入る。ほどなく一人が庭へ現れ、内側から戸を開ける。やがて一同が庭へ出て、戸を通っていく。半裸で猿轡を噛まされ、身をよじるブランシュを担いでいる。

ブランシュ(遠くで、髪を乱して)
お父様、助けて! ああ、お父様!

貴族たちの声(遠くで)
勝ったぞ!

ブランシュを連れて姿を消す。

トリブレ(梯子の下に一人残って)
さて、俺にここで煉獄の務めでもさせる気か?
まだ終わらないのか。人を馬鹿にして!

梯子を離し、仮面へ手をやると、巻かれた布に触れる。

目隠しをされていた!

布と仮面を引きちぎる。地面に置き忘れられた提灯の明かりで、何か白い物が見える。拾い上げ、娘のヴェールだと気づく。振り返る。梯子は自分の露台の塀にかかり、家の戸は開いている。狂ったように駆け込み、ほどなく、猿轡を噛まされ半裸になったベラルドを引きずって戻る。呆然と女を見てから、髪をむしり、言葉にならない叫びを上げる。やがて声が戻る。

ああ、あの呪いが!

気を失って倒れる。

第三幕 王

ルーヴルの、王の控えの間。金箔、彫金、家具、壁掛けはルネサンス風。舞台前方に卓、肘掛け椅子、折り畳み椅子。奥に大きな金色の扉。左は王の寝室へ通じる戸で、綴織の垂れ幕がかかっている。右には金や七宝の食器を載せた飾り棚。奥の扉は並木道に面している。

第一場

貴族たち。

ゴルド
さて、この一件の仕上げをしよう。

パルダイヤン
トリブレには、悩ませ、苦しませ、
自分の美女がここにいるとは、気づかせないことだ!

コセ
愛人を捜させるのは結構だが、
夜中に連れ込むところを、門番に見られていたら?

モンシュニュ
ルーヴルの戸口番には全員、
夜、女が入るのは見ていないと言えと命じてある。

パルダイヤン
そのうえ、悪知恵の働くうちの従僕を、
目くらましに道化の家まで行かせた。
夜中に、ひどく暴れる女がオートフォール邸へ
引きずり込まれるのを見たと、何だかんだ話させてある。

コセ(笑って)
いいぞ、オートフォール邸ならルーヴルから遠ざかる!

ゴルド
目を覆う布を、しっかり締めておこう。

マロ
私は今朝、あいつへこんな手紙を送った。

紙を出して読む。

「おいトリブレ、お前の美女はさらったぞ!
知らせてやるなら、俺はこの女を連れて
フランスの外へ出ていく。」

一同笑う。

ゴルド(マロに)
署名は?

マロ
「ジャン・ド・ニヴェル!」

笑い声がいっそう高まる。

パルダイヤン
ああ、捜し回るだろうな!

コセ
見るのが楽しみだ!

ゴルド
あの気の毒な奴、絶望し、
拳を握り、怒りに歯を食いしばって、
一日で、たまった借りを返してくれるぞ!

横の戸が開く。豪華な朝の部屋着の王が、ピエンヌを伴って入る。廷臣たちは整列し、帽子を取る。王とピエンヌは大笑いしている。

王(奥の戸を示して)
そこにいるのか?

ピエンヌ
トリブレの愛人です!

王
本当か!
まったく、道化の愛人を横取りするとは! すばらしい!

ピエンヌ
愛人か、女房か!

王(独白)
女房に娘!
あいつが、そんな所帯持ちとは知らなかった!

ピエンヌ
ご覧になりますか?

王
もちろんだ!

ピエンヌは出ていき、ほどなく、ヴェールをかけ、よろめくブランシュを支えて戻る。王は気楽に肘掛け椅子へ座る。

ピエンヌ(ブランシュに)
美女よ、お入り。
震えるのは後で、好きなだけ震えるがよい。
王の御前だ。

ブランシュ(まだヴェールをかけたまま)
王様なの、あの若い方が!

王の足元へ駆け寄って身を投げる。
その声に王は身を震わせ、皆に退室するよう合図する。

第二場

王、ブランシュ。
王はブランシュと二人になると、顔を隠すヴェールを上げる。

王
ブランシュ!

ブランシュ
ゴーシェ・マイエ! ああ!

王(大笑いして)
貴族の名誉にかけて!
間違いだろうと、わざとだろうと、このいたずらは大歓迎だ。
何ということだ、私の美女、私のブランシュ、恋人よ、
この腕へおいで!

ブランシュ(後ずさって)
王様! 王様! 離してください、陛下。
ああ、もう、どう話せばいいのか、何と言えばいいのか……
ゴーシェ・マイエ様……違う、あなたは王様……

再びひざまずく。

ああ、どなたであっても、私を憐れんでください。

王
憐れめだって、ブランシュ! こんなに愛している私が!
ゴーシェの言ったことは、フランソワも変わらず言う。
あなたは私を愛し、私はあなたを愛する。二人とも幸せだ!
王だからといって、恋人として悪くはならない。
かわいい人、私を町人か、書生か、もっと下と思っていたのだね。
たまたま少しよい生まれで、
王であるからといって、それだけで
突然、私をひどく嫌わなくてもよいではないか!
平民である幸運には恵まれなかったが、それが何だ?

ブランシュ(独白)
あんなに笑っている! 神様、死んでしまいたい!

王(微笑み、いよいよ笑いながら)
ああ、宴、遊び、貴婦人、馬上試合、
夕暮れの森の奥での、甘い恋の語らい、
夜が翼で覆ってくれる、数々の楽しみ。
それが、私の未来と結ばれる、あなたの未来だ!
恋人同士、幸せな二人、夫婦になろう!
いつかは年を取る。人生とは、ここだけの話、
歳月がずたずたにしても、ところどころに
幾瞬かの恋がきらめく布なのだ。
その金片がなければ、ただの悲しいぼろ切れ!
ブランシュ、私はよく、こういうことを考えた。
そして知恵とはこうだ。父なる神を敬い、
愛し、楽しみ、うまいものを食べよう!

ブランシュ(打ちのめされ、後ずさって)
ああ、私の夢! 思っていた方とは、何て違うの!

王
何だ、震えている恋人だと思っていたのか?
うだつの上がらない学者、陰気で情熱もない、
あの手の馬鹿の一人と?
哀れっぽい顔で溜息さえつけば、
すべての女も、魅せられた心も、
自分の前へ降参すると考える連中に?

ブランシュ(押し返して)
離して! ああ、私は不幸だわ!

王
私たちが何者か、わかるか?
フランス、全国民、千五百万の人間、
富、恐怖、楽しみ、抑えも掟もない権力、
すべては私のため、私のものだ。私は王なのだ!
ならば、あなたはその支配者を支配する女になれる。
ブランシュ、私は王、あなたは女王になる!

ブランシュ
女王! では、奥様は?

王(笑って)
何という無邪気さ、何という貞淑さ!
妻は愛人ではないのだよ、わかるかい!

ブランシュ
あなたの愛人! いや! 何て恥ずかしい!

王
気位が高いね!

ブランシュ
私はあなたのものではないわ。父の娘です!

王
父だと! 私の道化、私の馬鹿、私のトリブレ!
あなたの父は私のものだ。好きなようにする!
私が望めば、あいつも望む!

ブランシュ(顔を手に埋め、激しく泣いて)
神様、かわいそうなお父様!
何もかも、あなたのものなの?

すすり泣く。王は慰めようと足元へ身を投げる。

王(情を込めた声で)
ブランシュ、ああ、こんなに大切な人なのに!
もう泣かないで! この胸へおいで。

ブランシュ(抵抗して)
決していや!

王(優しく)
まだ、愛していると、もう一度言ってくれないのか。

ブランシュ
ああ、もう終わりです!

王
知らずに傷つけてしまった。
捨てられた人のように、泣かないでおくれ。
その目にこんな涙を流させるくらいなら、
私は死んだほうがよい、ブランシュ! それとも
王国でも領地でも、勇気も騎士道もない王と
呼ばれたほうがよい!
女を泣かせる王! ああ、なんという卑怯者だ!

ブランシュ(途方に暮れ、泣きながら)
ねえ、みんなただの戯れなのね?
あなたが王様でも、私には父がいるの。泣いているわ。
そばへ帰らせて。私の住まいは
コセ邸の向かい。ご存じのはずだけれど。
ああ、あなたはいったい誰? もう何もわからない。
あの人たちは、浮かれた叫びを上げて私を連れ去った!
何もかも夢のように、頭の中で入り混じっている!

泣いて。

あんなに優しいと思ったあなたを、
今も愛しているかさえ、もうわからない!

恐怖に後ずさって。

あなたが王! あなたが怖い!

王(抱こうとして)
私が怖いのか、意地悪な人!

ブランシュ(押し返して)
ああ、離して!

王(いっそう強く抱いて)
何だって?
許しの接吻を一つ!

ブランシュ(身をよじって)
いや!

王(笑い、独白)
何と変わった娘だ!

ブランシュ(腕から逃れて)
離して! あの戸!

開いている王の寝室の戸を見つけ、飛び込み、勢いよく閉める。

王(帯から小さな金の鍵を出して)
おや、鍵はこちらが持っている。

鍵を開け、勢いよく戸を押して入り、後ろ手に閉める。

マロ(少し前から奥の戸口で様子を見ていた。笑う)
王の寝室へ逃げ込むとは!
ああ、かわいそうな娘!

ゴルドを呼ぶ。

おい、伯爵。

第三場

マロ、のちに貴族たち、ついでトリブレ。

ゴルド(マロに)
もう入っていいのか?

マロ
獅子が羊を巣穴へ引き込んだ。

パルダイヤン(喜んで跳び上がり)
ああ、哀れなトリブレ!

ピエンヌ(戸口に残り、外をじっと見て)
しっ、来たぞ!

ゴルド(貴族たちに小声で)
静かに!
何食わぬ顔をして、皆、しっかり振る舞おう。

マロ
諸君、見破られるとしたら私だけだ。
あいつが話したのは私だけだから。

ピエンヌ
何も顔に出さないことだ。

トリブレが入る。何も変わった様子はない。道化の衣装と、平然とした道化の顔。ただ、ひどく青ざめている。

ピエンヌ(始まっていた会話を続けるように。トリブレを見て笑いを噛み殺す若い貴族たちに目配せする)
そう、諸君、そのときに――やあ、トリブレ!――
こんな節の歌ができたのだ。

歌う。

ブルボンがマルセイユを見て、
家来に向かってこう言った。
おお神よ、あの城内に
どんな隊長がいるのだろう。

トリブレ(歌を続けて)
コロンブの山では、
通り道が狭かった。
皆で一緒に上っていった、
指に息を吹きながら。

皮肉な笑いと拍手。

一同
見事だ!

トリブレ(ゆっくり前へ出て、独白)
どこにいるのだろう?

また口ずさむ。

皆で一緒に上っていった、
指に息を吹きながら。

ゴルド(拍手して)
ああ、トリブレ、うまいぞ!

トリブレ(周りで笑う顔を一つずつ調べ、独白)
皆でやったに違いない!

コセ(大笑いし、トリブレの肩を叩いて)
何か変わったことはないか、道化?

トリブレ(コセを指し、皆に)
この貴族は、笑うと陰気だね。

コセの真似をして。

「何か変わったことはないか、道化?」

コセ(なお笑って)
そう、何を話しに来た?

トリブレ(頭から足まで見て)
あなたが愛想まで振りまき始めたら、
いよいようんざりする、そう言いに。

この場の前半を通じて、トリブレは何かを捜し、調べ、嗅ぎ回る様子を見せる。たいていは目つきだけが、その心配を示す。誰にも見られていないと思うと、ときおり家具を動かし、戸の取っ手を回して、閉まっているか確かめる。ほかはいつものように、からかいながら、気楽で無頓着な調子で皆に話しかける。貴族たちも、あれこれ話しながら、互いに忍び笑いをし、合図を交わす。

どこへ隠した? ああ、こいつらに尋ねたら、
笑われるだけだ!

笑顔でマロへ話しかける。

マロ、昨夜お前が風邪を引かなくて、嬉しいよ。

マロ(驚いたふりで)
昨夜?

トリブレ(意味ありげに片目をつぶって)
いいいたずらだった。感心したよ!

マロ
何のいたずら?

トリブレ(首を振って)
そうかい!

マロ(無邪気な様子で)
私の冒険といえば、
消灯の鐘が鳴ったら布団に入り、
起きたときには太陽が輝いていた、それだけだ。

トリブレ
ああ、昨夜は出なかったのか? 俺が夢を見たんだな!

卓上の手巾を見つけ、飛びつく。

パルダイヤン(ピエンヌに小声で)
見ろ、公爵。私の手巾の頭文字を調べている。

トリブレ(手巾を落とし、独白)
違う、あの子のではない。

ピエンヌ(奥で笑っている若者たちに)
諸君!

トリブレ(独白)
どこにいるのだろう?

ピエンヌ(ゴルドに)
何がそんなにおかしい?

ゴルド(マロを指して)
こいつが笑わせるのだ!

トリブレ(独白)
今日は、ずいぶん楽しそうだな!

ゴルド(笑い、マロに)
そんな失礼な顔で見るな。
さもないとトリブレを頭へ投げつけるぞ。

トリブレ(ピエンヌに)
王はまだお目覚めではない?

ピエンヌ
ああ、まだだ!

トリブレ
お部屋で、何か物音は?

戸へ近づこうとする。パルダイヤンが止める。

パルダイヤン
陛下を起こすなよ!

ゴルド(パルダイヤンに)
子爵!
マロの奴が、面白い話をしてくれた!
ギー三人が、この前の晩、どこからだか帰ってきて、
――道化先生、どう思う?――
三人とも女房が、ほかの男といるところを見つけた……

マロ
隠れていたところを。

トリブレ
近ごろは、道徳がずいぶん緩んでいるからね!

コセ
女というのは、実に裏切るものだ!

トリブレ(コセに)
おや、お気をつけて!

コセ
何を?

トリブレ
お気をつけて、コセ殿!

コセ
何だ?

トリブレ
恐ろしいことが、耳元にぶら下がっているぞ。

コセ
何だね?

トリブレ(鼻先で笑って)
まったく同じ目に遭うことさ!

コセ(怒って脅し)
ふん!

トリブレ
諸君、実に珍しい獣だ。
怒ると、こんな声を出す。

コセの真似をして。

ふん!

皆笑う。王妃の仕着せを着た貴族が入る。

ピエンヌ
何だ、ヴォードラゴン?

貴族
主君たる王妃様が、急ぎの御用で、
王にお目にかかりたいとおっしゃっています。

ピエンヌは無理だと合図する。貴族は食い下がる。

ブレゼ夫人は、おそばにいらっしゃらないのに。

ピエンヌ(苛立って)
王は、まだお起きではない。

貴族
何ですって、公爵! つい先ほど、
あなたとご一緒でしたよ。

ピエンヌ(ますます苛立ち、貴族に合図するが、通じない。トリブレはじっと見守っている)
王は狩りだ!

貴族
では、小姓も勢子もお連れにならずに。
お供は全員、ここにおりますが。

ピエンヌ(独白)
しまった!

貴族の真正面から、怒って。

言っているのだ、わかるか?
王は誰にも会えない!

トリブレ(突如、雷のような声で)
ここにいる!
王と一緒にいるのだ!

貴族たちは驚く。

ゴルド
どうした? 気が触れたのか!
誰が!

トリブレ
ああ、誰のことか、諸君にはわかっている!
「帰れ」で済む話ではないぞ!
コセ、ピエンヌ、サタン、
ブリオン、モンモランシー……お前たちみんなで、
昨日、俺の家から盗んだ、あの悲しい女だ。
パルダイヤン殿、お前もいたな!
取り返すぞ、諸君! ここにいるのだ!

ピエンヌ(笑って)
トリブレが愛人をなくした!
可愛かろうと不細工だろうと、よそで捜せ。

トリブレ(恐ろしい様子で)
娘を返せ!

一同
娘だと!

驚きの動き。

トリブレ(腕を組んで)
俺の娘だ! さあ、今なら笑ってみろ!
ああ、黙っているな! この道化が父親で、
娘がいるのが、そんなに意外か?
狼にも貴族にも、家族はあるではないか。
俺にもあってよいだろう? さあ、もう十分だ!

恐ろしい声で。

冗談だったのなら、結構だ、もう終わりにしろ!
娘が要るのだ、わかるか!
お前たちは話し、囁き、笑いながらこの件を語る。
だが、勝ち誇った顔など、俺には要らない。
お偉方、子供を返せと言っているのだ!

王の戸へ飛びかかる。

ここにいる!

貴族全員が戸の前へ立ちはだかり、阻む。

マロ
気違いが、荒れ狂う気違いになった。

トリブレ(絶望して後ずさり)
廷臣ども、廷臣ども、悪魔ども、呪われた種族め!
あの盗賊どもが娘を奪ったのは、本当だったのか!
奴らにとって、女など何でもないのだ!
幸いにも王が放蕩者なら、
貴族の妻は、亭主が不器用でさえなければ、
たいそう役に立つ。奴らにとって、処女の名誉は
無駄な贅沢、重荷になる宝物なのだ。
女は収穫を上げる畑、王から借地料が
きちんと入る農場だ。
どこからともなく降ってくる千の恩恵、
総督職、首にかける勲章、
次から次へと、ますます増える加増の山!

一同の顔をまっすぐ見て。

一人でも否定する者がいるか?
本当だろう、お偉方? 実際……

一人から一人へ歩み寄る。

誰でも王に売り渡すだろう、まだ売っていないならな。
名声、称号、その他どんな幻のためにでも、

ブリオンに。

お前は妻を、ブリオン!

ゴルドに。

お前は妹を!

若い小姓パルダイヤンに。

お前は母親を!

小姓が食器棚で葡萄酒を注ぎ、飲みながら口ずさむ。

ブルボンがマルセイユを見て、
家来に向かってこう言った。
おお神よ、どんな隊長が……

トリブレ(振り向いて)
なぜそうしないのか自分でもわからんぞ、オービュソン子爵、
その杯と歌を、お前の歯へ叩きつけてやらないのは!

皆に。

誰が信じる! 公爵に貴族院議員、スペインの大公、
ああ恥ずかしい! シャルルマーニュの末裔ヴェルマンドワ、
祖先がミラノ公だったブリオン、
ゴルド=シミアーヌ、ピエンヌ、パルダイヤン、
そしてモンモランシー! 名高い家の名を持つお前たちが、
この哀れな男から娘を盗んだとは!
いや、これほど誇り高い紋章の下に、
卑しい心を抱くのは、名門の者のすることではない!
違う、お前たちはその家の者ではない!
野次のただ中で、母親たちが下僕に身を売ったのだ!
みんな私生児だ!

ゴルド
おい、悪党!

トリブレ
俺の持ち物を売るのに、王からいくらもらう?
この仕事には金が出たのだろう、言え!

髪をむしって。

俺にはあの子しかいない!
俺が望めば……そうだろう、若くて、美しい!
きっと王は金を払うだろう!

皆を見て。

お前たちの王は、俺のために何かできると
思っているのか?
お前たちのような家名で、俺の名を覆えるのか?
俺を美しく、姿よく、ほかの人と同じにできるか?
地獄め! 何もかも奪われた!
ああ、このすばらしいいたずらとは、
何と卑劣で、残酷で、恐ろしく、卑怯に行われたことか!
悪党、殺し屋ども! 恥知らず、
泥棒、山賊、女を苦しめる者ども!
お偉方、娘が要る! 娘を返せ!
いつまで待たせる、早く返さないか!
この手を見ろ。名誉も何もない手、
民衆の、農奴の、田舎者の手だ。
笑う奴らには、武器もない手に見えるだろう。
剣はないが、爪はあるのだ、諸君!
もうずいぶん待っているように思える!
返せ! 戸を! 開けろ!

また狂ったように戸へ飛びかかる。貴族全員が守る戸で、しばらくもみ合い、やがて疲れ果て、息を切らして前方へ戻り、膝から崩れる。

皆で俺一人に!
十人で一人に!

涙と嗚咽に崩れて。

そうだ、泣いている、そうだとも!

マロに。

マロ、俺を面白がるのは、もう十分だろう。
その仕着せの下に、まだ魂が、霊感を受ける頭が、
民衆の一人としての心が残っているなら、
どこへ隠した、何をした、教えてくれ!
そこにいるんだろう? ああ、この呪われた奴らの中で、
兄弟同士の俺たちは、手を結ぼう!
あの貴族どもの中で、お前だけには知恵がある。
マロ、親切なマロ!……黙っているのか!

貴族たちへ這い寄って。

ああ、ご覧ください!
足元へ伏して、お赦しを請います、お偉方!
病んでいるのです……どうか、憐れんでください!
別の日なら、もっと冗談として受け取れたでしょう。
でも、一歩歩くたびにも、口には出さない
体の痛みが、いろいろあるのです。
体がこんなだと、そういう悪い日もあります。
長いあいだ、皆様の道化でした。慈悲を乞います!
どうか、玩具をこんなふうに壊さないで!
あれほど皆様を笑わせた、哀れなトリブレを!
本当に、もう何と言えばよいのかわからない!
子供を返してください。どうか、
王の寝室へ隠された娘を、返してください!
ただ一つの宝です! お優しい方々、どうか!
娘がいなくなったら、いったい
何をすればよいのです? ただでさえ惨めな運命なのに!
この世で、持っていたものは、あの子だけなのです!

皆、黙ったまま。絶望して立ち上がる。

ああ神よ、笑うか黙るか、それしかできないのか!
哀れな父親が胸を打ち傷め、
こんな夜が二晩続けば白くなる髪を
額からむしるのを見るのは、そんなに楽しいのか!

王の寝室の戸が、不意に開く。ブランシュが飛び出す。途方に暮れ、取り乱し、身なりを乱して、恐ろしい叫びとともに父の腕へ倒れ込む。

ブランシュ
お父様! ああ!

トリブレ(抱きしめて)
わが子! ああ、この子だ! ああ、娘だ!
ああ、皆様!

嗚咽に息を詰まらせ、その間にも笑って。

ほら、これが家族のすべてです。
私の天使! この子がいなければ、家は何と暗くなることか!
お偉方、私が正しかったでしょう?
泣き声を上げても、責められはしないでしょう?
こんなに愛らしく、優しく、
見るだけで人が善くなりそうな子を、
失って、悲鳴を上げずにいられるものですか!

ブランシュに。

もう何も怖がらなくていい。冗談だったんだ。
ただの悪ふざけだ。ずいぶん怖かっただろう。
だが、皆さんはよい人たちだ。父さんがお前を
どんなに愛しているかわかった。もう、放っておいてくれるよ。

貴族たちに。

そうでしょう?

娘を抱きしめながら。

また会えたとは、何という幸せ!
心が喜びでいっぱいで、今では、
泣いていたのに笑っている父さんには、わからなくなる。
少し失って、また取り戻すのも、幸せなのではないかと!

不安そうに娘を見て。

だが、お前はどうして泣く?

ブランシュ(涙と赤みで覆われた顔を、手で隠して)
私たちは何て不幸なの!
恥が……

トリブレ(身を震わせて)
何と言った?

ブランシュ(父の胸に顔を隠して)
この男たちの前では、いや!
お父様だけの前で、恥じたいの!

トリブレ(怒りに震え、王の戸へ向き直って)
ああ、あの恥知らずめ、この子まで!

ブランシュ(泣きながら、父の足元へ倒れて)
お父様と二人にして!

トリブレ(三歩進み、たじろぐ貴族たちを手で払いのけるようにして)
ここから出ていけ!
万一、王フランソワが、この辺りを
通ろうとするなら、

ヴェルマンドワに。

お前は護衛だな。
入るなと伝えろ。俺がここにいるとな。

ピエンヌ
こんな道化は見たことがない。

ゴルド(引き揚げるよう合図して)
気違いにも子供にも、少しは譲るものだ。
ただし、間違いがないよう見張っていよう。

皆、退場。

トリブレ(王の肘掛け椅子へ座り、娘を起こして)
さあ、話して。何もかも聞かせておくれ。

振り返り、残っているコセを見ると、半ば立って戸を示す。

聞こえませんでしたか、閣下?

コセ(道化の威に圧されたように退きながら)
道化どもは、本当に何をしてもよいと思っている!

退場。

第四場

ブランシュ、トリブレ。

トリブレ(厳粛に)
もう話してよい。

ブランシュ(目を伏せ、嗚咽に遮られながら)
お父様、話さなければならないの。
昨日、あの方が家へ忍び込んで……

泣いて、両手で目を覆う。

恥ずかしい!

トリブレは抱きしめ、優しく娘の額を拭く。

ずっと前から――もっと早く話せばよかった――、
私の後をつけていたの……

また言葉を切る。

もっと初めから、お話ししなくては。
話しかけてはこなかったの。
あの若い方は、日曜に教会へいらして……

トリブレ
そう、王が!

ブランシュ(続けて)
いつも、きっと気づいてほしくて、
そばを通るとき、私の椅子を動かすの。

いよいよ弱い声で。

昨日、家へうまく入り込んで……

トリブレ
せめて、何もかも話す苦しみだけは免れさせてやろう!
あとは察しがつく!

立ち上がる。

ああ、苦しい! 奴は恥と侮蔑を取り、
お前の額へ刻みつけた!
息を吹きかけ、お前の周りの清らかな空気を汚した!
乱暴に、お前の冠の花をむしった!
ブランシュ、こんな父さんの、ただ一つの避難所!
奴らの夜から帰る父さんを目覚めさせた昼の光!
父さんの魂を徳へ立ち返らせる魂!
父さんの恥の上に広げられた尊厳のヴェール!
何もかもに見捨てられた、呪われた者の唯一の庇護!
神の憐れみが、わが家に置き忘れていった天使!
ああ、この世でただ一つ信じていた聖いものが、
失われ、あの汚らしい泥の中へ埋められた!
この致命的な一撃を受けて、父さんはどうなる?
悪に身を売ったこの宮廷で、
自分の外にも内にも、この地上には、
悪徳、厚かましさ、恥知らず、不義、
卑劣と放蕩しか見えなかった父さんが。
空の下、目を休められたのは、お前の純潔だけだった!
諦めていた。不幸を受け入れていた。
涙、深く逃れられない卑しさ、
砕けた心の底で、いつまでも血を流す誇り、
父さんの苦しみで鋭くされた、侮蔑の笑い。
そう、恥の混じったそのすべての苦しみを、
自分が受けるのはよかった、神よ、だがこの子には!
自分が低く落ちるほど、この子を高く置きたかった。
処刑台のそばには、祭壇が必要なのだ。
その祭壇が倒された! 額を隠しておくれ。そう、泣くがいい。
いとしい子、さっきは話させすぎたね。
そうだろう? 思いきり泣くんだ。
お前の年頃なら、悲しみのいくらかは、
涙と一緒に流れ去ることもある。
できるなら、何もかも父さんの心へ注いでおくれ!

物思いに沈んで。

ブランシュ、残された仕事を果たしたら、
パリを出よう。父さんが生き延びられればだが!

なお考えながら。

たった一日で、これほど何もかも変わるものなのか?

怒りに跳ね起きて。

ああ、呪い! 誰がこんなことを教えてくれただろう。
卑劣で、歯止めもなく、狂いに狂い、
女も子供も打ち砕きながら走り回り、
神の禁じるすべてを突っ切り、
一つの罪を、さらに異様な罪でしか消せず、
血と泥を遠くまで撒き散らすこの宮廷が、
奴らの目を避けてお前が隠れた闇まで来て、
清らかで信心深い額へ、泥を跳ねかけようとは!

王の寝室へ向き直って。

王フランソワ一世よ! 俺の言葉を聞く神が、
その道ですぐにお前を躓かせるように!
走り込む墓が、明日にでも口を開くように!

ブランシュ(天を仰ぎ、独白)
神様、お聞きにならないで。私はまだ、あの方を愛しています!

奥で足音。外の回廊に、兵士と貴族の一行が現れる。先頭にはピエンヌ。

ピエンヌ(呼ぶ)
モンシュニュ殿、格子門を開けさせろ。
サン=ヴァリエ殿を、バスティーユへ連れていく。

兵士たちは奥を二列で通る。囲まれたサン=ヴァリエは、戸の前を通りかかると立ち止まり、王の寝室へ向き直る。

サン=ヴァリエ(声高に)
お前たちの王に、これほど侮辱を浴びせられたのに、
私の呪いへ応える声は、
地上にも天上にも、まだ見つからない。
空には雷一つなく、この世には人の腕一本もない。
もはや何も望まない。この王は栄えるだろう。

トリブレ(頭を上げ、まっすぐ見て)
伯爵、それは違う! 誰かが、あなたの仇を討つ。

第四幕 ブランシュ

サン=ジェルマンより下流、セーヌ川沿いの人けのない河原。右にあばら屋。粗い陶器と樫の腰掛けがあるだけの粗末な室内。上階は屋根裏で、窓から粗末な寝床が見える。観客に向いた正面は、中がすべて見通せるようになっている。卓と暖炉があり、奥の急な階段が屋根裏へ通じる。演者の左側の壁には、内へ開く戸。壁の継ぎ目は悪く、割れ目や隙間があり、家の中の様子を容易に覗ける。戸には格子つきの覗き窓があり、外には庇、その上に宿屋の看板。舞台の残りは河原。左に崩れかけた古い欄干があり、その下をセーヌ川が流れる。渡し船を呼ぶ鐘の支柱が、欄干に埋め込まれている。奥、川の向こうにヴェジネの森。右では、セーヌ川の曲がる先に、サン=ジェルマンの丘と、遠くの町と城が見える。

第一場

外にトリブレとブランシュ。家の中にサルタバディル。
この場を通じてトリブレは、邪魔され、見られ、見つかることを恐れる男の、不安に心を奪われた様子を見せる。しばしば周囲、とりわけあばら屋へ目を向けること。サルタバディルは宿の卓のそばに座り、剣帯を磨いている。すぐそばで起きていることは何も聞こえない。

トリブレ
それでも、愛しているのか?

ブランシュ
いつまでも!

トリブレ
その馬鹿げた恋を治す時間は、
十分与えておいたつもりだ。

ブランシュ
愛しているの。

トリブレ
ああ、哀れな女の心!
だが、愛する理由を説明しておくれ。

ブランシュ
わからないわ。

トリブレ
何ということだ! おかしな話だ!

ブランシュ
いいえ、違うわ。それだからこそ、
まさに愛しているの。だって、ときには
命を救ってくれる男の人に会うでしょう。
お金持ちにし、羨ましがられる身分にしてくれる夫にも。
でも、いつもその人を愛するかしら?
あの方は、たぶん、私を苦しめただけ。
それでも愛していて、なぜだかわからない。
私、こんなに思っているの。何も忘れてはいないけれど、
必要なら――何て愚かでしょう!――、
あの方は私に災いをもたらし、お父様はこんなに優しいのに、
お父様のためと同じように、あの方のためにも死ねるわ!

トリブレ
赦してやろう、この子よ!

ブランシュ
でも、聞いて、あの方は私を愛しているの。

トリブレ
違う! 愚かな娘!

ブランシュ
そうおっしゃった! 誓ってもくださった!
それに、何て巧みに、勝ち誇った様子で、
心をつかむ恋の言葉をおっしゃることか!
女に向ける目も、何て優しいのでしょう!
勇敢で、有名で、美しい王だわ!

トリブレ(激して)
恥知らずなのだ!
あの卑怯な誘惑者に、ただで幸福を奪われたままには
しておくものか!

ブランシュ
お赦しになったのでは、お父様……

トリブレ
あの神を汚す男を!
罠を組み立てる時間が必要だった。それだけだ。

ブランシュ
この一月――震えながら話すけれど――、
お父様は王が好きなように見えたわ。

トリブレ
ふりをしているのだ。
ブランシュ、仇を討ってやる!

ブランシュ(手を合わせて)
お父様、それだけは勘弁して!

トリブレ
せめて、騙されたら、
少しは腹が立つのか?

ブランシュ
あの方が? いいえ、そんなことは信じない。

トリブレ
その目で、じかに見たとしても?
もう愛されなくても、まだ愛するか?

ブランシュ
わからない。でも、愛している、慕っているとおっしゃるの。
昨日も、そうおっしゃったわ。

トリブレ(苦々しく)
何時に?

ブランシュ
昨日の晩。

トリブレ
それなら見ろ。見えるものなら、見てみるがよい!

家の壁の割れ目を示す。ブランシュが覗く。

ブランシュ(小声で)
男の人が一人いるだけ。

トリブレ(声を落として)
少し待て。

普通の士官の服を着た王が、宿の階下の広間に現れる。隣の部屋へ通じる小戸から入ってくる。

ブランシュ(身を震わせて)
お父様!

次の場を通じて、ブランシュは壁の割れ目へ身を寄せたまま、室内の出来事をすべて見聞きする。ほかのことには何も気づかず、ときおり全身を痙攣するように震わせる。

第二場

前場の人々、王、マグロンヌ。
王がサルタバディルの肩を叩く。仕事を不意に邪魔された男が振り向く。

王
二つ、すぐに用意しろ。

サルタバディル
何を?

王
妹と、私の杯だ。

トリブレ(外で)
これがあいつの流儀だ。神の恩寵による王は、
しょっちゅう一人で、いかがわしい場所へ身をさらす。
何より酔わせ、心を支配する酒は、
酒場のヘベが注いでくれる酒なのだ。

王(酒場の中で歌う)
女の心は、よく変わる。
信じる奴は、大馬鹿だ!
女はしばしば、ただ一枚の、
風に舞う羽根にすぎぬ!

サルタバディルは黙って隣室へ行き、瓶と杯を持ってきて卓へ置く。それから長い剣の柄頭で、天井を二度叩く。合図に応じ、ジプシーの装いの美しい娘が、軽やかに笑いながら階段を跳ね下りる。入るなり王が接吻しようとするが、娘はすり抜ける。

王(また生真面目に剣帯を擦り始めたサルタバディルに)
おい、その剣帯、外の空気の中で磨いてくれば、
もっときれいに光るだろうよ。

サルタバディル
わかりました。

立ち、不器用に一礼して外の戸を開け、出てから閉める。外でトリブレを見つけ、秘密めかして近づく。二人が言葉を交わすあいだ、娘は王を焦らし、ブランシュは恐れながら見守る。家を指して、トリブレに小声で。

生かすのか、殺すのか?
あんたの相手は、こっちの手の中です。あそこに。

トリブレ
少ししたら戻ってこい。

離れるよう合図する。サルタバディルはゆっくり、古い欄干の陰へ消える。その間、王は若いジプシー娘にじゃれつき、娘は笑って押し返す。

マグロンヌ(接吻しようとする王に)
いやよ。

王
よし。さっき抱こうとしたら、ひどく殴ったな。
「いやよ」なら進歩だ。大進歩だ。まだ後ずさるのか!
話をしよう。

娘が近づく。

八日前だ、ヘラクレス亭で、
――あそこへ連れていったのは誰だ、トリブレ殿だったかな――、
初めてその美しい目を見た。
そしてこの八日、美しい人よ、私はお前に夢中だ。
お前だけを愛している!

マグロンヌ(笑って)
それと、ほかに二十人もね!
あなた、まったく女たらしに見えるわ!

王(一緒に笑って)
ああ、実際、何人もの女を不幸にした。
本当だ、私は怪物だ。

マグロンヌ
うぬぼれ屋!

王
本当だとも。
さて、今朝お前は私をこのあばら屋へ連れてきた。
飯はひどくまずく、葡萄酒は兄貴の作る、ろくでもない宿だ。
あの兄貴は醜い獣で、ずいぶん凶暴な男だろう。
お前の口のそばへ、あんな面をさらせるのだから。
まあいい、今夜はここで過ごすつもりだ。

マグロンヌ(独白)
よし、ひとりでにうまく運ぶわ。

また接吻しようとする王に。

離して!

王
うるさいな!

マグロンヌ
お行儀よくして!

王
知恵というのはこうだ、かわいい人。
愛し、楽しみ、うまいものを食べよう。
その点は、亡きソロモンと同じ考えだ。

マグロンヌ
お説教を聞くより、居酒屋へ行くほうが多いのね。

王(腕を差し伸べて)
マグロンヌ!

マグロンヌ(すり抜けて)
明日ね!

王
もう一度その野蛮で忌々しい言葉を言ったら、
卓をひっくり返すぞ。
美女は決して、「明日」と言ってはいけない。

マグロンヌ(急になつき、楽しげに王のそばの卓へ腰かける)
じゃあ、仲直りしましょう。

王(手を取って)
何という美しい手!
善人ぶらずに言うが、ほかの女の愛撫より、
この手から平手打ちを受けたいものだ!

マグロンヌ(喜んで)
からかっているのね!

王
決して!

マグロンヌ
私、不器量だわ!

王
まさか、違う。
神々しい魅力を、もう少し正しく見てやれ!
私は燃えている! 無情な女の女王よ、知らないのか?
我々軍人は、どれほど恋につかまるか、
美しい人が受け入れてくれれば、
ロシアの果てでも、燃える炭や炎になるのだと!

マグロンヌ(大笑いして)
どこかの本で読んだのね、それ!

王(独白)
そうかもしれん。

声に出して。

接吻を一つ。

マグロンヌ
まあ、酔ってるのね!

王(微笑んで)
恋に。

マグロンヌ
その可愛い顔で、馬鹿にしているんでしょう。
気楽で、上機嫌な旦那様!

王
いや、違う!

王は接吻する。

マグロンヌ
もう十分よ!

王
さあ、お前と結婚したい。

マグロンヌ(笑って)
本当に?

王
何て愛らしく、気まぐれな恋の娘だ!

膝へ抱き上げ、小声で話し始める。娘は笑い、媚びる。ブランシュはこれ以上耐えられず、青ざめ、震えながらトリブレへ振り向く。

トリブレ(しばらく黙って娘を見てから)
さて、復讐をどう思う、わが子よ?

ブランシュ(ほとんど声も出ず)
ああ、裏切り! 恩知らず! 神様、心が裂ける!
何て私を騙したのでしょう! 心のない人だったのだわ!
ひどすぎる! あの女へ言うことは、
前に私へ言ったのと同じこと。

父の胸に顔を隠して。

あの女も、何て恥知らず! ああ!

トリブレ(小声で)
黙るんだ。
泣くな。父さんに仇を討たせてくれ!

ブランシュ
ああ! どうぞ、お好きなようになさって。

トリブレ
ありがとう!

ブランシュ
神様! お父様は恐ろしい。何をなさるおつもり?

トリブレ
すべて用意してある。
取り上げないでくれ。そうしたら息が詰まってしまう!
いいか、家へ帰り、男の服と、馬と、
金を、いくらでもよいから持ち、
途中で一刻も止まらず、
エヴルーへ発つのだ。明後日、父さんも合流する。
母さんの肖像のそばの櫃はわかるね?
服はそこだ。前もって特別に作らせてある。
馬には鞍を置いてある。言ったとおりにするんだ。
行きなさい。ことに、ここへは決して戻るな。
恐ろしいことが起こるのだから。
行くんだ。

ブランシュ
優しいお父様、一緒に来て!

トリブレ
それはできない。

娘に接吻する。

ブランシュ
ああ、震えるわ!

トリブレ
じきに会おう!

もう一度接吻する。ブランシュはよろめきながら去る。

言ったとおりにするんだよ。

この場と次の場を通じ、階下の広間に二人きりの王とマグロンヌは、笑いながらじゃれ合い、小声で話し続ける。ブランシュが去ると、トリブレは欄干へ行って合図する。サルタバディルが再び現れる。日が暮れかけている。

第三場

外にトリブレとサルタバディル。家の中にマグロンヌと王。

トリブレ(サルタバディルの前で金貨を数えて)
二十枚の注文だったな。まず十枚だ。

渡しかけて止める。

確かに、ここで夜を過ごすのだろうな?

サルタバディル(答える前に空を見て)
曇ってきました。

トリブレ(独白)
実際、いつもルーヴルで寝るわけでもないからな。

サルタバディル
ご安心を。一時間もしないうちに降ります。
嵐と妹が、今夜はあいつを引き止める。

トリブレ
真夜中に戻る。

サルタバディル
ご足労には及びません。
死体一つ、俺一人でセーヌへ投げ込めます。

トリブレ
いや、自分で投げ込みたい。

サルタバディル
お好きなように。
袋に縫い込んで、お渡ししましょう。

トリブレ(金を渡して)
よし。真夜中だ! 残りの金も持ってくる。

サルタバディル
すべて済ませておきます。
あの若い男は何という名で?

トリブレ
名だと? 俺の名も知りたいか?
奴の名は「罪」、俺の名は「罰」だ!

退場。

第四場

前場の人々。ただしトリブレはいない。

サルタバディル(一人残り、サン=ジェルマンの方から雲に覆われる空を眺める。ほぼ夜。ときおり稲光)
嵐が来る。町はもう、ほとんど雲の下だ。
結構だ! これで後には、河原にいっそう人けがなくなる。

考えて。

どう考えても、こいつら皆、
何だかわからない事情を抱えているらしい。
それ以上は見当がつかん、驢馬に蹴られちまえ!

首を振りながら空を見る。その間、王はマグロンヌと戯れる。

王(腰を抱こうとして)
マグロンヌ!

マグロンヌ(逃れて)
待って!

王
ああ、意地悪な娘だ!

マグロンヌ(歌う)
四月に伸びる葡萄の芽、
樽に満ちる酒は少ない。

王
何という肩、何という腕だ、愛らしい敵よ、
何と白い! ユピテルよ、すばらしい体だ!
こんな美しい裸の腕を作った神が、
なぜヴィーナスの体へ、トルコ人の心を入れたのだ?

マグロンヌ
ラリラ、ランラ!

また王を押し返して。

駄目よ。兄が来る。

サルタバディルが入り、後ろ手に戸を閉める。

王
かまうものか!

遠い雷鳴。

マグロンヌ
雷だわ。

サルタバディル
見事な降り方になりますよ。

王(サルタバディルの肩を叩いて)
よし、降るがいい!
今夜はお前の部屋を宿にしよう。

マグロンヌ
それが御意なの?
王様みたいな口ぶりね! 旦那、ご家族が心配するわ。

サルタバディルは妹の腕を引き、合図する。

王
祖母も娘もいないし、
何も気にかけるものはない。

サルタバディル(独白)
ますます結構だ!

大粒の雨が落ち始める。真っ暗な夜。

王(サルタバディルに)
お前は馬小屋でも、地獄でも、
好きなところで寝るがよい。

サルタバディル(一礼して)
ありがとうございます。

マグロンヌ(灯りをともしながら、王に、ひどく小声で急いで)
帰って!

王(大笑いし、大声で)
雨だぞ。詩人だって追い出せない天気に、
出ていけと言うのか?

窓の外を見る。

サルタバディル(手の金を見せ、マグロンヌに小声で)
泊まらせておけ! 金貨十枚だぞ!
しかも真夜中に、もう十枚だ。

王へ愛想よく。

今夜、私の部屋を閣下にお貸しできれば、
このうえない幸せです!

王(笑って)
七月には焼かれ、代わりに十二月には
凍える部屋だろう、どうだ?

サルタバディル
ご覧になりますか?

王
見よう。

サルタバディルは灯りを持つ。王はマグロンヌの耳へ笑いながら二言ほどささやく。それから二人は上階へ通じる梯子を上がる。サルタバディルが先に立つ。

マグロンヌ(一人残って)
かわいそうな若い方!

窓へ行って。

ああ神様、何て暗いの!

上の天窓から、屋根裏のサルタバディルと王が見える。

サルタバディル(王に)
寝床はこちら、椅子はこちら、それから卓です。

王
脚は全部で何本ある?

寝床、卓、椅子を順に見て。

三、六、九……お見事!
お前の家具はマリニャーノへ出征したのか?
どれもこれも、びっこを引いている!

ガラスの割れた天窓へ近づく。

それに、寝るのは野外だ。
ガラスも鎧戸もない。入りたい風に、
これ以上礼儀正しいもてなしはできまい!

卓上に常夜灯をともしたサルタバディルへ。

では、お休み。

サルタバディル
神様がお守りくださるように!

出て、戸を押しやる。ゆっくり階段を下りる音。

王(一人で、剣帯を外しながら)
ああ、疲れた、まったく!
ひとまず、もっとよいことがあるまで、少し眠ろう。

帽子と剣を椅子へ置き、長靴を脱いで、寝床へ横になる。

あのマグロンヌは、何とみずみずしく、活発で、すばしこい!

身を起こして。

戸は開けていっただろうな。
うん、よし!

また横になると、たちまち粗末な寝床で熟睡する。その間、マグロンヌとサルタバディルは階下の部屋にいる。少し前から嵐が本格的になり、舞台を雨と稲光が覆う。絶え間なく雷鳴。マグロンヌは卓のそばへ座り、縫い物を手にしている。兄は物思いに沈んだ顔で、王の残した瓶を飲み干している。二人とも、重い考えにとらわれたように、しばらく黙る。

マグロンヌ
あの若い人、すてきね!

サルタバディル
まったくだ。
俺の懐に金貨二十枚を入れてくれる。

マグロンヌ
いくら?

サルタバディル
二十枚。

マグロンヌ
あの人は、それ以上の値打ちがあったわ。

サルタバディル
お人形め!
上へ行って、眠っているか見てこい。剣を持っていただろう?
下ろしてこい。

マグロンヌは従う。嵐は最も激しくなる。奥に、男の乗馬服、長靴、拍車をつけ、黒ずくめのブランシュが現れる。ゆっくりあばら屋へ近づく。その間、サルタバディルは飲み、マグロンヌは屋根裏で、灯りを手に眠る王を見つめる。

マグロンヌ(涙を浮かべて)
何て惜しいこと!

剣を取る。

眠っている。かわいそうな人!

下りて、兄へ剣を持ってくる。

第五場

屋根裏で眠る王、階下の部屋のサルタバディルとマグロンヌ、外のブランシュ。

ブランシュ(稲光を頼りに、闇の中をゆっくり進む。絶え間なく雷鳴)
恐ろしいことが! ああ、おかしくなってしまいそう。
あの方は、まさにこの家で夜を過ごす。
ああ、決定的な時が迫ってくるのを感じる。
お父様、赦して。もうここにはいらっしゃらない。
こうして戻ってきて、言いつけに背いている。
でも、どうしても耐えられない。

家に近づいて。

いったい何をするのだろう?
どう終わるの? 少し前まで、
未来も、世界も、悲しみも知らず、
花と一緒に隠れて暮らしていた、哀れな娘が、
急にこんな暗いことの中へ投げ込まれるなんて!
私の貞節も幸福も、ああ、みんな瓦礫!
何もかも喪の悲しみ! 火をともした心に、
恋は破滅しか残さないの?
あの大火の跡には、わずかな灰だけ。
もう愛してはくださらない!

頭を上げて。

さっき、物思いを通して、
頭の上に大きな音を聞いた気がする。
雷だったのね、きっと。恐ろしい夜!
絶望した女に、できないことはない。
自分の影さえ怖がっていた私なのに!

家の灯りを見つけて。

ああ、何が起こっているの?

進んでから、退く。

ここにいる間に、神様、胸が締めつけられる!
ここで誰かが殺されたりしませんように!

すぐそばの部屋で、マグロンヌとサルタバディルがまた話し始める。

サルタバディル
ひどい天気だ!

マグロンヌ
雨と雷。

サルタバディル
ああ、今ごろ天では夫婦喧嘩だ。
片方が怒鳴り、片方が泣いている。

ブランシュ
今、私がどこにいるか、お父様が知ったら!

マグロンヌ
お兄さん!

ブランシュ(びくりとして)
誰かが話したみたい。

震えながら家へ近寄り、壁の隙間に目と耳を当てる。

マグロンヌ
お兄さん!

サルタバディル
何だ?

マグロンヌ
ねえ、私が何を考えているか、わかる?

サルタバディル
いや。

マグロンヌ
当てて。

サルタバディル
知るか!

マグロンヌ
あの若い人、たいそう男前だわ。
背が高く、アポロンのように誇らしげで、美しく、そのうえ色男。
私をとても愛しているの。幼子イエスみたいに眠っている。
殺さないでおこうよ。

ブランシュ(すべて見聞きして)
ああ!

サルタバディル(櫃から古い布袋と敷石を出し、無表情に袋をマグロンヌへ差し出す)
この古い袋を、すぐ繕ってくれ。

マグロンヌ
どうして?

サルタバディル
上でお前のアポロンを片づけたら、
死体とこの石をさっさと入れて、
全部、水へ投げ込むためだ。

マグロンヌ
でも……

サルタバディル
口を挟むな、マグロンヌ。

マグロンヌ
だけど……

サルタバディル
お前の言うことを聞いていたら、誰も殺せない。
袋を直せ。

ブランシュ
何なの、この二人は?
私が覗いているのは、地獄ではないの?

マグロンヌ(袋を繕い始めて)
従うわ。でも、話をしよう。

サルタバディル
いいだろう。

マグロンヌ
あの殿方に、恨みはないでしょう?

サルタバディル
俺に! 士官だぞ!
俺も剣で身を立てているから、剣を持つ奴は好きだ。

マグロンヌ
ただ者ではない美男を殺すなんて、
Sの字みたいな、醜い背曲がりのために!

サルタバディル
結局のところ、背曲がりから美男殺しを頼まれ、
俺にはまったく同じことだが、
まず十枚の金貨を受け取った。
死んだ男を渡せば、もう十枚もらえる。
渡すんだ。明快だろう。

マグロンヌ
小男が全額持って戻ってきたとき、
そっちを殺せばいい。
同じことになるわ。

ブランシュ
ああ、お父様!

マグロンヌ
決まり?

サルタバディル(妹をまっすぐ見て)
何だ、お前は俺を何だと思う? 山賊か?
泥棒か? 金を払うお客を殺すだと!

マグロンヌ(薪の束を指して)
じゃあ、この薪束を袋へ入れなさいよ。
暗ければ、死体だと思うでしょう。

サルタバディル
よく言うぜ。
どうやって薪を死人と思わせるんだ?
動かず、乾いて、ひと固まりで、硬くて、
生き物じゃないんだぞ。

ブランシュ
雨が、何て冷たいの!

マグロンヌ
あの人を助けて!

サルタバディル
たわ言だ!

マグロンヌ
優しいお兄さん!

サルタバディル
声を落とせ!
死んでもらうのだ! さあ、黙れ。

マグロンヌ
いやよ!
起こして、逃がすわ。

ブランシュ
優しい娘!

サルタバディル
それで、金貨十枚は?

マグロンヌ
そうね。

サルタバディル
ほら、いい子だ。
俺に任せておけ。

マグロンヌ
いや。私は助けたい!

決然と階段の前へ立ち、兄の道をふさぐ。サルタバディルは妹の抵抗に負け、舞台の前へ戻り、すべてを丸く収める手段を考える様子。

サルタバディル
さて。あの男は真夜中に戻ってくる。
それまでに、誰か、旅人でも何でも、
泊めてくれと戸を叩いたら、
そいつを捕まえ、殺して、お前の男の代わりに
袋へ詰める。あいつには、わからないだろう。
暗い中では、誰かでも何かでも、
水へ投げ込みさえすれば、同じくらい喜ぶはずだ。
お前にしてやれるのは、それだけだ。

マグロンヌ
ありがとう。
でも、いったい誰が、ここを通るというの?

サルタバディル
お前の男を助ける、ただ一つの手だ。

マグロンヌ
こんな時刻に!

ブランシュ
神様、私を試しておいでなのね。死ねとお望みなのね!
あの恩知らずのために、この一歩を踏み出さなくてはならないの?
ああ、いや、まだ若すぎる!
神様、私を押さないで!

雷鳴。

マグロンヌ
こんな晩に誰か来るなら、
籠で海を運んでみせるわ。

サルタバディル
誰も来なければ、お前の美しい若者は死ぬ。

ブランシュ(震えて)
恐ろしい! 夜警を呼んだら!……でも駄目、皆眠っている。
それに、この男は父を告発してしまう。
でも、死にたくはない。もっとすることがある。
父の世話をし、慰めなければ。それに、
十六になる前に死ぬなんて、恐ろしい! できない!
神様! 刃が胸へ入るのを感じるなんて!
ああ!

時計が一つ鳴る。

サルタバディル
妹よ、近くの時計が時を打つ。

さらに二つ鳴る。

十一時四十五分だ。真夜中までには
誰も来ないだろう。外には何の物音も聞こえないな?
片づけなければ。あと十五分しかない。

階段に足をかける。マグロンヌが泣いて引き止める。

マグロンヌ
お兄さん、もう少し!

ブランシュ
何てこと、あの女が泣いている!
私は助けられるのに、ここで立ったまま!
もう愛されないのだから、死ぬしかない。
そうよ、あの方のために死のう。

なおもためらって。

それでも、やっぱり恐ろしい!

サルタバディル(マグロンヌに)
駄目だ、もう待てない。無理なものは無理だ。

ブランシュ
せめて、どんなふうに刺されるか、わかっていれば!
苦しまないのなら! でも、額を、
顔を刺される……ああ、神様!

サルタバディル(引き止めるマグロンヌを、なお振りほどこうとして)
どうしろと言うんだ?
代わりになりに、誰か来るとでも思うのか?

ブランシュ(雨の中で震えて)
凍えてしまった!

戸へ向かって。

さあ!

立ち止まる。

こんなに寒いまま死ぬのね!

よろめきながら戸まで身を引きずり、弱く叩く。

マグロンヌ
誰か叩いてる。

サルタバディル
風で屋根が軋むのだ。

ブランシュがまた叩く。

マグロンヌ
叩いてるわ。

走って小窓を開け、外を見る。

サルタバディル
妙だな!

マグロンヌ(ブランシュに)
おい、何の用?

サルタバディルに。

若い男よ。

ブランシュ
今夜、泊めてください。

サルタバディル
たっぷり眠ることになるぜ!

マグロンヌ
ええ、長い夜になるわ。

ブランシュ
開けて!

サルタバディル(マグロンヌに)
待て! まったく!
ナイフを寄こせ。少し研ぐ。

妹が渡したナイフを、大鎌の刃で研ぐ。

ブランシュ
ああ! 二人でナイフを研ぐ音が聞こえる!

マグロンヌ
かわいそうな若者! 自分の墓を叩いている。

ブランシュ
震えるわ。
本当に、死ぬのね!

ひざまずいて。

神様、今、そちらへ参ります。
私に悪くしたすべての人を、私は赦します。
お父様も、神様も、同じようにお赦しください。
私が憐れみ、愛する、王フランソワ一世を、
すべての人を、悪魔さえも、
あそこで刃を振り上げ、闇の中で待つ、あの呪われた男さえも!
私は、恩知らずな人のために命を捧げます。
それであの方が幸せになるなら、ああ、私を忘れてください!
そして、何ものにも尽きることのない繁栄の中で、
私がその人のために死のうとしている、あの方が、
どうか、長く生きてくださいますように!

立ち上がって。

男の準備は、できたはず!

また戸を叩く。

マグロンヌ(サルタバディルに)
ねえ、急いで。待ちくたびれてしまうわ。

サルタバディル(卓で刃を試して)
よし。俺が戸の後ろへ回るまで待て。

ブランシュ
言うことが、みんな聞こえる。ああ!

サルタバディルは戸の後ろへ立つ。内へ開く戸が、入る人からは彼を隠すが、観客からは隠さない位置。

マグロンヌ(サルタバディルに)
合図を待ってるわ。

サルタバディル(戸の後ろで、ナイフを手に)
開けろ。

マグロンヌ(ブランシュに開けて)
お入り。

ブランシュ(独白)
神様、あの男に、ひどく痛い目に遭わされる!

後ずさる。

マグロンヌ
さあ、何を待っているの?

ブランシュ(独白)
妹が兄を手伝っている。
神様、お赦しください! お父様、私を赦して!

入る。小屋の敷居に姿を見せた瞬間、サルタバディルが短剣を振り上げるのが見える。幕。

第五幕 トリブレ

同じ舞台。ただし幕が上がると、サルタバディルの家は正面の鎧戸をすべて閉じ、内部がまったく見えなくなっている。灯りは一つもない。すべて闇。

第一場

トリブレ、一人。
外套にくるまり、舞台奥からゆっくり進んでくる。嵐は弱まり、雨はやんだ。稲光がいくつか、ときおり遠い雷鳴だけ。

いよいよ仇を討つのだ! ついに! もう済んだ。
道化であり続け、心の騒ぎを隠し、
笑いの仮面の下で血の涙を流しながら、
待ち、見張って、もうじき一月になる。

家の正面の低い戸を調べる。

この戸……ああ、復讐をこの手につかみ、触れるとは!
きっとここから、奴を運んでくるのだろう。
まだ時刻ではない。それでも戻ってきた。
そう、待つ間は戸を見ていよう。
それだけでも、ましだ。

雷鳴。

何という天気! 謎の夜!
天には嵐、地には殺人!
ここにいる俺は、何と大きい!
燃える怒りは今夜、神の怒りと肩を並べる。
何という王を殺すのだ! 二十人もの王を従え、
その手から平和や戦争を流れ出させる王を!
今、あいつは世界全体の重みを支えている。
いなくなれば、何もかも、どう傾くことか!
この軸を引き抜いたら、衝撃は強く恐ろしく、
それを押し出すこの手は、涙に暮れて
ほかに釣り合いを求めざるをえなくなったヨーロッパ全体を、
長く揺り動かすだろう!
明日、神が地上へ言ったと考えてみろ。
「おお大地よ、どの火山が火口を開いたのか?
キリスト教徒、オスマン人、
クレメンス七世、ドーリア、カール五世、スレイマンを、
こうも揺り動かすのは誰か?
どのカエサル、どのイエス、どの戦士、どの使徒が、
国々をこんなにぶつけ合わせるのか?
何者の腕が、思いのままにお前を震わせるのか、大地よ?」
大地は恐れながら答えるだろう、「トリブレ」と。
ああ、卑しい道化よ、深い誇りの中で楽しめ。
道化の復讐が、世界を揺らすのだ!

嵐の最後の物音の中、遠くの時計が真夜中を打つ。トリブレは耳を澄ます。

真夜中!

家へ走り、低い戸を叩く。

中の声
誰だ?

トリブレ
俺だ。

声
よし。

戸の下半分だけが開く。

トリブレ
早く!

声
入るな。

サルタバディルが戸の下半分から這い出す。かなり狭い開口部から、重いものを引きずり出す。長細い包みのようなものが、闇の中にかすかに見える。手に灯りはなく、家の中にもない。

第二場

トリブレ、サルタバディル。

サルタバディル
ふう、重い。旦那、少しのあいだ手伝ってください。

激しい喜びに身を震わせるトリブレが手伝い、死体の入っていそうな茶色い長袋を、舞台前方へ運ぶ。

あんたの相手は、この袋の中です。

トリブレ
見せろ! 何という喜び!
灯りを!

サルタバディル
とんでもない!

トリブレ
誰に見られるのが怖い?

サルタバディル
巡回の弓兵と夜警ですよ。
畜生、灯りは駄目だ! 音だけでも十分だ!
金を!

トリブレ(財布を渡して)
ほら!

相手が金を数える間、地面の袋を調べる。

憎しみの中にも、幸福はあるのだな!

サルタバディル
セーヌへ投げ込むのを、少し手伝いましょうか?

トリブレ
一人で十分だ。

サルタバディル(なおも)
二人なら早く済む。

トリブレ
葬る敵は、重くない。

サルタバディル
セーヌへ葬るのでしょう? まあ旦那、お好きなように!

欄干の一箇所へ行く。

そこへは投げないでください。場所が悪い。

欄干の崩れたところを示す。

ここなら深い。急いでください。それじゃ、お休み。

家へ入り、戸を閉める。

第三場

トリブレ、一人、袋を見据えて。

ここにいる! 死んでいる! だが、見てみたい。

袋を探る。

まあいい、確かにあいつだ。この覆いの下に感じる。
ほら、拍車が布を突き抜けている。
確かにあいつだ。

身を起こし、袋に足を載せて。

さあ世界よ、俺を見ろ。
こちらが道化、こちらが王だ!
しかも、どんな王か! すべての王の第一、最高の王!
それが俺の足の下だ。捕まえた。本人だ。
墓はセーヌ、死装束はこの袋。
誰が、こんなことをしたのだ?

腕を組んで。

そうだ、この俺一人だ。
いや、勝ったことが、まだ信じられない。
明日、人々も信じようとはしないだろう。
未来は何と言う? こんな出来事に、
国々は、どれほど長く驚くことか!
ここへ置き、またここから取り去る運命よ!
人間の、最も高い威厳の一つ、
何と、フランソワ・ド・ヴァロワ、火の心を持つ君主、
カール五世の競争相手、フランスの王、神、
――永遠でないことを除けば――、戦の勝者、
足取りで城壁の土台を揺らした男、

ときおり雷鳴。

マリニャーノの男、一晩じゅう
大軍を轟音の中でぶつけ合い、
夜が明けると、血まみれの手には
三本の大剣のうち、折れた一本しか残らなかった男、
栄光で世界の星となった、あの王!
神よ、何とあっけなく去ってしまったことか!
権勢のまっただ中で、名声と騒ぎと、
香を焚くように讃える宮廷を伴ったまま、突然運び去られた。
望まれぬ赤子のように、
雷鳴の夜に、名も知らぬ誰かの手で!
何だ、この宮廷、この世紀、この治世も、煙か!
燃える夜明けに昇ったこの王が、
消え、失せ、空に散った!
現れて、消えた。この稲妻の一つのように!
明日には、役にも立たない触れ役どもが、
樽いっぱいの金を見せて町々を回り、
驚きに茫然とする通行人へ叫ぶかもしれぬ。
「行方不明のフランソワ一世を見つけた者へ!」
何というすばらしさ!

しばし黙って。

わが娘、哀れな悲しみの娘よ、
あいつは罰せられ、お前の仇は討たれた!
ああ、どれほどあいつの血が欲しかったことか!
わずかな金で、手に入った!

怒りを込め、死体へかがみ込む。

悪党、まだ俺の声が聞こえるか?
お前の王冠より値打ちのある娘、
誰にも害を加えなかった娘を、
お前は羨み、奪った! 返すときには、
恥と、ああ、不幸をつけてよこした!
さて、どうだ、聞こえるか? 今度は奇妙だろう。
そう、ここにいて笑い、復讐するのは俺だ!
何もかも忘れたふりをしていたから、
お前は眠り込んだ! 父親の怒りからは、
たやすく牙を抜けると思ったのか。情けない!
いや、違う。俺たちの間に起こったこの争い、
弱者と強者の争いで、勝つのは弱者だ。
お前の足を舐めていた者が、心臓を食い破る!
捕まえたぞ。

ますます袋へかがみ込んで。

聞こえるか? 俺だ、貴族の王様、
この馬鹿、この道化、この半人前の人間、
お前が「犬!」と呼んだ、得体の知れない獣だ!

死体を叩く。

わかるか、復讐が心に宿ると、
死にきった心の中にも、眠るものはなくなる。
弱い者も大きくなり、卑しい者も姿を変え、
奴隷は憎しみを鞘から抜き、
猫は虎となり、道化は首斬り役となる!

半ば身を起こして。

ああ、動けないまま、まだ声が聞こえていたなら!

またかがんで。

聞こえるか? 俺はお前を憎む!
命の終わる川底へ行って、
サン=ドニへ逆流する水があるか、見てくるがよい!

立ち上がって。

フランソワ一世、水の中へ!

袋の端を持ち、水際へ引きずる。欄干へ載せた瞬間、家の低い戸が用心深く開く。マグロンヌが出て、不安そうに辺りを見回し、何も見えないという仕草をして戻る。ほどなく王と再び現れ、もう誰もおらず、帰ってよいと身振りで説明する。女は家へ戻り、戸を閉める。王は示された方角へ、舞台奥を横切る。ちょうどトリブレが袋をセーヌへ落とそうとするところ。

トリブレ(袋へ手をかけ)
さあ!

王(舞台奥で歌う)
女の心は、よく変わる。
信じる奴は、大馬鹿だ!

トリブレ(身を震わせて)
あの声! 何だ!
夜の幻が、俺をからかうのか?

仰天して振り返り、耳を澄ます。王の姿は消えたが、遠くで歌が聞こえる。

王の声
女の心は、よく変わる。
信じる奴は、大馬鹿だ!

トリブレ
ああ、呪い! 手に入れたのは、あいつではない!
逃がしたのだ、誰かが守った。
騙された!

家へ走る。上の窓だけが開いている。

悪党!

よじ登ろうとするように、目で高さを量る。

高すぎる、あの窓は!

怒って袋へ戻る。

だが、あの裏切り者は、代わりに誰を入れた?
どんな罪もない人を? 震える……

袋に触れて。

そう、人間の体だ!

短剣で袋を上から下まで裂き、不安げに中を見る。

見えない! この夜!

取り乱して振り返り。

何もないのか、この道には!
あの家にも何も! 灯火一つ光っていない!

絶望して体の上へ肘をついて。

稲妻を待とう。

半開きの袋からブランシュを半ば引き出し、しばらく目を据えたままでいる。

第四場

トリブレ、ブランシュ。

トリブレ

稲妻が走る。立ち上がり、狂った叫びを上げて後ずさる。

娘だ! ああ神よ、娘だ!
娘だ! 天地よ、今度は娘なのか!

手に触れる。

神様、手が濡れている! この血は誰のだ?
娘! ああ、わからない、恐ろしい異変だ!
幻だ! いや、そんなことはありえない。
出発して、エヴルーへ向かっているはずだ。

体のそばにひざまずき、天を仰いで。

神様、これは恐ろしい夢なのでしょう?
娘を翼の下へ守ってくださったのでしょう?
これはあの子ではない、そうでしょう、神様?

二度目の稲妻が、ブランシュの青白い顔と閉じた目を明るく照らす。

いや、あの子だ!
確かにあの子だ!

泣きながら体へ身を投げて。

娘よ、わが子よ、返事をしておくれ!
あいつらに殺されたのか! ああ、答えて! 悪党ども!
神様、ここには、あの恐ろしい一家しかいない!
話してくれ、話してくれ、娘よ! ああ、娘よ!

ブランシュ(父の叫びで生き返ったように、まぶたをわずかに開き、消えそうな声で)
誰が呼ぶの?

トリブレ(我を忘れて)
話した! 少し動く!
心臓が鳴る、目が開く、生きている、神様!

ブランシュ

半ば身を起こす。肌着姿で、全身に血がつき、髪は乱れている。まだ服を着ている下半身は、袋の中に隠れている。

ここはどこ?

トリブレ(両腕で抱き起こして)
わが子、地上でただ一つの宝よ、
父さんの声がわかるか? 聞こえるか、ねえ?

ブランシュ
お父様!

トリブレ
ブランシュ、何をされた? どんな地獄の仕業だ?
触ると痛くしそうで、怖い。
見えないんだ。娘よ、どこか怪我をしたのか?
手を導いておくれ。

ブランシュ(途切れ途切れの声で)
刃が……きっと……心臓に……
触れたの……感じたわ……

トリブレ
誰が、その一撃を?

ブランシュ
ああ、みんな私が悪いの……お父様を騙しました。
あの方を愛しすぎた……あの方のために……死ぬの。

トリブレ
容赦ない運命!
俺の復讐の罠に! ああ、神が俺を打ちのめす!
いったい、どうやったのだ? 娘よ、説明しておくれ。
言っておくれ!

ブランシュ(死にかけて)
話させないで。

トリブレ(接吻を浴びせて)
赦しておくれ。
だが、どうしてかもわからずに失うなんて!
ああ、頭が垂れてしまう!

ブランシュ(身を返そうと力を込め)
ああ……反対側へ……息ができない!

トリブレ(苦しみながら抱き上げて)
ブランシュ! ブランシュ!
死なないでくれ!

絶望して振り返り。

助けて! 誰か! 誰もいない!
こんなふうに娘を死なせておくのか?
ああ、渡しの鐘が、あの壁にある。
かわいそうな子、少し待っていられるか?
水を取り、鐘を鳴らして人を呼んでくる。一瞬だけ!

ブランシュは無駄だと合図する。

いや、嫌なのか! でも、そうしなければ!

離れずに呼ぶ。

誰か!

どこも沈黙。家は闇の中で、何の反応もない。

あの家は、神様、墓だ!

ブランシュは息絶えようとしている。

ああ、死なないで! わが子、宝、鳩よ、
ブランシュ、お前が去れば、父さんには何もなくなる。
死なないで、お願いだ!

ブランシュ
ああ!

トリブレ
腕の置き方が悪いね?
苦しいんだね? 待って、抱き方を変えよう。
これで楽か? どうか、
誰か助けに来るまで、
息を続けておくれ! 助けはないのか、一人も!

ブランシュ(消える声で、力を振り絞って)
あの方を赦して、お父様……さようなら!

頭が垂れる。

トリブレ(髪をむしって)
ブランシュ!……息が絶える!

渡しの鐘へ走り、激しく鳴らす。

助けて! 人殺しだ! 火事だ!

ブランシュのもとへ戻って。

もう一度、何か言おうとしておくれ!
一言だけでよい! お願いだ、話しておくれ!

抱き起こそうとして。

なぜそんなふうに体を曲げたままでいる?
十六歳! いや、若すぎる! ああ、死んでなどいない!
ブランシュ、こんなふうに父さんを置いていけるのか!
もうお前の声を聞けないのか? 神様、なぜ?

物音を聞きつけ、庶民たちが灯火を持って駆けつける。

お前を父さんへ与えた天は、無慈悲だった!
なぜせめて、かわいそうな子よ、
心の美しさを見せる前に、取り戻さなかったのか!
なぜ、この宝を知ることを許したのだ?
なぜ、ああ、まだ小さなときに死ななかったのか。
子供たちが遊んでいて、お前に怪我をさせた、あの日に!
わが子! わが子!

第五場

前場の二人、庶民の男たちと女たち。

女
あの言葉を聞くと、
胸が締めつけられる!

トリブレ(振り返って)
ああ、来たのか! 今になって来たのか!
ずいぶん間に合ったものだ!

鞭を手にした荷車引きの襟首をつかんで。

おい、田舎者、馬はあるか?
車は? 答えろ!

荷車引き
あるよ。ずいぶん揺さぶるな!

トリブレ
あるか? なら、俺の頭を取って、車輪の下へ置いてくれ!

またブランシュの体へ身を投げる。

娘よ!

見ていた男の一人
殺人だろう! 父親が絶望している。
引き離そう。

トリブレを連れていこうとする。トリブレは暴れる。

トリブレ
ここにいたい! 娘を見ていたい!
俺はあんたたちに何も悪いことをしていないのに、なぜ奪う?
知らない人たちだ。聞いてくれないか?

女に。

奥さん、泣いているのか? あんたは優しい人だ!
連れていかないように言ってくれ。

女は取りなす。トリブレはブランシュのそばへ戻る。ひざまずいて。

ひざまずけ!
ひざまずけ、この惨めな奴、娘の横で死んでしまえ!

女
ああ、落ち着きなさい。また大声を上げるなら、
連れていかれますよ。

トリブレ(取り乱して)
いや、いや、放っておいてくれ!

娘を両腕に抱えて。

まだ息をしていると思う! 父さんが必要なのだ!
早く町へ、助けを呼びに行ってくれ。
腕の中にいさせてくれ。おとなしくしているから。

娘をすっかり抱え上げ、母親が眠る子供を整えるようにする。

いや、死んでいない! ああ、神が望むはずはない。
この世にはこの子しかいないと、御存じなのだから。
体が歪んでいると、皆に憎まれる。
皆、逃げていく。苦しみを尋ねる人もいない。
この子は愛してくれる! 父さんの喜びで、支えだ。
人が父を笑えば、一緒に泣いてくれる。
こんなに美しくて、死んだなど! ああ、違う。
額を拭くものを、何かくれ。

娘の額を拭く。

唇はまだ薔薇色だ。
ああ、見ていただけたなら! まだ目に浮かぶ、
二つのころの、金色の髪!
あのころは金髪だった。

激しく胸へ抱きしめて。

ああ、踏みにじられた哀れな子!
ブランシュ、父さんの幸福、いとしい娘!
小さいときには、こうして抱いていた。
ちょうど今のように、父さんの上で眠っていた!
起きると、どんな天使だったか、知っていたら!
父さんは、あの子には変なものではなかった!
神々しい目で微笑んでくれた。
父さんは二つの小さな手に接吻した!
かわいそうな仔羊! 死んだ? いや、眠って、休んでいるのだ。
さっきはね、皆さん、もっとひどい様子だった。
それでも目を覚ました。ああ、待っている。
もうすぐ、目を開けるところが見られるよ!
ほら皆さん、今は筋道立てて話せるでしょう。
穏やかで、おとなしく、誰も侮辱していない。
駄目と言われたことは何もしていないのだから、
子供を眺めていても、かまわないでしょう。

見つめる。

額に皺一つない! 昔からの苦しみもない!
両手で包んで、もう手を暖めてやった。
ほら、少し触ってみて!

医師が入ってくる。

女(トリブレに)
外科医ですよ。

トリブレ(近づく外科医に)
さあ、診てやってくれ。邪魔はしない。
気を失っているのだね?

外科医(ブランシュを診て)
亡くなっています。

トリブレは痙攣するように立ち上がる。

左の脇腹に、かなり深い傷があります。
血が詰まって、窒息して亡くなったのでしょう。

トリブレ
俺が娘を殺した! 俺が娘を殺した!

敷石の上へ倒れる。

『王は楽しむ』終わり。

原注

原注 1

[1] 原本の書状では、「命令」という語に下線が引かれている。

原注 2

[2] 読めばどう受け取られるか、作者は強く信じているので、戯曲が上演された形ではなく、執筆したとおりに印刷されていることを、わざわざ指摘する必要も、ほとんど感じない。つまり、印刷された本なら許されるが、舞台の繊細な感受性に配慮して削っておいた細部も、相当数収められている。たとえば上演の日には、次の詩句の代わりに、

俺にはマグロンヌという妹がいましてね。たいそう美しい娘で、
通りで踊りを踊り、可愛いと評判です。
そいつがある晩、色男をうちへ誘い込み……

サルタバディルは、こう言った。

俺には妹がいまして、若く美しい娘です。
うちで、通りすがりの人の運勢を占っています。
あんたの相手も、ある晩、占ってもらいに来るでしょう。

ほかにもいくつかの詩句に異同はあったが、詳しく述べるほどのことでもない。

原注 3

[3] 『マリオン・ドロルム』の序文を参照。