文学 / ジョナサン・スウィフト獣たちの告解The Beasts’ Confession to the Priest, on Observing How Most Men Mistake Their Own Talents
文学 / ジョナサン・スウィフト
書誌情報を表示
原著・底本
- 原題
- The Beasts’ Confession to the Priest, on Observing How Most Men Mistake Their Own Talents
- 著者
- ジョナサン・スウィフト
- 編者
- ウィリアム・アーンスト・ブラウニング
- 原典の利用条件
- パブリックドメイン(米国)
Project Gutenberg 利用条件 - 収録範囲
- 1910年Browning編版の題・副題と1732年記・著者序二段落・詩全220行13詩段と底本注四件。
日本語訳
表紙
- 装画
- 日本人文
- 利用条件
- CC0 1.0
本書のために制作した独自装画。原刊の装丁とは異なります。
追加日: 2026-10-21 / 更新日: 2026-10-21
1910年Browning編版の題・副題と1732年記・著者序二段落・詩全220行13詩段と底本注四件。
獣たちの司祭への告解
大抵の人が自分の才能を取り違えているのを見て。一七三二年。
序
人が自分の才能について抱きがちな誤った判断ほど、広く、大きく、人間同士の交わりに悪い結果を及ぼす間違いはない、と私は長いこと考えている。ロンドンで、吃音のある市参事会員を知っていた。珈琲店へ、たいそうよく通う男で、新しい新聞が届くと、決まって真っ先につかみ、同じ市の仲間に声を出して読んだ。だが、その読み方ときたら、本人にわからぬのと同じくらい、そばの者にも、わからないものだった。学問を気取る者が、学問の諸分野のうち、まさに、いちばん知らない部分を選んで論じ、自分の正体をさらしてしまう例は、どれほど多いことか。ほかのどんな能力についても、事情は同じである。半枚から二十枚までの、韻を並べる作品が、毎分のように出てくる、その数からすると、ロンドン市と郊外には、少なくとも五百人の詩人がいるに違いない。珈琲店の雄弁家は、その半数、ただし聖職者は除く。政治家は四万人、深遠な学者は四千五百人である。才人、悪口屋、気の利いた男、批評家は、言うまでもない。皆、郊外の娼婦と同じほど、無学で厚かましい。着飾った洒落男どもを、我々は、どう考えたらよいだろう。自分の身体の不格好さを誇り、女の前で見栄えをよくしようと、緋色と金をまとい、頭にはトゥーペ[1]と呼ぶものをかぶり、当世の伊達男の、あらゆる飾りをつけるため、その対照で、かえって醜さを際立たせる者たちである。背中が曲がった者もいれば、身の丈が五フィートにも満たず、顔の造作が、どこも歪んだ者もいる。私は、この味気ない、気取り屋どもの多くが、学識のある人々との会話へ入り、文を口にするたび、この上なくひどい間違いを、絶えずしでかすのを見てきた。理性的な生き物が、一瞬でも考えるに値する観念は、一つも伝えず、年代も地理も、いま現在のことさえ、いつも混同する。私の計算では、伊達男や、青二才の類の、生粋の愚か者は、ここダブリンの我々の中の一人に対して、ロンドンには十一人いる。それに加え、こちらの愚か者の三分の二が、あちらへ移植され、いまでは帰化している。そのため、あの肥大した首都は、のろまの数では、四十対一の割合で、我々の都をしのぐ。さらに、我々の恥を深めることには、あの名高い大都市で、評判になっている、アイルランド生まれ、あるいはアイルランド育ちの、傑出した愚か者が、一人もいない。ロンドンの印刷物が、よほど偏っているか、欠けているのでない限り、そうなのである。それに引き換え、ロンドンには、自ら育てた者が、十二人ほど、いつでもと言ってよいほどいて、冬の半分もの間、流行の評判を独占し、それからは、もう名を聞かれず、新しい一団へ道を譲る。血統と流行の変化だけを勘定に入れれば、少なくとも、この三十年来、これは、変わらぬ成り行きだった。
この詩は、自分の才能を取り違えるという、人類に普遍的な愚かさに基づく。それによって、著者は、自分の種族を、ある種の獣に、ほとんど等しくするという、大きな名誉を与えている。実際、この点では、自分でも率直に認めるとおり、ひいきが過ぎる。それでも、できる限り低く下りたのである。狼、驢馬、豚、猿という、四種の動物を、わざわざ挙げたのだから。最後の猿が、狡猾さの点で、ほかをしのぐのを除けば、皆、同じように始末が悪い。これほどまでに、人の高慢は大きいのだ。
詩
獣が話せたころのこと、(学者の言うには、
いまでも毎日、話せるそうだが、)
当時も、獣は宗教を持っていたらしい、
いま人の間に見られるのと、同じほどに。
さて、疫病が流行したとき、
(そのため、彼らは、いっそう敬虔になった、)
獣の王は、(はっきりさせておこう、
四足獣だけのことを言う、)
お触れを出して、命じた、
国中の臣民は、一匹残らず、
司祭へ、自分の罪を告解せよと。
すると、信心深い狼が、こう始めた。
「よき神父様、恥を忍んで認めます、
しばしば、悪いことをいたしました。
告白せねばなりません、この前の金曜日、
何と情けないことか、断食を破りました。
ですが、いちばん下劣な舌にだって、こう言えます、
私が隣人を害したと、証明してみせよと。
あるいは、奪い、盗み、血に飢えて、
餌を求めに出たことがあるというなら、それも」。
次に進み出た驢馬は、告白した、
心の中では、冗談が好きなのだと。
おどけ者なのは、認めるしかなく、
のろまを、放ってはおけなかった。
ときには友も、容赦せず、
厳しすぎることも、あったかもしれない。
だが、いちばん悪く言ったところで、
生まれも育ちも、才人なのだ。
それが罪で、恥ならば、
自然だけが、責めを負わねばならぬ。
欠点が一つあり、それは申し訳なく思う、
耳が、半フィート短すぎることだ。
これを標準まで伸ばせたら、
王の前にも、顔を出せるのだが。
さて、声なら、誰も異議を唱えない、
獣の中のナイチンゲールなのだ。
豚は、悔い改めた心で認めた、
自分の姿と美しさが、自分を高慢にしたと。
食べ物には、少々うるさすぎたかもしれぬが、
大食いは、決して自分の悪徳ではなかった。
人生の、どんな移り変わりにも満足し、
運命のくれるものを、従順に受け取った。
教区の周りを、残らず尋ねてもらいたい、
もっとよい隣人は、決して見つからぬはず。
その用心深さを、嫌がる者はいるかもしれぬ、
確かに、豆を憎むのと同じほど、怠惰を憎んだ。
物真似の猿が、しゃべり始めた、
悪い舌が、どれほど自分の生涯を汚すかを。
あら探しばかりの世間へ、大いに不平を述べた、
世間は、自分の重々しさを、見せかけだと言う。
実際、道徳の厳しさのため、
百もの喧嘩に、巻き込まれたのだ。
自分の熱意が、ときには無分別だと、
わかっており、そうと知って悲しかった。
自分の徳は、いまの腐敗した世が、
耐えるには、厳しすぎるのだと知った。
だが、これほど淫らで、放埒な時代なら、
ストア派の怒りも、もっともではないか。
山羊は、しかるべき足取りで進み出て、
まず、自分の若々しい顔を、詫びた。
鬚がないのを、許してほしいと願った、
(自然のせいなのだが)。
確かに、雌というものへの愛情には、
あまり心が向かなかった。
敵たちが非難するように、
偶然や、生まれつきの欠陥のためではない。
性欲の薄い体質によるのでもなく、
敬虔な決意によるのである。
いまの修道士がするように、
貞潔の、神聖な誓いを立てたからだ。
それを、これから永遠に守ろうと決めた、
あの司祭様[2]と同じく、厳格に。
話を当てはめてみれば、わかるだろう、
どれほど、ぴたりと人類に合うか。
幾つかの欠点は認めるが、さて、何だと思う?
――何と、美徳が行き過ぎただけなのだ、
敵も友も、決して認めてくれない、
虚栄が、我々に授ける美徳が。
法律家は誓う、(信じてもよい、)
困窮した依頼人を、搾ったことはないと。
それを、いつもの決まりとしているので、
同業者たちは、愚か者と呼ぶのだと。
良心は、いつも、それほど繊細だったから、
貧しい者には、ただで助言をした。
そのため、断言してもよいが、
この前の復活祭開廷期には、報酬を百件、失った。
あの学者の法服を着る、ほかの者たちなら、
ヨブの忍耐さえ、尽きさせるだろうに。
法廷のどの弁護士も、彼の勤勉さ、
処理の速さには、かなわなかった。
自慢してもよいことに、訴訟を抱えたまま、
長くても、一開廷期か二開廷期を、越したことはない。
地位を求めて、首尾の上がらぬ、
卑屈な悪党は、こう身の上を語る。
もう、どうして、言葉を濁していようか、
お世辞を言えなかった、それが失敗の理由なのだ。
風向きで上着を替えるすべも、
一党派のために票を投じるすべも、習わなかった。
自分の罪は、すぐにわかった、
国の利益に、熱心すぎたのである。
大臣たちが、それを不快に思うとわかったが、
どうしても、心から悔いることは、できなかった。
付き牧師は誓う、自分には媚びへつらえぬと、
たとえ、それで司教の衣に、昇れるとしても。
時は、書物の間で過ごしていた、
それは、やせた顔つきを見ればわかる。
世渡りに賢かったなら、
昇進もでき、目も傷めずにすんだろう。
だが、強情な心の持ち主なのは認める、
それゆえ、功績だけを頼みにした。
功績によって、出世を求めたのだ、
ああ、まったく架空の考えでしかない。
医者は、信じてもらえるなら、
罪を一つ、告白した、(神よ、彼を許したまえ!)
真夜中に呼ばれて、走り出した、
盲目の老乞食を、墓から救うために。
だが、見よ、サタンが、どう罠を張るか、
祈りを唱えるのを、すっかり忘れたのである。
どうしても、心ならずも、
ときには牧師の役を、務めてしまう。
聖書から、幾つもの言葉を引き、
患者を、悔い改めへと動かす。
そして、薬が役に立たぬときには、
天上の糧で、その心を支える。
だが、どれほどよい意図であれ、そのことで、
聖職者たちは、怒っていると聞く。
陰では、あまりに大胆になって、
偽善者、藪医者と、自分を呼ぶのだという。
自分の教会には、席を保ち、
食事の前後には、感謝を捧げる。
そして、気取った様子もなく、
家中の者を、一日二度、祈りに呼ぶ。
薬屋の店を避け、
病人に、薄い汁を、詰め込むのを嫌う。
自分の術を、金儲けにするのを軽蔑し、
奥様お気に入りの小間使いにも、賄賂を贈らぬ。
年を取った付添い看護婦を、雇ったりはしない、
地主様に、自分を推薦させるために。
名は挙げぬが、ほかの者は、
恥ずべきことに、よくやってきたのだが。
政治家は、薄笑いを浮かべて言う、
自分の欠点は、誠実すぎることだと。
よからぬ目的を持たぬので、
友人の機嫌を、損ねがちなのだと。
国の利益、主君の栄光、
ホイッグかトーリーかは、問わずに、
それが、目に置いた企てのすべてだった、
だが、賛同する者は、わずかだった。
ある者どもが、千もの嘘を広めたとはいえ、
物品税を潰したのは、自分だったのだ。[3]
中傷を受けはしたが、知られていたとおり、
常備軍は、嫌いだった。
どの地位にあっても、実行したのは、
王に仕え、国民を喜ばせることだった。
どんな場合にも、地位を埋めるのに、
最適の人物を見つけるのは、難しいが、
自分は決して、約束を忘れず、
その場で、覚え書きを受け取った。
敵たちは、慈愛が足りないので、
彼は人気を得ようとする、と言った。
確かに、国民は理解していた、
することはすべて、国民のためなのだと。
その温かな情愛は、試してみてある、
どちらの側にも、愛の無駄はない。
借金のない財産を持って、宮廷へ来たのだが、
いまでは、毎年、それを使い減らしている。
この調子で行けば、
破産するのは、避けられない。
ああ、陛下が、よろこんで、
ただ、御役御免の令状さえ、くださるなら。
かねての望みどおり、
引退する許しを、くださるなら。
公正に勘定すれば、わかるだろう、
一万ポンド、貧しくなっているのだと。
これは、罪ではないと望むのだが、認めよう、
身内を、えこひいきしたことは、一度もない。
地位ある者が、親類で宮廷を、
いっぱいにするのは、卑しいと思っていた。
国は、いちばん愛する母であり、
徳のある者はみな、兄弟だった。
慎み深さ、あるいは、不器用な羞恥のため、
(この点は、自分が悪いと認める、)
見つけられる限り、最も賢い者を探した、
友人や血縁への配慮なしに。
選ぶ自由があるときには、
私的な思惑で、行動したりは決してしない。
いかさま師は誓った、賭け事は嫌いだと、
一時間を、紛らすだけなら別だが。
それも、もっとも、身銭を切って知ったのだ、
腕が足りず、いつも負けたのだから。
いかさま師の仲間がいると、聞いてはいた、
千もの手口を、考え出した連中だ。
札の山を替えたり、賽へ細工したりして、
どれほど鋭い目をも、欺けるという。
財産が減ったのも、不思議はない、
酔っていると、同業者が、丸裸にするのだから。
この教訓は、正確ではないと認めよう、
それに、話は、事実として偽りである。
あまりに馬鹿げているので、もし呼び戻せるなら、
エリュシオンの野から、寓話のイソップを、
その面前で、告発してやろう、
四足の種族を、誹謗した罪で。
我々以外の、どんな種類の生き物も、
自分の生まれつきの力を、よく心得ている。
それなのに、理性に従うべき我々は、
毎日、自分の才能を取り違える。
驢馬が、こんなに愚かだった例はない、
トレイやキューピッドの役を、演じようとしたり、
主人の膝に、跳び乗って、
撫でられ、粥を食わせてもらおうとしたり。
イソップは、世間に、そう信じさせようとするが、
驢馬は、自分の仕事を、もっとよく知っている。
女主人が笛を鳴らすたび、来るのでもなく、
荷物を運び、薊を食べるのである。
我が著者の言いたいものは、思うに、
bipes et implumis、二足で羽のない生き物。
そこで、この道徳家は、人類への、
お世辞を、意図していたのだ。
というのも、ここで認めているからである、ときには、
獣も堕落して、人間になりうると。[4]
底本注
[1] 黒い尾の長い鬘で、当時たいそう流行していた。それをかぶる人々も、同じ名で呼ぶことが、きわめて普通だった。――F。
[2] その告解を聴く司祭。――F。
[3] 一七三三年三月、葡萄酒と煙草に物品税を課す法案が、イングランドの庶民院に提出された。しかし、この措置への抗議は、あまりに激しく、四月十一日に第二読会へ進んだとき、ウォルポールは、二か月延期するよう動議を出した。こうして、この法案は立ち消えになった。――W・E・B。
[4] 『ガリヴァー旅行記』の、フウイヌム族の国への航海を参照。『散文作品集』第八巻。――W・E・B。