文学 / ジョナサン・スウィフト淑女の化粧室The Lady's Dressing-Room. 1730

『淑女の化粧室』の装画。化粧道具が散らばる部屋と戸口の訪問者。

文学 / ジョナサン・スウィフト

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原著・底本

原題
The Lady's Dressing-Room. 1730
著者
ジョナサン・スウィフト
編者
ウィリアム・アーンスト・ブラウニング
原典の利用条件
パブリックドメイン(米国)
Project Gutenberg 利用条件
収録範囲
1910年Browning編版の題と1730年記、詩全144行と底本注三件。1732年版との異文と、底本の伏字を保持する。

日本語訳

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CC0 1.0
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表紙

装画
日本人文
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CC0 1.0

本書のために制作した独自装画。原刊の装丁とは異なります。

追加日: 2026-10-21 / 更新日: 2026-10-21

1910年Browning編版の題と1730年記、詩全144行と底本注三件。1732年版との異文と、底本の伏字を保持する。

淑女の化粧室。一七三〇年

五時間を(これより短く、誰が済ませられよう)、
高慢なシーリアは、身支度に費やした。
女神は、部屋から姿を現す、
レースと錦織と薄絹をまとって。

ストレフォンは、部屋が空いていて、
ベティも、ほかの仕事にかかっていると知り、
忍び込み、散らかり放題の品々を、
一つ残らず、念入りに見て回った。
そこで、事を明らかにするため、
ここに、その目録を掲げよう。

まず、汚れた肌着が現れた、
脇の下は、すっかり汚れにまみれている。
悪党ストレフォンは、それを広げ、
ひっくり返して、隅々まで眺めた。
こういう点は、多くを語らぬにかぎる、
あとは察しろと、ストレフォンは言う。
だが、シーリアを、よい香りの、清潔な女と呼ぶ、
男どもは、とんでもない嘘つきだと、罵って誓う。

さて、お聴きあれ、彼が次に取り出すのは、
さまざまな用途に使う、さまざまな櫛。
汚れが、びっしり詰まって、こびりつき、
ブラシ一本、隙間を通せない。
何とも珍しい配合の、練り物だ、
汗、ふけ、白粉、鉛、それに毛髪。
額のしわを伸ばすための、
油のついた、額当ての布。
こちらには、酸っぱく不快な流れから、
立ちのぼる湯気を止める、明礬の粉。
あちらには、トリプシーの皮の夜用手袋、
トリプシーが、死ぬとき遺してくれたもの。[1]
それに、美容の助けとなる「仔犬の水」、
トリプシーの愛しい仔犬から、蒸留したもの。
ここには、軟膏壺や小瓶が並び、
化粧水のものも、練り物のものもあり、
ポマード、塗料、べちゃべちゃした液体、
かさぶただらけの頬に効く、軟膏のものもある。
すぐそばには、汚らしい洗面鉢、
手から洗い落とした汚れで、汚れている。
この鉢は、来るものは、何でも受け止める、
歯や歯茎から、こそげ落としたものも、
あらゆる色の、汚らしい混ぜ物も、
ここに、彼女は唾を吐き、ここで、吐くのだから。

だが、ああ、気の毒なストレフォンは、腹の底からむかついた、
手ぬぐいを目にし、その臭いを嗅いだときに。
ねばつき、膿と粘液にまみれ、
垢と汗と耳垢で、黒ずんでいる。
ストレフォンの目を、逃れる物はない。
ここには、かび臭い山をなす、ペティコート。
ハンカチも、忘れてはならない、
嗅ぎ煙草と鼻汁で、すっかり艶をつけたものを。
なぜ、私が、靴下までさらそう、
足の指の湿り気で、染みだらけのものを。[2]
あるいは、あぶらじみた頭巾や、臭う垂れ布つきの帽子、
少なくとも一週間は、シーリアがかぶって寝たものを。
次には、毛抜きを一つ、見つけた、
眉を、丸い弧の形に抜くためのもの、
あるいは、額へ低く生え下がった毛や、
顎に剛毛のように生える毛を、抜くためのものを。

見逃すわけにはゆかないのが、
シーリアの、拡大鏡の効能だ。
ぎょっとしたストレフォンが、目を向けると、
そこには、巨人の顔が映った。
シーリアの鼻の、最も小さい虫まで、
目に見えるようにしてくれる鏡であり、
爪を確実に導いて、
頭から尾まで、絞り出させてくれる。
頭を、うまくつかみさえすれば、
生きていようが死んでいようが、そいつは出てくる。

ストレフォン、なぜ、残りまで話すのだ。
どうしても、あの箱を描き出さねばならないのか。
あの、うっかり女中め! 誰も言ってやらなかったのか、
あの隅から、どかしておけと。
それなのに、丸見えのまま、置いておくとは、
おまえが、意地の悪さを振るえるようにとでもいうのか。
職人が、知恵を見せたのも、無駄だった、
見せかけの、取っ手の輪や蝶番をつけ、
その偽装で、普通の目には、
飾り戸棚と見えるようにしたのも。
ストレフォンは、思い切って、中をのぞいた、
どんなことになろうと、やり抜くと決めて。
蓋を上げた。もう、それ以上は要らない、
それまでも、ずっと、臭いは嗅いでいたのだから。

パンドラの箱の中から、
エピメテウスが、錠を開けたとき、
人間を襲う、ありとあらゆる災いの群れが、
不意に、上へと飛び出したとき、
それでも、最後には、希望だけが、
あとに残ったと知り、彼は慰められた。
それと同じく、ストレフォンが蓋を上げ、
箱に隠されたものを見ようとすると、
湯気が、穴から、上へと吹き出した。
だが、用心深いストレフォンは、そもそも、
便壺の底を、手探りして、
希望を求め、手を汚すつもりはなかった。
ああ、こんな汚らしい仕掛けが、
シーリアの部屋で、一度たりとも、見られませんように!
ああ、彼女が、もっと上手に隠せますように、
かの「太古の深淵の秘密」を。[3]

極上の肉、羊肉の骨つき切り身も、
料理の掟が、要求するとおり、
手をかけて、塩をすり込み、叩いて、
煙の出ぬ火で、炙り上げようとも、
その、うまそうな骨つき肉から、
脂が、燃えさしへ滴り落ちれば、
炎を、臭い煙へと変えて、
脂のもととなった肉を、台無しにし、
上へ、脂ぎった悪臭を立ちのぼらせ、
そのため、不注意な女中を、罵ることになる。
それと同じく、口に出してはならぬものも、
湯気の立つ箱へ、落とされれば、
排泄物の臭いを、立ちのぼらせて、
それが落ちてきた部位へ、臭いを染みつかせる。
ペティコートやガウンを、香らせ、
部屋という部屋へ、悪臭を漂わせる。

こうして、大探検を終え、
うんざりしたストレフォンは、こそこそ立ち去った。
恋の発作にとらわれては、繰り返す、
「おお、シーリア、シーリア、シーリアは、くそを——!」
だが、決して眠らぬ女神、復讐は、
のぞき見したストレフォンを、すぐ罰した。
その不潔な想像力は、目にする、どの女をも、
その女の、ありとあらゆる悪臭と、結びつける。
そして、不快な臭いが漂えば、
そばに、婦人が立っていると思い込む。
どんな女にも、彼の描く姿は当てはまり、
二つの観念は、才人の考えのように、ぴたりと合う。
いびつな空想で、固く結ばれ、
しかも、いつも、互いに対照をなして現れる。

私は、哀れなストレフォンを気の毒に思う、
女というものの、すべての魅力が、彼には見えぬ。
臭い泥から生まれ出たからといって、
私が、恋の女王を、拒むべきなのか。
舞台裏をのぞく男にとっては、
スタテイラも、あばただらけの売女にすぎない。

シーリアが、その栄光のうちに、姿を現すとき、
ストレフォンが、ただ鼻をつまみさえすれば、
(今では、あまりにも不敬にも、罵っている、
彼女の軟膏、塗りもの、化粧料、クリーム、
化粧水、どろどろの液、あらゆる布切れを、
それをもとに、あれほど、汚く騒ぎ立てているのだが)、
彼も、すぐに、私のように考えることを覚え、
その光景に心を奪われる目を、祝福するだろう、
あれほどの秩序が、混乱から生まれ、
あれほど、華やかなチューリップが、糞から育つのを見て。

底本注

注 1

[1] 異文。「雌犬が、死ぬとき、彼女に遺したもの。」――一七三二年版。

注 2

[2] 異文。「臭い足指の跡。」――一七三二年版。

編者注 3

[3] ミルトン『失楽園』第二巻、第八九〇〜八九一行。
「彼らの目の前に、不意に現れる、
太古の深淵の秘密が。」――W・E・B。